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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第82話 夢の……

「だいぶ戻ってきたね!」


 騒動から数日後。

 ドラゴンによって荒らされたイスヴァールの街は、すっかり復興が進んでいた。

 既に瓦礫は撤去され、崩れた建物の建て替えも進んでいる。

 恐らく、一週間もすれば完全に元通りとなるだろう。

 ゴーレムたちの圧倒的な労働力があるからこそ為せる業だ。


「ついでに、防衛機能の強化もするとマキナが言っていた」

「そりゃ頼もしい。……ところで、そのマキナはいま何をしてるんだ?」

「私も聞いてない」


 そう言うと、すっかり困った顔をするチリ。

 ここ数日、マキナは秘書業務をチリに任せて地下の研究所に籠っていた。

 あのマキナが俺の世話を人に任せて研究に没頭するなんて、相当に珍しい。

 しかも、俺が聞いても何をしているのか教えてくれないのだ。


「興味深い資料でも見つかったのでは?」

「そうなんだろうけど。でも、魔石が出てきたわけじゃないんだよな」


 困ったことに、例のドラゴンもイレギュラーも魔石を落とさなかった。

 正確に言うと、イレギュラーの方は小さい魔石をいくつか落としたのだが……。

 あれがマキナの興味を引いたとは思えない。

 大樹海で入手できるものとほとんど変わらなかったからだ。


「マキナのことだから、何か深い考えがある」

「それは間違いないだろうけどさ」

「それより、問題は例のリザード族」

「あー……」


 街を襲ったドラゴン。

 ツヴァイによって倒されたそれは、いつの間にか縮んで一人のリザード族へと姿を変えていた。

 アリシアさんとひと騒動起こしたあのシェグレンさんである。

 意識を失っていたため、今は街の治療院で回復を待っている状態だ。

 なぜ巨大なドラゴンへと変化したのか。

 そして、なぜイスヴァールの街を襲ったのか。

 ツヴァイが言うには、途中から何者かに操られていたらしいが……。

 いずれにしても、早く事情を聴きたいところだ。


「……ことと次第によっては、チリに潜入捜査を頼むことになるかも」

「わかった。むしろ私はそっちが本業だから、気にしないでいい」


 軽く頷きを返すチリ。

 もともと彼女は、灰被り猫という組織の工作員である。

 潜入捜査なんてお手のものだろう。

 とはいえ、潜り込んでもらう先は大樹海の他種族勢力だ。

 人間相手とは勝手が違うだろうし、相当に危険な任務になる。

 できることなら、やらせたくはない。


「領主さまは優しすぎ。普通、自分の命を取りに来た暗殺者のことをそんな心配したりしない」

「元はそうだけど、今は同じ町に住んでる仲間だろう」

「……つくづく変な人」


 チリはどこか呆れたような顔でそう言った。

 そうしたところで、不意に後ろから声が聞こえてくる。


「マスター、ただいま戻りました」

「あ、マキナ! 何してたんだ?」

「例のイレギュラーの生体組織を研究していました。私の予想通り、あの生物は複数の生物を人為的に掛け合わせて変異させたもののようです」

「……やはりそうだったか」


 通りで、酷く不気味な感じがしたわけだ。

 自然にはあり得ない生物だと思った直感は正しかったらしい。

 ラバーニャ帝国の時代には、人工モンスターなんてのもいたらしいからな。

 そう言った類の技術が今でも残っていたのだろう。


「詳しく調査したところ、ある種の錬金術が用いられていました。系譜としてはラバーニャ帝国のものに類似していますが、このモンスターに使われている技術の方がより高度で進歩しています」

「ということは、古代帝国の時代から技術を継承して発展させている集団がいるってことか?」

「はい、恐らくは」


 そりゃまたとんでもない話だな……。

 大樹海にはそんな集団までいるのかよ。

 どこの種族かはわからないが、出来るだけ関わり合いになりたくないな。

 古代から連綿と技術を継承している集団なんてどんな隠し玉があるかわからない。

 レベルで勝っていても、ひっくり返すような兵器だってあるかもしれない。

 しかし、マキナは予想外のことを言う。


「このモンスターを生み出した集団を探し当て、技術を獲得するべきかと」

「……確かに有用そうな技術ではあるけど、リスクが高くないか?」

「リスクはありますが、それを補って余りあるメリットがあります」

「どんなのがあるの?」


 俺がそう尋ねると、マキナはコホンっと咳払いをした。

 ……何だか、ずいぶんと大袈裟な雰囲気だな。

 俺は姿勢を正すと、すぐにマキナの話を傾聴する。


「ラバーニャ帝国時代、当時の錬金術師たちが目指していた到達点は三つありました。一つは触れるものすべてを金に変える賢者の石。もう一つが永遠の命を齎すとされる生命の水。そしてもう一つが、人造人間です」

「ああ、聞いたことあるな」

「このうち、賢者の石と生命の水はほぼ実現の見通しは立っていなかったそうです。しかしながら、人造人間については試作段階まで達していたとか」

「へえ……。つまりマキナは、その人造人間の技術に興味があると」

「はい」


 すごい勢いで首を縦に振るマキナ。

 どうやら、彼女にとっては相当に重要な事らしい。

 いつもはいたって冷静なマキナから、何やら鬼気迫るものを感じるぞ……!


「な、なんかすごい勢いだね」

「ええ。もし人造人間の技術を手に入れることが出来れば、私の身体を生身に作り替えることができますので」

「そういうことか。でもマキナ、そんなに生身の身体になりたいの?」


 今の身体でも別に不自由は無かろうに。

 生身になったらむしろ不便なことの方が多そうだけどな。

 俺がそう思っていると、マキナはいたって真面目な顔をして言う。


「現状の身体ですと、マスターへの奉仕が出来ませんので」

「……はい?」

「マスターの理想とするメイドさんとイチャイチャする生活は、メイドからそう言った奉仕を受けることが――」

「昼間からそういうことを言うんじゃないって!」


 俺は大慌てでマキナの口に手を当てると、すぐさま黙らせるのだった。


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― 新着の感想 ―
やっぱ最終的に目指すのはホムンクルスか。ゴーレムの最終形態でもあるしマキナの望みとしても目指すと思ってたから予想通りかな。
主人の望みを正確に叶える従者の鑑
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