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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第45話 賢者の驚愕

 エリスたち一行が大樹海に足を踏み込んで、はや一日半。

 彼女たちはどうにか古地図に記されている旧開拓地の間近までやってきていた。

 ヴィクトルが生存しているのであれば、まだこの場所の付近にいることだろう。

 とはいえ――。


「……このとんでもない魔境で生き残ってるとは、とても思えませんな」


 渋い顔をしながらつぶやくサルマト。

 彼の背負っている巨大ハンマーは、返り血に濡れて赤黒くなっていた。

 ここに到着するまでに、既に三度もモンスターの襲撃を受けている。

 充実した戦力があったため、いずれも撃退することには成功したが……。

 随行している冒険者の中から、怪我を負った者が既に数名出ている。

 この大樹海で数か月生き残るなど、サルマトにはとても不可能なように思えた。


「でも、このモンスターの多さは一時的かもしれないわ。チリ、あなた間違いなくクロウラーの群れとそれを呑み込む何かを見たのよね?」

「ええ、まあ」


 あまり思い出したくはないのだろう。

 チリは苦虫を噛み潰したような顔をしてそう言った。

 するとエリスはうんうんと満足げに頷く。


「恐らくだけど、クロウラーに追い出されたモンスターが暴れてるだけでしょ。ならたぶん、せいぜいここ数日の現象だわ」

「だとしても、まずありえないでしょう」

「ヴィクトルは大樹海へ追放された際に多くのゴーレムを連れて行ったって言うわ。ひょっとすると、ゴーレムを使って強固な拠点を築いているかも」


 ヴィクトルが連れて行ったゴーレムの中には、戦闘用のものや建設用のものなども含まれていたという。

 どれほどの性能のものか、エリスが直接見たわけではないのであくまで推測だが……。

 もし優れたものならば、それらを駆使して拠点を作った可能性は十分にある。

 なにせゴーレムには休息が要らないのだ、肉体労働にはうってつけだろう。

 

「うーん、そんなにうまくいくものか……」

「まあ、あと少しできっとわかるわ。旧拠点には水場があるらしいから、まずそこを離れるようなことはないだろうし」


 こうしてさらに歩くこと数分。

 急に、それまでの獣道が一変した。

 木々が切り開かれて幅が広がり、土がしっかりと踏み固められている。

 さらに一定の感覚で街灯のようなものまで設置されていた。

 王国の主要な街道と同等か、それ以上によく整備された道だ。


「これは……!!」

「どうなっている……!?」


 予想外の光景に、エリスたち一行は大いに戸惑った。

 仕事柄、滅多なことでは感情を表に出さないチリもたまらず眼を見開く。


「……これはとんでもないことになる」


 この先に、何か途方もないものが待ち受けている。

 チリはそう直感した。

 しかし、ここで止まってしまうわけにもいかない。

 エリスたち一行は周囲に細心の注意を払いながらも、ゆっくりと進んでいく。

 すると視界の先に、堅固な城壁が見えてくる。


「……エリス様。もしや、道を間違えたのでは?」

「いや、そんなわけは……。大樹海に間違いなく入ったし、方向だって正しいはず」

「けどこれは……なんだ?」

「これほどの規模の城壁なんて……」


 堅固な城壁の奥には、建物の屋根らしきものもいくつか見えた。

 中には、石造りの館のような立派なものまで見える。

 未開の大樹海の中にあるにしては、明らかに異様な風景だった。


「これはひょっとすると、伝説の亜人族の国かもしれない……!」


 サリエル大樹海の奥地には、亜人族たちの王国がある。

 エリスは以前に本で読んだ伝説を思い出した。

 ゴブリンやオークはともかく、エルフや魔人には人間と同等の知能がある。

 彼らが国を築いていたとしても、あり得ない話ではなかった。


「とにかく、この場所は怪しすぎます。もう少し離れて様子を見ましょう」

「そうね、私も賛成だわ」


 サルマトの慎重な意見にエリスも賛成した。

 彼らは城壁からじりじりと距離を取っていく。

 だがここで、城壁の中から全身甲冑の兵士が姿を現した。

 彼らはエリスたちを発見すると、すぐさま接近してくる。


「……やるしかないですな!」

「上級魔法を使うわ! 誰か前衛を!」

「任せてください!」


 冒険者たちに前衛を任せ、後ろに下がるエリス。

 彼女は呪文の詠唱をしながら、魔力を高めていく。

 こうして彼女の手のひらに大きな光の球が出来たところで、門の中からふわふわとした毛に覆われた人型が姿を現す。

 彼らはさながら、二足歩行をする犬のようだ。


「や、辞めてください! 街が壊れちゃいます! 話し合いましょう!」

「……なにかしら?」


 突然現れた謎のもふもふとした生き物に、エリスの動きが止まった。

 彼女は高まっていた魔力をいったん下げると、そのまま前衛の間から前に出る。


「私が代表のエリスよ。あなたたちは?」

「僕はこのイスヴァールの街を守る衛兵隊の一人、ママムです!」

「イスヴァールの街、か。ここはあなたたちが築いた都市なの?」

「いいえ! 領主さまがゴーレムを使って作りました!」

「ゴーレム!?」


 ゴーレムという言葉に、思わず食いついてしまうエリス。

 いきなり距離を詰めてきた彼女に、ママムはひぃっと小さく悲鳴を上げる。

 ぐいぐいと詰め寄るエリスの眼はもはや飢えた獣のよう。

 言葉にできないほどの迫力があったのだ。


「その領主さまってもしかして、ヴィクトルって名前じゃない? ねえ!?」

「え、ええ。そうですけど」

「凄い!! たった数か月でこんな都市を作るなんて!! 凄すぎる!!」


 興奮のあまり、エリスの声が大きくなった。

 彼女はそのままの勢いで、その場でくるくると回り始める。

 それはさながら、喜びが抑えきれずに、全身から溢れ出しているかのようだった――。


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