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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第28話 名乗り

 大森林に君臨する六王。

 その一角である森人王の麾下にあるエルフ族は、大森林の南東から中央部に小さいながらも国を持っていた。

 その名をエーテリアス魔導王国という。

 南を白骨沼、北を水晶谷という難所に守られ、さらに精強な騎士団を有するこの国はまさに難攻不落。

 六王同士の激しい覇権争いが繰り広げられる中でも長く平穏を保ってきた。

 ところが――。


「な、なんだあれは……!?」


 白骨沼に設けられた監視所。

 そこで沼地を監視していた兵士の一人が、異様な集団を発見した。

 まず先頭を歩いているのは、鎧を纏った巨人であろうか。

 彼らは手にこれまた巨大なシャベルを持っていて、後ろに付き従っている台車から次々と砂利を取り出しては沼地を埋めていく。

 そしてさらにその後ろから巨大な車輪を持つ車が現れ、埋め立てられた沼地を押し固めていった。

 いったい何をしているのかはわからないが、とにかく異変が起きていることだけは分かる。

 

「お、おい! 起きろ、妙な奴らがいるぞ!」

「……はぁ?」


 すぐさま、休憩していた他の兵士たちを叩き起こす監視兵。

 突然のことに他の兵士たちは反応が悪いものの、すぐに目の前で起きている異変に気付いて驚く。


「んだありゃ?」

「ゴブリンの工作部隊か……?」


 ここ最近、小鬼王配下のゴブリンたちの動きが活発化していた。

 風の噂によれば、ゴブリンロードの一人がコボルトたちに倒されたらしい。

 にわかには信じがたい話だったが、恐らく、うまく罠にはめられたのだろう。

 コボルト族は力ではゴブリン族に劣るが、知恵では勝っているというのがエルフたちの評価だった。


 こうして倒されたロードの後釜となるべく、ゴブリンたちはいきり立っていた。

 そこで白骨沼を越えて、エルフ領へ侵犯する者たちがいたのだ。

 エルフを捕らえて王に献上し、少しでも評価を上げるためである。

 もっとも、そんな浅はかな策略を巡らせるせこいゴブリンなどエルフたちに蹴散らされるのが関の山であったが。


「あの巨人……まさか、オークか? 豚と小鬼がとうとう手を組んだのか?」

「身体の大きさは近いが、体形が違うだろう。それに連中は仲が悪いはずだ」

「だが、やつらはお互いにエルフの女が大好きだぜ。おぞましいことにな」

「その点では利害が一致するだろうが……。やつらは頭が悪いからな」


 見知らぬ奇妙な集団を前に、ああでもないこうでもないと議論をするエルフたち。

 そうしている間にも、得体のしれない集団は着々と彼らの元へと接近してくる。


「いったん、奴らの正体を見極めてから報告しよう」

「そうだな。……インビジブル!」


 すぐさま小屋を出て、魔法を発動させるエルフたち。

 たちまちその姿が周囲の景色へと溶け込んでいき、やがて霧に紛れた。

 ――中級光魔法インビジブル。

 光の屈折を操ることによって、姿をくらませる希少魔法である。

 完全に透明になるわけではないのだが、ここは常に霧の立ち込める白骨沼。

 あらかじめ存在を分かった上で、よほど注意深く見なければ見つかることはない。

 あとは音さえ出さなければ、無事にやり過ごせるはずだった……のだが。


「……熱源がありますね」


 巨人の集団が通り過ぎ、ひとりでに動く妙な車が現れた時だった。

 涼やかな女の声が響き、不意に車が動きを止める。

 そして装飾の施された豪華な扉が開き、中から一人の女が降りてきた。

 ――美しい。

 ふわりとスカートを広げて、音もなく湿地に立つ女。

 特徴からして人間のようだが、その姿はエルフたちが見惚れるほどに美しかった。

 黒く流れる艶やかな髪、赤く輝く瞳、白磁のような肌。

 そして、極め付きは浮世離れするほど整った顔立ち。

 すべてが黄金律で構成されたそれは、もはやその場にいるだけで芸術である。


「エルフですね? 出てきなさい」


 光魔法が効いていないとでもいうのだろうか。

 女はエルフたちの方を見ると、凛と声を張り上げた。

 しかし、エルフたちは女の出方をもう少し見極めようと動かない。

 

「もう一度言います、出てきなさい。そこにいることは分かっています」


 姿を確認していることを強調したいのだろう。

 女は手を挙げると、そのままエルフたちをまっすぐに指差した。

 こうなってしまっては、流石に逃げられそうもない。

 エルフたちは仕方なく魔法を解き、姿を現す。


「……お前たちはいったい何者だ? なぜここに来た?」

「私は偉大なるマスター、ヴィクトル様の従者マキナでございます。なぜここに来たかは、マスターの口から直接お伝えいたしましょう」


 マキナと名乗った女は優雅に礼をすると、視線を車に向けた。

 すると車の中から、一人の男が降りてくる。

 年の頃は二十代前半といったところであろうか。

 身なりは整っているが、恐ろしいほどの美貌を誇る女とは対照的にいささか影の薄い人物であった。

 あらかじめ主人だと紹介されなければ、女の方が主だと思ったかもしれないほどだ。


「初めまして、俺はヴィクトル。この先にある都市、イスヴァールの領主だ」


 後に、大樹海の歴史に変革を起こすヴィクトル。

 そして、ゴーレムたちの築いた都市イスヴァール。

 両者の名前が初めて歴史の表舞台に現れた瞬間であった。


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