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勇者側で召喚されたはずの俺が魔王側にいるんですけど!?  作者: YoneR
第一章

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中迷宮〖1〗(5)

累計PV1000達成しました!ありがとうございます。

「ふぅ、これでギミックが使えるようになったか。」


タガは魔力銃弾の餌食となり、見る跡もなくなった。


それに対して、タガの持っていた槍はかなりの攻撃を受けたはずだが、そのままきれいに残っている。


やはり人間の体は脆い。


 しかし、疲れたな。アサルトライフルは1発ごとの魔力量は200程度だが、それを連射するから疲労感が半端ない。まあ、夜遅いからっていうのもあるか。


俺は右手の魔法銃をウェストのほうへ向ける。


「ひぃ。なんで、魔法が・・・。ば、化け物・・・。こ、ころさないでぇ。」

ウェストが情けない声を上げている。


 あれをアサルトライフルとするなら、こっちはピストルにしておくか。


俺はそう命名した。


「俺たちが悪かったっす。何でもします、命だけは!どうか、どうか!」

ウェストが後ずさりながらそう言った。


「まずはミィにかけたストレンジスキルを解除してもらおうか。」

「わわ、分かったっす。」


ウェストがふるえる声で詠唱をしだした。


「と、解きましたっす。」

「・・・。」


俺はミィの様子を見た。

まだ眠っているようだが、先ほどまでより自然な体勢になっていた。


「今は単純に眠っている状態っす。しばらくすると起きます。」

「そうか。」


「どうしたら、許してくれ——」

「お前は勇者の子孫だと言っていたな。」

「あ、はいっす。」

「お前が知っているだけの勇者についてやハーロウ帝国について教えろ。あと、そもそもお前はなんで魔王国にいる?」

「お、俺は——」


ウェストは生き延びるために必死になって話し始めた。



============================



「俺が知っているのはこれぐらいっす。」


ウェストはハーロウ帝国で権力争いに負けて亡命してきていたらしい。


だが、しばらくしてお金が無くなり、困り果てた。

自分には大した戦闘の才能がなく、勇者の子孫だから使えるストレンジスキルしか役に立つものがなかったそうだ。


そこで、普段から冒険者に強盗をしているタガに出会った。


それぞれの力を生かしてボス部屋でソロの冒険者を襲い、タガはその冒険者の所持金の7割を、ウェストは残りの3割と女だった場合はその体をもらうということを繰り返していたそうだ。


「あなたの奴隷にでも構わないっす。どうか。」

「そうだな。もういいだろう。」

「ほっ。」






「死ね。」






ウェストが驚いたように俺を見て来る。


「どうした?」

「あ、あなた、同じ人間っすよね。」

「そうだが?」

「だったら、なんで・・・?」


「ん?お前から得られるだけの情報は得られたし、ミィの心配もなくなった。もう用済みだ。」

「だ、だからって・・・」

「いやいや、この状況でお前だけ見逃すわけないだろうが。」

「・・・。」


ウェストは呆然としている。


「じゃあな。」

「ままま、待ってください!」

「何か言い残したいことでもあるのか?別にそんなのいらないぞ?」

「同じ人間族じゃないっすか。タガさんとは違う!」


 ああ、同族愛で見逃せってことか。


「だから?」


俺は理由は分かったがあえて聞き返す。


「だ、だから・・・?」

「同じ人間だからってなんだっていうんだ?」

「へ?」



「俺はさ、命は平等にあると思ってるんだ。」

「・・・?」


ウェストは俺が何を話し出したのか分からず戸惑っている。


「男と女、子供と大人、国や部族、この世界だったら種族だってそうだ。それらが違うかったとしても命は平等だ。」

「はぁ・・・?」


「まぁ、これらは普通の人もそう思っている人も多いだろう。俺がいた世界だったらな。」

「俺がいた世界?あなたもしかして魔人っすか!?」

「そうだ、と言いたいところだが少し違う。俺は勇者だ。」

「なっ!?」


「話を戻すぞ。俺はそれだけにとどまらないと思っている。人、猿、犬、鳥、魚だって同じ命だ。」


「脊椎動物だけじゃない。虫や植物だって同じだ。」

「何が言いたいんす、か?」


「熊や猪は作物を荒らしたり人を襲ったりしたら射殺される。虫は単にそこにいるだけで殺される。植物に至っては殺すために生かされる。」

「?」











「俺にとって人を殺すことはためらうことじゃない。邪魔な生き物を殺すだけのことだ。」












「!?」

「ああ、あれだ。お前たちを殺すことは、知り合いに蚊がとまっていたから叩き潰すことにすぎない。そもそも生き物の中でもたいていの人は嫌いな方だしな。」


そう、これは俺の考え方の根底にあることだ。


「人が、嫌い・・・。」

「そうだ。人は別の生き物の命は当然のように奪うくせに、自分たちが奪われることを当たり前だと全く考えていない。人が殺されるとその実行者を狂ったように非難する。本当に醜いと俺は思う。」

「じゃあ、自分の家族が殺されてもなんも思わないんすか!?」

「憎む。」

「へ?」

「当然だ。自分にとって大切なものが殺されたら殺したやつを殺したくなるだろ?」


「矛盾していると思うか?俺が醜いといったのは、殺された人と何ら関係がないのに、テレビや新聞を見て、犯人のことを考えずに批判している奴らだ。」


「まあ、とにかくお前はここで殺す。」

「・・・。」



バン!



============================



「フレア、終わったぞ。」

«我が王さすがです!あんな攻撃手段をあみ出しているなんて!»

「ははは、だが、さすがに疲れた。」

«そ、れ、に!すっっっっっっっごくかっこよかったです!»


