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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第38話 大襲来

 天より降り注ぐ無数の雷。

 稲光が宙を引き裂き、そのまま大地を駆け抜ける。

 さながら、天地が砕けたかのようだった。

 瞬く間にアリシアたちの視界が白く染まり、遅れて無数の雷鳴が轟く。

 ――ドガガアアァンッ!!!!

 それはもはや、音というよりもある種の衝撃波。

 とっさに彼女たちは耳を塞ぐものの、意識を刈り取られそうになる。


「くっ!」

「めちゃくちゃだし!」


 光と音の暴力に耐えること数十秒。

 アリシアたちがゆっくりと目を開くと、森の様子は一変していた。

 そこかしこから煙が上がり、炭と化した木々が崩れるのが見える。

 さながら、辺り一面が山火事にでもあったかのようだ。

 恐る恐る双眼鏡を取り出してみると、大地を埋め尽くしていたクロウラーの群れの動きが止まっている。

 彼らの身体からは白い湯気のようなものが立ち上っており、先ほどの魔法攻撃によって焼き尽くされてしまったようだ。


「……おぉ!! 凄まじい!」

「流石、森人王様の奇跡を再現しただけのことはある!」


 口々に喜びの声を上げるエルフたち。

 アリシアとミーシャも、そのあまりの威力にしばし呆然とする。

 小さな国の軍隊ならば一撃で吹き飛ばされてしまいそうだ。

 流石は六王の一角と言ったところであろうか。

 こうして二人が荒野と化した周囲を見渡していると、マルエラが剣を抜いて叫ぶ。


「エーテリアス魔導王国、万歳!!」

「万歳!!」


 マルエラの声に合わせて高々と手を上げるエルフたち。

 その場にいた者たち全員、勝利を確信しているようであった。

 するとここで、飛空艇がマルエラたちに向かってチカチカと光を発する。


「……ありえない! まだ敵をほとんど削れていないですって!」


 予想外の通信内容に、マルエラは慌てて鏡を取り出して確認の信号を送った。

 するとここで、双眼鏡を覗き込んでいた兵士が青ざめた顔で言う。


「大変です!! 奥からクロウラーがどんどんと押し寄せてきます!! ケラウノスの効果、ほとんどありません!」

「貸して!!」


 双眼鏡を兵士からひったくり、自ら覗き込むマルエラ。

 たちまち、倒れた仲間を乗り越えて迫ってくるクロウラーの大群が目に飛び込む。

 ケラウノスでかなりの範囲を焼き尽くしたというのに、その数は減った様子がまるでなかった。

 むしろ、先ほどまでよりも勢いを増しているようにさえ見える。


「そんな……! ケラウノスの再発射までは、あと何分かかる?」

「三十分はかかります!」

「……何とか持たせるしかない! 総員、武器を構えよ!!」


 楽勝ムードから一変して、緊迫した空気が場を満たした。

 騎士たちは剣を抜くと、迫りくるクロウラーの群れに備える。

 

「ランスロット型、いけ!!」


 アリシアもまた、声を張り上げてゴーレムたちに号令をかけた。

 たちまち、ランスロット型が次々と防壁から飛び降りていく。

 彼らは互いに肩を寄せ合うと、そのまま槍を構えて槍衾を形成した。

 そう簡単には押しつぶされない強固な防御陣形である。

 そして――。


「きたわ!!」


 大きく声を張り上げるマルエラ。

 地鳴りを響かせながら、黒い波頭がとうとう防壁まで押し寄せてきた。

 それに応じるように、騎士たちも声を張り上げる。


「うおおおおおっ!!!!」


 平均レベル五十を誇る屈強なるエルフの騎士たち。

 彼らの放つ斬撃が、次々とクロウラーを切り裂いていく。

 しかし、あまりにも多勢に無勢。

 獅子奮迅の活躍を見せる騎士たちだが、次第に黒い群れに呑み込まれていく。


「タロス型、援護して!!」


 ここでさらに、ミーシャがタロス型を動かした。

 押しつぶされそうになっていた騎士たちを、ゴーレムの巨体が庇う。

 しかし、それもつかの間。

 圧倒的な質量に耐え兼ねて、タロス型の巨体が軋みを上げた。

 やがて数体が押しつぶされ、勢いをつけたクロウラーたちが雪崩を打つ。


「……撤退! 防壁の上に下がりなさい!!」


 マルエラの声が響く。

 それと同時に、騎士たちは急いで防壁の上に昇った。

 しかしクロウラーたちもすぐに、互いに折り重なりながら黒い塊となって押し寄せてくる。


「ケラウノスは!? まだなの!?」

「まだ打てません!! あと十分はかかります!」

「そんなに持たない!」

「そうおっしゃられても、無理なものは無理です!!」


 肩で息をしながら、精一杯、首を横に振る術者たち。

 今すぐにケウラノスを撃てば、彼らの命に関わることは明らかだった。

 だがこうして揉めている間にも、クロウラーの群れは防壁を圧迫する。

 こうして、いよいよ壁が崩れそうになった瞬間――。


「…………退いていく?」


 防壁を押し潰そうとしていたクロウラーの群れが、急に止まった。

 いったい、何が起こったというのか。

 皆が呆然とする中、クロウラーはそのまま進行方向を転換する。

 そしてそのまま何かに導かれるように、防壁を大きく迂回し始めた。

 

「助かったのか?」

「そのようだな……」


 危機が去り、ほっと胸を撫で下ろすエルフたち。

 アリシアもふうっと深呼吸をして、その場に座り込んだ。

 防壁の下ではクロウラーによって破壊されたゴーレムたちが、多数転がっていた。

 五百体いたランスロット型のうち、既に二十体ほどがやられている。

 もしあのまま攻防が続いていたら、壊滅的な被害が出ていたかもしれない。

 ミーシャが指揮するタロス型はさらに深刻で、本来戦闘用でないこともあって五分の一ほどがやられていた。


「命拾いしたし!」

「危なかったな……」

「あいつらが気まぐれで、ほんと良かったじゃん」

「ああ」


 安心したところで、クロウラーたちが向かう方角を見るアリシアとミーシャ。

 するとここで、アリシアがふとあることに気付く。


「……いや、待て。やつらの向かっている方角は、イスヴァールのある方角じゃないか!?」


 ハッとしたように、その場で立ち上がって叫ぶアリシア。

 イスヴァールの街に今最大の危機が迫ろうとしていた――。


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― 新着の感想 ―
芋虫のモンスターの大群ってのもあってまるで王蟲だな 子供が殴っても倒せる程度のモンスターだったらこんな高威力の魔法使わなくても薄く広く微弱な電気を流すだけの方が良さそう
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