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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第51話 独立構想

「独立するって、そんな簡単にうまくいくんですか?」


 あまりにもあっさりと言ってのけたエリスさんに、俺は懐疑的な口調で尋ねた。

 すると彼女は、不思議そうな顔をして言う。


「むしろ、どこが難しいと思うの? 今でもこの街はほぼ独立してるわけだし」

「そりゃあ、独立するなんて言ったら攻め込まれますから」


 未開地を開拓した者が、貴族として新たな家を興すことは多々ある。

 しかし、国から独立するとなると話はまったく別だ。

 国家の支配に真っ向から挑戦するようなものだから、全力で潰しに来るだろう。

 たとえ大樹海であろうと、威信をかけて軍を編成してやってくるのは間違いない。

 加えてうちの街には、莫大な利益をもたらすダンジョンがある。

 成長を促すためにいずれ外の冒険者にも入ってもらう予定なので、情報は国に漏れるはずだ。


「それについては、ひとつ考えがあるわ」

「いったいどんな?」

「ファレル獣王国って知ってる?」

「確か、最近発見された南方諸島の国でしたよね」


 遥か海を越えた先にある国の名前が、どうしてこんなところで出てくるのだろう?

 俺が不思議に思っていると、エリスさんは笑いながら言う。


「あの国を発見したのは皇国の開拓船団だったわけだけどさ。皇国はあの国に対して、領有権とか主張したかしら?」

「そりゃしませんよ、元からあった国なんですから」

「そういうこと。この街も昔からあったってことにしちゃえばいいのよ。コボルト族の街がさ」


 なるほど、もともと街があったことにしてしまえば独立するも何もない。

 初めから国に所属していたという事実自体がないのだから。

 地図上では大樹海を領有していることになっているエンバンス王国も、実際のところ支配はおろか調査すらろくにできていない。

 森の中に国が見つかっても、何の不思議もないのだ。

 実際、それなりの規模を持つエルフたちの王国だってあったわけだし。


「しかしそうなると、ヴィクトル様が領主ということが問題になりませんか?」

「ピンチを助けられたコボルトたちが、彼を頼ったってことにでもすればいい。実際、この街ってそんな感じでしょ?」

「……ええ、まあ。コボルトたちを助けたことはありますよ」

「問題は王国がそれで納得するかどうか……。状況はあまり変わらないような気は致しますな」


 顎に手を当てて、思案しながら告げるサルマトさん。

 しかし、エリスさんは分かっているとばかりに言う。


「一応、戦争をするにも大義名分ってものがいるから。そこを潰してやるだけで、かなり手は出しづらくなるわ」

「しかし、あくまで時間稼ぎの手という気がいたしますがね」

「……そこは、私とゴーレムたちが抑止力になりましょう」

 

 ここで、給仕を終えたマキナが話に加わった。

 彼女は控えめながらも確かな自信を感じさせる口調で言う。


「現在、私のレベルは五百二十あります。次回の改良ではこれがさらに大きく向上することが見込まれますので、かなりの抑止力になるかと」

「確かにマキナ殿は強力ですが、流石におひとりでは限界があるのでは?」

「他の戦闘用ゴーレムの改良も進めていきます。次回の改良で私の演算力がさらに向上すれば、エリス様の知識と合せて非常に強力なゴーレムを設計できるかと」


 賢者様の知識とマキナの新しい頭脳の組み合わせか……!

 想像しただけでもとんでもないことになりそうな気がする。

 今までもとんでもない速度でいろいろな技術の開発を進めてきたマキナだが、今後はさらにそれが加速していきそうだ。


「ゴーレムの他にも、魔法兵器の開発も進めているわ。えーっと、ケラウノスだっけ? ミーシャって子から話を聞いたけど、それの再現もちょっと考えてるわ」

「空に巨大な魔法陣を浮かべて、そこから雷を落とす魔法でしたっけ」

「そうそう! あと、それに使う飛行船も研究してるわ。こっちはちょうどサンプルがあったから、割と早く作れるはずよ」


 ああ、クロウラーと戦った時に乗ったあれか!

 最後の最後で半ば墜落したような格好となったが、そう言えばマキナが回収して研究所に持っていってたっけ。

 確かにあれを再現できると、いろいろと便利そうだな。

 単純に地上を行くよりも早く移動できるだろうし。


「……そうなってくるとやはり、新しい魔石の入手が最大の課題ですな。これは来て早々、私も責任重大だ」


 そう言うと、サルマトさんはやや緊張したような顔をした。

 歴戦の商人と言えども、今回の交渉相手はエルフである。

 恐らく会ったことすらない種族であろうし、緊張するのも無理はない。

 するとそんなサルマトさんを見たエリスさんが、見かねたように言う。


「そう緊張しなくても平気よ。最悪でもぼられるだけなんだから。独立がどうこうってのもそこまで差し迫った話じゃないしね」

「まあ、そう言えばそうなのですが……」

「ま、今日のところは楽しみましょ。あの子たちみたいに」


 エリスさんが見つめる先には、楽しげに酒を飲むアリシアさんの姿があった。

 隣にいるのは、エリスさんたちと一緒に来た冒険者さんだろうか。

 みんなすでにかなり出来上がっているようで、顔を赤くして気持ちよさそうに飲んでいる。


「なかなかいい飲みっぷりではないか!」

「いやぁ、この酒は旨すぎるからな! どれだけでも飲んでしまう!」

「うむ、そうだろうそうだろう! もしよければ、そなたこの街に住むか? そうすればずっと飲めるぞ!」

「おお、それはいいかもしれんなぁ!」

「ヴィクトル様~~!! 移住希望者ですよ~~!!」


 げ、思わぬところから話が降ってきた!?

 クイクイっと手招きするアリシアさんに、俺は冷や汗をかいた。

 あんな酔っ払いの中に飛び込んだら、どれだけ飲ませられるか分からないぞ。

 俺はとっさに彼女たちから距離を取ろうとするが、ここで――。


「よし、行きますか!」

「わっ!!」


 サッと俺の手を引くエリスさん。

 まずい、この人もそのタイプだったか!

 俺はとっさに逃げようとするが、すかさず道を塞がれてしまうのだった――。

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