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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第89話 大森林の空

「飛んでる……飛んでるぞ!!」


 空を飛ぶという未知の体験に、俺は興奮しっぱなしだった。

 いや正確に言うと、以前にもクロウラーの群れから救出されたときに空飛ぶ船に乗ったことがあるのだけど……。

 あの時は状況が状況だったから、ゆっくりと空を満喫する余裕なんてなかった。

 俺が乗り込んですぐに、船も魔力切れで墜落しちゃったしね。


「地上があんなに小さく見える……。空の旅って、優雅なものねぇ」

「これなら、大樹海の探検も余裕じゃん!」


 どこからか望遠鏡を取り出したミーシャさんが、興奮した様子で叫ぶ。

 確かに彼女の言う通り、こうやって空を行けば危険な大樹海の旅も楽々だな。

 まだ行けていない魔人族や屍人族の国にも、簡単にアクセスできるかもしれない。

 上空から地図を作るなんてのもありだろう。

 俺たちがこうして夢を膨らませていると、ここで不意に操舵室の扉が開かれる。


「それはちょっと難しいな」

「あ、シェグレンさん! 居たんですね!」

「船底で魔法陣の様子を見てたんだよ。古代竜言語の部分に関しちゃ、俺が一番詳しいからな」


 なるほど、それで姿が見えなかったという訳か。

 しかし、探検が難しいとはどういうことなのだろう?


「それで、さっきの言葉の意味は?」

「空からだといけない場所が結構あるんだよ、この大樹海には」


 そう言うと、シェグレンさんは遥か西方を指差した。

 すぐさま俺は目を凝らすが、特に何も見えない。

 しいて言うなら、空が微かに暗いように見えるぐらいだろうか。


「……あっちに何かあるんですか?」

「霧が見えますね」


 すかさず、脇に立っていたマキナがそう言った。

 一方、ミーシャさんとエリスさんは怪訝な顔をしている。

 二人とも何も見えないようで、手で庇を作りながらうーんと唸っていた。

 どうやら、人の視力では見えないほど遠くに何かがあるらしい。


「この大樹海の奥地、屍人族の領域は丸ごと霧で覆われていてな。普通に行ったんじゃ入れねえようになってるんだよ」

「入れないようにって、霧の中を突っ切れないの?」


 エリスさんがそう尋ねると、シェグレンさんは首を横に振った。

 彼は腕組みをしながら、深刻そうな顔で言う。


「霧の中は猛烈な嵐だ。この船でもあっという間に落とされるだろうな」

「じゃあ、屍人族はどうやって出入りしてるわけ?」

「霧を抜ける大洞窟があるらしい。屍人族の許可がないと入れないらしいけどな。あと、魔人族の領域も飛ばない方がいいだろう。あの国は飛べるやつが多いから、空からの侵入は常に監視されてる」


 むむむ、意外と行けない場所も多いんだなぁ……。

 それを聞いたマキナが、残念そうに肩をすくめて言う。


「さようですか。上手く魔人族の領域に侵入して、彼らの錬金術の技術を得たかったのですが……」

「金でも作る気だったのか?」

「いえ、ですがヴィクトル様にとっては金よりも重要な至宝を……」

「そのぐらいにして!」


 やれやれ、油断も隙もあったもんじゃないな。

 というか、マキナはまだその計画を諦めていなかったのか。

 いや、それが実現したら嬉しくないと言えば嘘になるけど。

 …………柔らか巨乳のメイドさんは夢だからな!


「そうなると、大森林の探検というよりはやっぱり物資の輸送がメインになるかな」

「主にエンバンス王国からイスヴァールへの輸送に使うことになるでしょう。サルマト殿のご要望を完璧に満たせる船ですので」

「サルマトさんにこの船を見せるのが楽しみだなぁ……。そうだ、このままイスヴァールの上空へ移動できる?」


 俺がそう言うと、マキナは怪訝な顔をしながらも頷いた。

 彼女が舵輪を回すのに合わせて、船の軌道が少しずつ変わっていく。

 ――ゴオオオォッ!!

 遥か階下の機関室から、ボイラーの唸る音が聞こえた。

 どうやら船の方向転換については、主にプロペラが担っているらしい。

 やがて方向転換を終えた船は、岩山を超えて進んでいく。


「お、見えてきた!」


 やがて森の向こうに、イスヴァールの街を囲む城壁が見えてきた。

 改めてみると、街もずいぶんと大きくなったなぁ……!

 初めは木の建物ばかりだった街が、今では立派な石造りの街並みとなっている。

 上空から見ると、その発展ぶりがよくわかるというものだ。

 これが半年ほど前まで何もない森だったのだから、我ながら少しびっくりする。


「わぁ……!?」

「なんだ!?」


 やがて飛行船が街の上空へと差し掛かると、コボルトたちが騒ぎ出した。

 彼らは空を見上げると、口々に驚きの声を上げる。

 よしよし、思った通りの反応だな。

 これが見たかったので、飛行船をこの街まで飛ばしたのだ。

 

「マキナ、もう少し高度を下げられる?」

「もちろん可能です」

「じゃあ、事故を起こさないギリギリまで頼むよ」


 こうして飛行船の高度を下げていくと、騒ぎはますます大きくなった。

 やがて館の方から、アリシアさんたちが姿を現す。


「……なんだこれは! 船が飛んでいる?」

「おーーい、アリシアさーん!!」

「なっ! ヴィクトル様!?」

「飛行船が出来たから、お披露目に来たんだ」


 俺がそう言うと、アリシアさんたちの表情が一変した。

 彼女たちは船をじっくりと見回すと、たちまち感嘆の息を漏らす。


「これほどのものが出来るとは……! 素晴らしいですね!」

「おぉ、おぉ……!!」


 やがて、サルマトさんも店から出てきた。

 彼は飛行船を見上げると、やがて壊れたように叫び出す。


「素晴らしい、これは素晴らしいぞぉ!!!!」


 こうして飛行船のお披露目を終え、いよいよ本格的に動き出すのだった――。

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