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勇者側で召喚されたはずの俺が魔王側にいるんですけど!?  作者: YoneR
第一章

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あるある


「ふぁーあ。」

ネーアが布団からもそもそっと出てきた。


「おはよう。ネーア。」


ネーアは俺を見て一瞬固まった。

すぐに元通りになる。


「お、おはよ。琉斗。」

「俺の部屋なこと忘れてただろ。」

「・・・」


図星だったようだ。


「もう9時だぞ。」


この世界と俺がいた世界の時間は同じだ。


「えぇー。」


ネーアがベッドから降り、ゆっくりと歩いてくる。

そしてそのまま俺にぶつかる。


「おい。」

「うぅん。・・・ZZZ。」


 はぁ。ネーアは朝に弱いみたいだな。いつもと全然違う。


「今日は都市キリトへ向かうって昨日言っただろ?」

「・・・」


俺はネーアの尻尾を思いっきりもふる。


「んんっ!!・・・分かった。起きる。」

「顔洗って来い。」



============================



「よしっ。それじゃ、しゅっぱーつ!」

「誰かさんのせいで予定より1時間遅くなったけどな。」

「・・・」


俺たちがノースハザードを出たのは10時過ぎだ。


「と、とにかく。せっかくの異世界旅なんだから楽しも!」

「ああ。」


都市キリトは魔王国の北東にある。ここから歩いて半日ってところだ。そもそも首都が国の北側にあるため、そこまで遠くない。


「そういえばさ、なんで歩いてなの?琉斗の、ええっと、陰・・」

「陰なる移動な。あれは基本的に一度見たことがある場所じゃないと使えないんだ。それに今日は良く晴れているから成功確率が低い。」

「なるほどねー。あっ、あたし魔法いくつか使えるようになったよ!」

「そっかー。」


ネーアの視線が強くなる。

「どうした?」

「もう少し興味持ちなさいよ。」


 だってもう陰狼(いんろう)の目を通して一回見たからな。ただ、緊急事態だったとはいえ、あの瞬時のギミック生成はすごかったと思うぞ。


「どんなのが使えるようになったんだ?」

「ふふん。瞬光(フラッシュ)光刃(ライトウェーブ)光剣(ライトソード)光盾(ライトシールド)第二(セカンド)光盾(ライトシールド)。この5つよ!」


ネーアがどやぁってしている。


「琉斗はどうなの?」


 さて、どうしよう。今、俺にギミックは陰なる移動、陰なる収納、陰なる祝福、陰狼の4つともう一つある。ネーアに張り合うならそのまま5つと言ってもいいんだが・・・


ちなみに手を銃の形にして魔力を集めて撃つあれはギミックではない。


「んん?」


ネーアが見つめてくる。


 今回はネーアに譲っておくか。


「3つだ。」

「よし!あたしの勝ち!」


陰狼ともう一つは、もし見せてって言われた時に困るから、3つと答えておいた。


俺たちは他愛のない話をしながら街道を歩いて行った。



============================



「もうそろそろかなぁ。」

「あと30分ってところだな。」

「どんな街かな?」

「まあ、近くに中ダンジョンが3つ、大ダンジョン1つ、中迷宮が2つあるっていう立地だから、冒険者が多いんじゃないか?たぶん冒険者用の店とかがたくさんあると思うぞ。」


都市キリトは近くにダンジョンや迷宮が多くある。俺たちがこの街に向かうことにしたのもそれが理由だ。


「どれに向かう?」

「初めてなんだから通常通り中ダンジョンがいいと思っている。」

「おっけー。」


【ダンジョン、迷宮】

 誰が、いつ、何のために作ったのかは一切不明。様々な武器、防具、アクセサリー、鉱石がその中にある。だが、それらを手に入れるためには中にいる敵対魔物(レッド)を撃破する必要あり。難易度によって名称が異なる。


小ダンジョン・・・危険性はほぼゼロ。その代わり得られるものもほぼなし。10才

         前後の子供たちの遊び場になっていることも多い。

中ダンジョン・・・駆け出し冒険者向け。

大ダンジョン・・・中級冒険者向け。

小迷宮・・・上級冒険者向け。

中迷宮・・・ランクC~Bのパーティーが複数で挑む。

大迷宮・・・ランクB~Aのパーティーが複数で挑む。

超迷宮・・・ランクA~Sのパーティーが複数で挑む。大半が未踏破。

最終迷宮・・・未踏破。過去に挑んだSランクのパーティーは八階層で断念。

       世界に1つ。


【魔物】

 国民魔物(グリーン)友好魔物(イエロー)敵対魔物(レッド)に分類される。国民魔物は魔王国の国民となっている魔物のこと。友好魔物は国民ではないが友好的な魔物。敵対魔物は敵対している魔物。



