中迷宮〖1〗(3)
テスト終わりました!
更新速度を上げていこうと思います。
初ランクインしました!ありがとうございます。
2025/10/11(土) 18-19時更新
[日間]異世界転生/転移〔ファンタジー〕 294位
俺たちは再び中迷宮に入った。
今は22時近いためほとんど人がいない。
「これなら普通に話せそうだな。」
«そうですね!»
俺たちは人がいなそうな道を選んで進んでいく。
昼間に1階層で出てきた魔物はミニスケルトンだった。
ミニスケルトンとは、名前の通りスケルトンが小さくなったバージョンだ。
イメージとしてはスケルトンが兵士で、ミニスケルトンが少年兵であると思ったらいい。
さて、夜だとどう変わるのか。
ガラガラガラ
硬い地面が盛り上がり、ミニスケルトンが出てきた。
全部で8体。
昼間の白い骨の体と違い、黒い骨の体だった。
«おおー!なんか強そう!»
「そうだな。」
俺は刀を取り出し、陰なる祝福をまとわせた。
すると、3体が襲い掛かってくる。
俺は真正面のミニスケルトンをその剣ごと首を切り落とした。
昼間よりちょっと骨が硬くなっていたか?
残りの2体が切りかかってきたため、俺の皮膚に剣先が当たる直前で、陰なる移動で最後尾のミニスケルトンの背後に移動。
そして振り向きざまに首を切る。
俺がいた場所を見ると、2体のミニスケルトンが転んでいた。
うん。こういうの1度やってみたかったんだよな。直前に避けることで敵同士がぶつかり合うやつ。
«見た目ほど中身は強くなってないですねー。»
後の5体は単純作業だった。
スケルトンは知能が高くないため、一直線に襲い掛かってくる。
よって、陰なる移動で背後に立ち、首を順番に刎ねていくだけ。
「弱かったな。」
«そうですねー。私の出番ないです!»
死体は死体喰いに食べさせた。
この世界では、ダンジョンや迷宮内でも勝手に死体が消えることはない。
たいていの魔物の死体は素材が取れるため持ち帰る人が多いが、このミニスケルトンの死体は脆い骨しかないのでほぼ価値がない。よくて銅貨1枚だ。
フレアは死体喰いの見た目に引いている。
«我が王・・・なんですかこれ?»
「死体喰い。結構高かったぞ?銀貨20枚もした。その分性能はいいけどな。俺は案外気に入ってる。」
«う、ちょっと見た目が・・・»
「死体を食うんだから仕方ないだろ?」
«・・・次からは私が焼却してもいいですか?»
「そんなに醜いか?まあ、気持ちはわかるが、我慢してくれ。この魔道具は進化可能性がついてるんだ。」
«えっ!!»
【進化可能性】
一部の魔道具にはギミックと同様に進化する可能性がある。進化した魔道具は破格の性能を持つため、国によっては進化可能性のある魔道具は取り扱い禁止になっている。
よくウィドレートさんは売っていたな。見つかればかなりの罰があるだろうに。今思うと俺がデキレッタ一行を殺すことも黙認してくれてたし、感謝しないとな。今度リルメに行ったら礼を言っておこう。
「だから、お金になるやつや珍しいやつ以外は基本的に人がいないところでこいつに食べさせるつもりだ。」
«うぅ。わかりましたよー。»
フレアは渋々了承してくれた。
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それから俺たちは順調に進んでいった。
どの魔物も昼間よりは強くなっていたが、大したことはなかった。
陰なる移動で背後をとり、陰なる祝福をまとった刀で切って終わり。
25階層は唯一の例外だった。
25階層の魔物はバッタ。昼間とは違う魔物だった。
一匹一匹はスライム程度かそれ以下なのだが、それが数万匹だ。
ただ、
『むしぃいいいいいいいいいい!!』
と、何も指示していないのにフレアが一瞬で燃やしてしまった。
本来は25階層からが難しくなり、中迷宮らしくなるため、C~Bランクのパーティーで挑む必要が出て来るのだが、フレアには関係なかったようだ。
精神面は大変そうだったが。
また洞窟の壁が溶けて鉱石が露出したためそれを今は採掘中だ。
«うぅ、気持ち悪い・・・»
「大丈夫か?」
«はぃ、なんとか・・・。勝手に攻撃してすいませんでした。»
「別に気にしていない。フレアが攻撃すべきだと思ったら攻撃したらいい。ただまあ、明らかにオーバーキルだったけどな。」
«・・・。»
「っていうかフレアって虫が苦手だったんだな。」
«だってぇ。あのブニブニしたところとか、足がたくさんあるところとか気持ち悪いじゃないですかっ!»
