召喚
初投稿です。
「うぅ、いってー。って、ここは、どこだ?」
俺、瀬川琉斗はあたりを見回す。
ここは宮殿か?
黒い床。敷かれた赤い絨毯。絨毯の先には階段があり、その奥には誰かいるように見えるが、暗くてよく見えない。
青紫色の炎のように輝くライト。
俺と同じように打ち付けられた体を起こしながらあたりを見回し茫然としている、人間にはない体の部位をもった人々。
そして俺たちを取り囲む鎧をまとった兵士。
ああ、これは、もしかして・・・
兵士たちの一部に空間ができる。
すると、マントをまとい、魔法使いの杖のようなものを持った、まるで宮廷魔導士のような、灰色の翼をもった人が前に出てきた。
「ようこそ、大魔王国ドラッケンバーグへ。異世界から召喚されしものたちよ。」
あー、やっぱり。こんなテンプレ的なことってあるんだな。というか、俺死んでなかったんだ。
俺たちのほうへ歩み寄る宮廷魔導士風の人を見ながら、召喚される前のことを思い出す。
前の記憶は山道を歩いていたらトラックが来て、ぎりぎり止まったけどトラックが後ろから衝突されて結局崖に落ちるというなんともいえない死に方をしたというときのものなんだ。
召喚が遅れてなくてよかった。
もう少し遅れてたら、召喚じゃなくて転生になってしまう。
しかし、魔王側にも召喚とかあるんだ。たいていのラノベって勇者側じゃないか?
と考えていると宮廷魔導士のような人の話が始まった。
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ええっと。まず、最初に言わせてもらいたいんだが。
「話、長すぎるでしょ。」
俺の左斜め前にいる獣人(おそらく狐)の女が言った。
そうっ。話が長い。おそらく1時間ほど話し続けていたぞ。あの人。
ということで、1時間に及ぶセリフ(主に魔王への称賛)をすべて言うのは面倒なので要約する。
この世界は大きく分けて二つの大国がある。大魔王国ドラッケンバーグと勇者側のハーロウ大帝国だ。そのほかにも大小合わせて五十ほどの小国や部族があるが、ほぼ二大国にこの世界は二分されているといっていい。
大魔王国ドラッケンバーグは魔王が治めているというだけあって魔物、魔獣人、獣人、死霊、吸血鬼、石人などが住んでいる。魔獣人と獣人の違いは、魔物と人が混ざっているか、普通の動物と混ざっているかという点である。石人とは文字通り皮膚が岩石でおおわれている大きな人らしい。あと、ほんの少数だが、精霊人というものもいるらしい。
それに対してハーロウ大帝国は人間、エルフ、ドワーフ、光人などがいる。光人とは、背中に光る羽をもつ人間である。
そして、およそ二百年前に大魔王国ドラッケンバーグ領から大誘拐されたグールがいる。グールは睡眠をしないため労働力としてとても優秀であるそうだ。そのため、帝国では、ひどい労働環境で働かされている。
これが原因で戦争が起きている。
「われらが偉大なる魔王様は哀れなるグールを救うために戦っておられるのだ。あぁ。なんてお優しき魔王様。なんて偉大なる魔王様。あぁ――」
はい、カット。
話を戻そう。
俺たちにとって、最も重要なのはなぜここに召喚されたのか、ということだ。
「なぜ、お前たちを関係のない世界に連れてきたのか。それはハーロウ帝国が禁術を発動したせいである。これはいくつかの異世界からこの世界に適性を持つものを召喚する禁術である。終わりのない戦争を終わらせるために生み出された禁術なため勢力の大きい二つの国両方に召喚される。―――」
なるほど、それであまりテンプレ的じゃない魔王側に召喚されたのか。
「ちなみに、今の召喚された順番が今のお前たちの強さとなっている。魔王様に近いほど強く、遠いほど弱い。しかし、それは現段階のことであり、今後どうなっていくかは自分自身の頑張り次第である。」
なるほど、それで妙にほぼ1列になっていたのか。
一番先頭は赤い翼をもった男の獣人。その次は長く細い青い尾をもった男の獣人。三番手はケンタウロスのような男の獣人。四番手は羽の生えた女の虫人。
俺はこの百人ほどのちょうど真ん中あたり、か。・・・というかいくつかの異世界からそれぞれ適正のある人を何人かずつ召喚したらしいんだが、俺の周りに普通の人間がいないのは、どういうことだ?