 本当なら大ダンジョンでもいいんだが、念のためな。慣れてないのにいきなりは避けるべきだろう。


「おっ!そろそろこの獣道?を抜けられそう!」


俺たちは街道を外れ、木々が生い茂っている中を歩いてきた。


理由はこのままでは日が暮れてしまいそうだからだ。

よって、近道をした。


大半の理由はネーアにある。

その1 寝坊。

その2 歩くのが遅い。

その3 途中で行商人に会ったため商品を見た。

    ネーアがいくつか買った。


主にその3だが。


俺たちはようやく開けた場所に出た。

「おおー!」

「へぇー!」


俺たちが出たのは崖だった。

まっすぐ前を見ると都市キリトの城壁が見える。

キリトの右奥には大ダンジョンの白城がある。


「絶景だな。」

「うん!」


ちょうど夕日が差していてとてもきれいだ。


「で、どうやって降りるの?」

「俺の陰なる移動で降りる。場所が見えていたら使えるからな。」


 ちょうどあそこの街道なんかが・・・


「ん?」

「ねぇ、琉斗。あれって襲われてない?」

「みたいだな。」


崖から見える街道には二つの荷台が見えた。

そのうち一つは横転しており、その周りには何人かの人がいるように思える。


そして、その原因となったであろう魔物だと思われる集団が襲い掛かっていた。


「やばっ。早く助けに行こっ!」

ネーアは完全に助ける気でいるようだ。


 まぁ、俺もそのつもりだ。


「分かった。行くぞ。」

俺はネーアの肩に手をまわす。


陰なる移動を発動させる。










一瞬で()()()()()()()()()()()()()()()()に移動した。







 やべっ。失敗だ。


俺は一瞬でギミックを作った。


「陰なる爪」


俺の指が黒く鋭い大きな爪に変化した。


そのまま魔物を切り裂く。


返り血が飛んでくる。



 結構危なかった。刀だと取り出しが間に合わないし、魔力撃破は俺の実力がネーアにばれてしまう。


「ちょっと!どういうこと!?なんでこんな魔物の目の前に移動したのよ!」

ネーアがすごい勢いで聞いてくる。


「悪い。失敗した。日が照っていたからだな。二分の一を外した。」

「死にそうだったんだけど!」

「大丈夫だっただろ?」

「それはそうだけどさ!」

「本当に悪かったって。」


俺はネーアの頭をなでる。


「むぅ。」


ネーアはふくれているが、尻尾が揺れている。


俺は後ろで驚いている少女のほうを向く。


 まあ、この子を助けることができたと思えば成功とも言えるか。


「大丈夫か?」


少女の耳は長くとがっていた。

髪は水色に少しだけ緑が入ったような色だ。目は薄い青。


そして何より目を引くのが、首に着けられた重そうな金属の首輪だ。


 エルフの奴隷か・・・?


周りを見ると、様々な種族の奴隷が魔物と戦っている。

もうすでに息絶えた者もいるようだ。


荷台の近くには商人らしき男が指示を出していた。


「そこの冒険者の方たち、できればこのまま助けてほしい。」

「分かった。」


「とりあえず、俺のそばを離れるなよ。」

俺は少女の頭を優しくなでた。


エルフの少女はコクっとうなづいた。


「なんか琉斗その子に優しくない?」

「そんなことない。一度助けた命なんだからどうせなら生き延びてほしいだろ。」

「あたしだって同じ状況だったのに。」

「ネーアとこの子じゃ強さが全然違うからさ・・・」

「それはそうだけどさ。」

「文句は後で聞くから、今は敵に集中してくれ。」

「はーい。」


 さてと。


今俺たちに襲い掛かってきたのは確か、劣虎(れっこ)という魔物だ。

虎の魔物よりは弱く、低位の魔物だが、群れで襲ってくるため危険度は高い。


今は突然現れた俺たちを警戒して俺たちには襲ってきていない。

もう倒したものも合わせると30匹ほどの群れだ。


「それじゃ、ネーア頑張って。」

「・・・え?」

「俺はこの子に襲い掛かってきた魔物を倒していくから、それ以外はよろしく。」

「ひどい!!」

「ネーアを信頼してのことだ。これくらいの魔物は余裕だろ?」

「・・・」

「やばそうになったらちゃんと助けに行くからさ。」

「なんか納得いかないんだけど・・・光刃(ライトウェーブ)!」


そうぶつぶつと文句を言いながらネーアは劣虎に向かっていった。



============================



「本当にありがとうございました!なんとお礼を言っていいか。」

「あたしたちは魔人だから、魔王国の人が襲われてたら助けるのは当たり前よ。」

「ほほう、あなたたちが噂の魔人でしたか。」

「そ!」


俺たちは劣虎をすべて倒し終えた。

撃破数は俺が6匹、商人の奴隷が3匹、ネーアが残りの20匹だ。


「私は奴隷商のニヴェと申します。」

「あたしはネーア、こっちが琉斗よ。」

「ところで、これからどうされるおつもりで?」

「キリトに向かうつもりだ。」

「おお、それならぜひ私の車に乗っていってください。私もキリトに向かう予定だったのですよ。その道中であいつらに襲われました。そこまで長旅じゃなかったので大丈夫かと思っていたのですが・・・」