「ははは。しばらくして落ち着いたら人が来そうじゃないか見ていてくれ。」
«分かりました。»
さてと、鉱石採掘することになるとは予想外だったが中ダンジョンとは違う鉱石が多そうだな。結果的には良かったか?
俺はこの1か月間が終わった後、魔王たちのもとでの戦い方で思いついたことがある。魔力量や勇者であることを隠しながら、舐められない程度の強者であるための方法だ。それには大量の鉱石が欲しい。
いや、死体は残してほしかったな。
俺は陰なる祝福をまとわせた刀で採掘していき、刀では切れない硬い場所があったら魔力銃で破壊していく。
手を銃の形にして魔力を集めて放つあれの名前は魔力銃にした。
陰なる収納には容量が無限のため、いくらでも入っていく。
約1時間後。
«あっ、我が王!24階層から人が下りてきそうです。»
「そうか。分かった。ここまでにしよう。あっ!」
«どうかしましたか?»
「これ、どうしよう?」
«あー。»
25階層は完全に原型がなくなり、掘り進めたような跡がいたるところに残っている。
それだけなら冒険者が鉱石を掘ったということでいいのだが、全面が鉱石になっているため、明らかに異常だ。
うーん。
「仕方ないよな。」
«え?何が?»
俺は集められるだけの魔力を集める。
«へ?»
俺が思いついた方法、それは・・・
「全破壊。」
天井に向かって魔力を放った。
ドゴォォォオオオオン!
すさまじい音が響いた。
俺たちは陰なる移動で26階層への入口へ逃げる。
天井から大小さまざまな岩石が落下してきた。
一瞬で25階層が岩石の山に変化した。
24階層からの入り口は塞がった。
「何とかなったか?」
«ええええっ!無茶苦茶ですっ!あとで迷宮主に謝らないと・・・»
24階層にいた人には悪いが、あんな状態を見られるわけにはいかないんでな。迷宮主は・・・たぶん大丈夫だろ(根拠なし)。
«っていうか私に先に教えてくださいよ!»
「悪い。だが、ちゃんと移動させただろ?」
«それはそうですけど・・・。私の扱いが雑っていうか。私は女の子なんですから、もっと気づかってほしいです。»
「はいはい。」
«はいはいって・・・。私の体が戻ったらもっと優しくしておけばよかったって後悔させてやりますからね!我が王、聞いてますか!?»
「次の階層に行こうか。」
«ちょっとひどいよぉー。»
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「これで昼間の地点までは来たな。次はボス戦か。」
«そうですね!頑張ってください!»
ボスがいる階層は普通とは少し違う。
まず、その階層へと続く扉が大きく頑丈なものとなっている。
そして、その扉の前には休息できるスペースがあり、ここに魔物が出て来ることはない。
迷宮主のボスの前に休んでおけというやさしさだろう。
最も大きな違いは、ボスに挑むのは同じタイミングで入った人だけだ。
つまり、ボスと戦っている最中に他の人が入ってくることはない。
⁅30階⁆
俺たちは中に入った。
・・・
ん?
«ボスがいない?»
今までのボスたちは入ってすぐに現れたのだが、なんの物音もしない。
「どういうことだ?」
«変ですね。普通なら直前に倒されていたとしても新しいボスが現れるはずなのに・・・»
ボスがいないボス階層?いや、それはないだろう。あり得るとしたら、気配を完全に消す魔物か?だが、それは脅威度超だからないはず。とすると・・・
「迷宮主のミスか?」
«そうですかねー。あれ?でもここって・・・»
フレアが何かを言いかけようとしたとき、目の前に水色の小さな光の粒子のようなものが集まってきた。
だんだんと人の形になっていく。
頭から2本の角が生えた女になった。
角の色は深緑。髪は白髪で目はきれいなエメラルドグリーンだ。
«フィール!»
フレアの知り合いのようだ。
「久しぶりです。フレア。」
«久しぶりー!何年ぶりだろ?って、ん?呼び捨て・・・?»
「あら?身に覚えがありませんか?」
«え?・・・あっ、ちがっ!»
身分としてはフレアが上のようで丁寧語を使っているが、フィールとフレアが呼んでいた女の言葉には静かな怒りがこもっている。
「よくも25階層を破壊してくれましたね!フレアなら修復の大変さを知っているでしょうに!」
フィールの拳に魔力が集まっていく。
«ちょっ!ストップ、ストップ!!あれは本当に―――»
「その身をもって思い知ってくださいね?」
«ひぃぃぃ!我が王、助けて。»
「緑拳!」
その後、しばらくフレアとフィールの鬼ごっこが続いた。
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「はぁはぁはぁ。」
«うぅ、痛いよぉ。»
ようやく落ち着いたようだ。
«我が王、ひどいです。いたいけな女の子が襲われているのに助けてくれないなんて!それに主に破壊したのは私じゃないのに!»