「さて、こちらの世界についてあらかた説明は終わったが、何か質問はあるか?」
誰も質問をする気配はない。
まぁ、仕方ないな。俺のように死にかけていたところで召喚ならともかく、普通は突然知らない世界に連れてこられたことに大きな戸惑いを感じるはずだからな。
俺は手を挙げる。
ここで最も聞かなければならないのが。
「どうすれば俺たちは元の世界に帰ることができますか?」
左斜め前の狐の獣人が驚いたようにこちらに振り向く。
(あんた、よくその質問をすることができたね。)
とでもいうように。
普通はあれだけ戦わなければならないという話をされた後で帰りたいという意思の見える質問はしにくいだろう。しかし、俺はそういうことは気にしない。
さぁ。魔王の器はどれほどのものか。これでこの召喚が大丈夫なのか、ダメなパターンなのかが決まる。
明らかに宮廷魔導士(本当に宮廷魔導士だった)は驚き、少し怒りを含んだ目つきをしていた。
「おまえ、今の話を聞いていなかったのか?」
「だが、自分の意思の確認もされず突然連れてこられたんだ。それを聞きたいのは当然だろ。」
宮廷魔導士の器はそれほどでもない。それはさっきの話で分かった。俺は宮廷魔導士に聞いているのではない。
「魔王様、私の質問に答えていただけますか?」
「おまえ、何を勝手に!」
「ヨい。そヤつは正しいことを聞いていル。それはな、禁術を使用したものに解除させルか、そいつを殺すことで元の世界に戻ル扉が現れル。」
初めて魔王の姿が見えた。全身黒紫の鎧でおおわれ、赤いマントを着ている。
「魔王様!!」
宮廷魔導士はすごく驚いていた。普段魔王は姿を見せないのだろう。
「では、この戦争を終えることなく、そいつただ一人だけを殺すことでも、帰ることができるということでしょうか。」
俺たちに戦争を終わらせてやる義理はない。
「お前は面白いやつだ。しかし、半分正しく、半分間違っていル。そいつは一人ではなく、八人だ。」
「ではその八人を殺すことで帰ることができるのですか。」
「ああ、その通りだ。だが、そいつらはハーロウ帝国の奥深くにいルため、戦争を終わラせずに帰ることは困難だロう。」
よーし、これで魔王の器は思っていたより大きいことが分かった。
「リーゼよ、あレを渡すのを忘れていルのではないか?」
リーゼとは宮廷魔導士の名前だ。
「はっ!し、失礼しました。すぐに渡します。」
何を渡されるんだ?テンプレ的ならステータスプレートなんかが渡されるのだが。
俺は小さいカードのようなものを渡された。
「そレは、レートカードだ。お前たちのこの世界でのランク、魔力量、魔法属性、ストレンジアビリティなどが数値化されている。」
おお。まさにステータスプレートだ。さてと、俺のステータスは。
《名前》 瀬川琉斗
《ランク》 勇者 ℤランク
《魔力量》 12800
《魔法属性》 陰
《ストレンジスキル》 (指定なし)
《家臣》 (未)
《ギミック》 (なし)
へぇー。属性は陰か。魔力量は多いのか少ないのかわからないな。ストレンジスキル、家臣は本当に何なのかわからない。ギミックは技みたいなことか?ランクは勇者のℤランク。
ここで俺はランクの右に表示されているものに目が留まる。
ん?勇者・・・?
投稿は不定期です。