この世界では奴隷は普通にいる。

奴隷はすべて、過去に何かしらの罪を犯したものだ。

刑罰の罰金を払えないと奴隷落ちする。

だが、奴隷として働いて、罰金をすべて払い終えると解放される。

その扱いは決していいものではなく、また、購入主によって待遇は大きく異なるため、運の要素が大きい。


「おい、お前ら。さっさと荷台に乗り込め!お客様を乗せるから前の荷台は空けろ!」

「あ、あたしたちは別に気にしませんよ。」

「いえいえ、命の恩人に奴隷と同じ荷台に乗せるわけにはいきません。」

「・・・」


ネーアの表情が暗くなる。


「この世界じゃ奴隷は普通なんだ。気にしても仕方ないだろ。」

「・・・うん。」


荷台に乗り込もうとしていたが、助けた奴隷の少女が俺のもとに駆け寄ってきてくいくいと俺の服を引いた。


「ん?」

⦅あ・り・が・と⦆

少女の唇がそう動いた。


すぐに後ろの荷台に戻っていった。


「ははは、ずいぶんと気に入られましたな。」

「まあ、一応俺が命の恩人みたいなもんだからな。」


ネーアがジーっと俺を見ている。


 なぜそんなに俺を見る?


「それはそれは、あの子は今回の目玉商品なので本当に助かりました。」

「目玉商品?」

「ええ、明後日にオークションがありまして。あの子は生娘なので高く売れるんですよ。興味がおありですか?」

「うーん。」

「もし興味がありましたら是非お越しください。」

「ああ、分かった。」

「では、出発しますね。」



============================



俺たちは都市キリトに入った。

許可証はリーゼからもらっている。


「それでは、ありがとうございました。」

「俺たちこそ助かった。」


俺たちとニヴェは入ってすぐに別れた。

ネーアがあまりこの人のことを好きそうじゃなかったからだ。


「さて、結構にぎやかな街だな。」

「・・・うん。」


街の中では旅芸人がパフォーマンスをを披露している。

冒険者の街だけあって、居酒屋からにぎやかな声が聞こえてくる。


「どうする?さすがに疲れたか?」

「琉斗があたしに全部押し付けたからでしょ!」

「ネーアのほうが強いから・・・」

「大差ないし!」


 それは誇って言えることなのか?


「琉斗はああいう子が好みなの?」

「・・・え?」

「だから、琉斗が助けたエルフの子。」

「いや、なんでそうなる?」

「だって、あたしよりあの子のこと守ろうとしてたし・・・」


 まだそのこと根に持っていたのか。


「それに!あの子にお礼言われてた時嬉しそうだったし!」


 いやいや、お礼を言われたら誰でもうれしいだろ。


「ニウ”ェさんにオークションの話されたとき、断ってなかったし。」


 それは、奴隷なら絶対の信頼を置けるからだ。家臣と同じだ。まあ、今のところ買うつもりはない。


「あたしよりああいう子のほうがいいのかなって・・・」


 ネーアって、基本明るいのにたまにネガティブになるんだよな。


「そんなわけないだろ。俺にとってはネーアのほうがよっぽど大切だ。」

「え?」

「俺があの子を守って、ネーアに魔物を倒してもらおうとしたのは、単純にそっちのほうが勝ちやすいって思ったからだ。」


 実際、本当にやばそうだったら陰狼を出すつもりだったからな。


「オークションのは、そんなあからさまに断るのは失礼だろ。」

「うん・・・」


 はぁ。






「俺は結構ネーアのこと好きだぞ。」





「そっか。・・・って!?へっ!!!!!?」


ネーアは顔を真っ赤にしてワタワタしている。



「琉斗!?・・・それって?ええと!?つまり?」


ちょっとしたパニックみたいになってている






 ん?ああ、これじゃ変な意味に捉えられるか。


「友達としてな。」

「・・・」


「とりあえず今日は宿を探して休もうか。」

「・・・琉斗のバカ。」




今の琉斗のレートカード

《名前》 瀬川琉斗

《ランク》 勇者 ℤランク

《魔力量》 12800

《魔法属性》 陰

《ストレンジスキル》 ・ナンバース

《家臣》 (未)

《ギミック》 ・First 陰狼

       ・陰なる移動 ・陰なる収納 ・陰なる祝福

       ・陰なる爪


襲われている商人を主人公が助けるのってあるあるですよね。

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