フレアはかなり興奮している。


«あ、そうだ!ミィにもしてたんですから、私の体が戻ったらお姫様抱っこしてください!»


 ん?俺そんなことしてたっけ?


俺は単に距離が取りたかったから抱え上げたにすぎないので、全然覚えていない。


「あ、ああ、べつにそれぐらいなら・・・」

«やたっ!»


 まあ、嬉しそうだからいっか。


「さてと。」


まず、まだ眠っているキメラ倒した。


その後、死体喰いを出して2人の死体や血を食べさせた。

その時フレアが嫌そうな顔をしていたことは無視しておく。



俺はそのまま41階層に進もうとした。


だが、フレアに、止められた。

何も聞かされず、男に襲われそうになっていたことだけを覚えたままなのはさすがにミィがかわいそうだと。


確かに、と思った。

犯されたのかも分からないのは過酷だろう。


よって、ミィが目覚めるのを待つ。


およそ20分後。



「んん。」

ミィが身動きした。


«お!目覚めたっぽいですね。»

「そうだな。」


俺はミィの体を揺らして起こす。


「ん・・・。あれ?私何をして・・・って、はっ!?」

ガバッっと突然体を起こした。


自分の体や荷物を見回す。


「あれ?なにもされてない・・・?」

「ああ、なにもされてないぞ。」

「え?」


ミィが俺に気が付いた。


「琉斗さん?なんで、ここに?」


そして、俺の後ろにいるフレアにも気が付く。


「ひぇ!!!」


そして、大きく後ずさる。


「た、た、た・・・」

「?」

「魂!!」

«違うからね!!»


ミィとフレアの声がほぼ同時に発せられた。


「しゃべった!!」


再びミィの叫び声が上がる。


「大丈夫だ。魂じゃない。俺の——」


「家臣?」

«恋人です!»


俺の声が遮られた。


「え、ええと?」

ミィが戸惑っている。


 はぁ。


「とりあえず、フレアはおいといて、いろいろ説明しようか。」

「あ、はい。」

«ちょっと!我が王!»



============================



俺はミィに俺が召喚人であることを含め、何が起こったのかを説明した。


途中信じられないという表情をしていたが、実際に魔法銃を撃ってやると、すぐに納得した。


フレアについては、


「フレアは、俺のストレンジスキルで召喚した自我のあるギミックだ。」


と説明しておいた。


ミィに本当のことを教える必要はない。


フレアは


«恋人ですからね!我が王は私のものです!»


となぜか強く主張していた。


否定するのも面倒なので、適当に流しておく。


「という感じだ。俺の実力については誰にも言わないでほしい。」

「分かった。なんかいまだに信じられないけど、本当にありがとうございました!」

「そういえば、なんで1人でボスに?」

「あ、それは・・・。」


ミィが言いよどんだ。


 たぶん、パーティーのことだろうな。俺が関わるべき問題じゃないか。


「別に言いたくなかったら言わなくていい。ただ、夜に1人はやめておいた方がいいと思うぞ。ソロで挑むにしても1人でするべきだ。」

「ふふ、心配してくれてありがと。でも大丈夫。琉斗さんにだったら話せる。」


「私ね、パーティーを抜けようかと思ってるんだ。それでソロでやっていけるか試してた。」

「なるほどな。夜だとメンバーに遭遇する確率はグッと下がるからな。」

「そっ。それで今までも何回かやってて、今日はボスに挑戦しようと思ってたんだけど・・・」

「そこで襲われたってことか。」

「うん。」


 まあ、あの雰囲気だと、ろくにパーティーでやっている意味がなさそうだからな。


「どう思う?」

「いいんじゃないか。」

「そう!?」


ミィが嬉しそうな反応をする。


しかし、次の俺の一言で暗い表情に変わる。


「ただ、ここのボスは厳しいかもな。」

「うっ。そ、そっかー。」

「ああ、ミィは盗賊だ。盗賊が1人で倒せるボスは体の小さいものに限られる。」

「そりゃそうだよね。うん・・・。」






「俺とパーティーを組まないか?」





「へ?」

「別にずっと一緒に迷宮に挑むわけじゃない。ミィがボス戦をするときとか、夜にもぐるときとかに一緒に行かないかということだ。」


これはミィが目覚めるまでにフレアと話していたことだ。

よって、フレアは静かに話を聞いてくれている。


「え、え、でも・・・。琉斗さんにそんな頼れないよ。」

「これはミィのためだけじゃない。ボス戦は単純に経験値がもらえるだろ?」

「うん・・・。」

「それに、俺も戦闘しているところをあまり人に見られたくない。ちょっと召喚人の中で複雑な立場にいるからな。夜に一緒にもぐれる人がいるとありがたい。」


そう、俺は実力やフレアのことを隠さないといけない。

その点で、ミィは都合がいい。

ミィはいい人だし、それに俺が命の恩人のようなものだから簡単には裏切らないだろう。


「そうなんだ。えっと、本当に、いいの?」

「ああ、もちろんだ。」

「ありがとう!これからよろしくね!」



俺はこの後残りの階層をミィを連れておよそ2時間ほどでクリアした。


中迷宮1つを一夜で踏破。


おそらく、最速記録のはずだ。



============================



〖???視点〗


「ん。審査状態になったのは初めて。」


私の頭の中には向こうの世界の中迷宮にいる2人と黒い魂のようなものが映し出されている。


「この人が私が仕えることになるかもしれない人?」


私はじっくりとその人の顔を見る。




 え?どうし、て?男の人?




次回更新日は10/21(火)予定です。


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とても励みになります。


あと、リアクション、感想もよろしくお願いします。

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