「ごめん。これは結構本当に悪かったと思ってる。」
破壊する原因を作ったのはフレアだが、最終的に破壊したのは俺なので、正直申し訳ないと思っている。
よって、素直に謝った。
お詫びとして、魔力をフレアに注ぐ。
«んんっ!あっ、あの!?我が王って魔力を注がれてる時の私の感覚って分かっていますか!?»
「ん?マッサージみたいなもんだろ?」
«違います!»
え?違うのか?
«この感覚は、ええと、もっとこう、なんていうか・・・»
「その方がフレア様たちの王なのですね。」
フィールがフレアの言葉をさえぎって話しかけてきた。
フレアの敬称が様に変わっていた。
«え、ええ。そうよ。我が王です!»
「琉斗だ。なんで王なのかとかは全然分かっていないけどな。」
「ええ、知ってます。レムから聞いておりますので。」
ダンジョンマスターと迷宮主は関りがあるのか。
«で、フィール、この階層のボスは?»
「私が直接フレア様に文句を言いたかったので召喚してません。」
«ええ!そんな理由で・・・。っていうか文句どころか殴ってきたでしょ!»
「はい。」
«はいじゃない!そして、なんで私だけなの!?我が王が最も破壊してたのに!»
おい、王を殴れってそれはダメなんじゃないか?まぁ、俺としてはフレアのこういうところは嫌いじゃないが。
「最初が肝心ですので。」
«それってこれにも当てはまるの!?»
「ええっと、じゃあボス戦なしってことか?」
「ええ、どうぞ先へお進みください。あ、今は38階層に1人と39階層に2人先客がいますよ。」
「そうか、教えてくれてありがとう。」
「いえいえ。」
この情報はありがたい。
「フレア、先に進もうか、あんま遅くなると睡眠不足になる。」
«むぅ、我が王だけ・・・。じゃあ、フィールまたね!»
「25階層の修復にしばらくかかるのでごゆっくりどうぞ。」
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この先には3人先客がいるらしいから、遭遇しないように気を付けないとな。その中にミィもいるのだろうか。
俺が先を急ぐ理由としてミィがまだ帰っていなかったこともある。
1日、いや半日しか一緒にいなかったが、多少は仲良くなったし、もし困ってたら助けようと思えるぐらいにはいい人だった。
パーティーメンバーに言われてたこと、強気に言い返してたけど案外気にしてそうだったからな。
俺たちは少しペースを上げて進んでいく。
«やっと中迷宮らしい強さですね!»
「そうだな。明らかに25階層までとは違う。」
31階層からは出て来る魔物が強力になり、首を切り落とす単純作業からちゃんとした戦闘に変わった。
そのため、いくつか新しいギミックを生成した。
〚陰なる盾〛
物理攻撃、魔法攻撃を防ぐ盾。その大きさや枚数、耐久値は使用した魔力量によって異なる。
〚陰なる投剣〛
投げナイフ。通常の短剣よりもよく飛ぶ。魔力操作で軌道変更可能。
〚陰なる回復〛
傷を修復する。その効果は使用した魔力量による。
やっと遠距離・・・中距離だな。中距離のギミックが生成できた。やはり俺は近距離に適性があるのかもしれないな。気を付けないといけないのは陰なる回復だ。
この世界で回復魔法を使えるものはほとんどがヒーラーであり、その数はかなり少ない。
人前では、よほどの怪我でなければ使わないようにしよう。
«ボス戦ですね!やっとです。»
「ああ。」
そういえば先客には全く出会わなかったな。もう先に行ったのか?
俺は40階層への扉を開こうとする。
ん?
「誰かがボスに挑んでいるようだな。」
«そうみたいですねー。はぁ、しばらく待機か・・・»
キィン!
キン!!
ドガン!
扉の奥から戦っている音が聞こえてくる。
「☓☓☓☓☓☓!!」
「XXXXXXXXXXXXX。」
「☓☓☓☓☓☓☓!?」
「XX。XXXXXXX!」
「XXXXXXX。」
ん?何か言い争ってるのか?
女の声と男の声がなんと言っているのかはわからないが、聞こえてきた。
俺は耳を扉にあてた。
「なんで私を攻撃してくるの!?」
「さぁ?なんででしょう?」
「一緒に入ってきたこともおかしいけど、ボスを倒しに来たんじゃないの!?」
「安心しな。ボスは寝かせた。そうだろ?ウェスト?」
「ひひ!完全に熟睡させたっすよ!これでここには俺たち3人だけっす。」
「何が目的?私はBランクよ!そう簡単には負けない!」
「そうかそうか。だが、そんなこと関係ねぇんだよなぁ。」
ミィが知らない男2人に襲われているようだった。
またか・・・
次回更新は10/18(土)予定です。
早く書けたら早めるかもです。




