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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第27話 リトルダンジョン

「まさかこんなに魔石が取れるなんて……すごい!」

「ダンジョンですからね。外のモンスターと比べて、魔石が取れやすいんですよ。それにランスロットⅡ型も大活躍でした」


 そう言うと、アリシアさんは後ろに整列したゴーレムたちを見やった。

 ――迷宮探索用ランスロットⅡ型。

 閉所での戦闘を想定して、ランスロット型を一回り小型化したタイプだ。

 さらに迷宮の過酷な環境に耐えるため、鎧の耐久性なども大幅に上げてある。

 鑑定魔法で調べた結果、その戦闘力はレベル三十相当。

 アリシアさんたちには劣るが、熟達した人間の冒険者ぐらいの力はある傑作だ。


「モンスターの強さはどうでした?」

「んんー、大樹海の平均よりはかなり強いな。レベル三十以上ってとこだ。特に、シャドウウルフが厄介だったぜ」

「シャドウウルフ?」


 初めて聞くモンスターの名前であった。

 すると、ミーシャさんが俺を脅かすような口調で言う。


「ウルフの亜種で真っ黒い毛皮をした奴だよ。闇魔法でこちらの視界を奪って、いきなり襲ってくるからマジヤバい」

「うわ……結構えぐいですね」

「ゴーレムも探知機能がやられるみたいでな。同士討ちしそうで大変だった」

「なるほど。では、温度探知機能も装備しておきましょう」

「その温度で探知するやつって、俺たち用のも作れないか?」

「人間の装備に応用可能かどうか、検討いたします」


 ガンズさんの言葉を聞きながら、さらさらとメモを取るマキナ。

 今後は魔石を回収するためにゴーレムだけでの探索も予定されている。

 その障害となる要素は今のうちに排除しておかないとな。


「他に障害となりそうなものは、何かありました?」

「他は大してなかったですね。むしろ……今回の攻略で、最深部まで行けました」

「え?」


 俺とマキナはともに驚いた顔をした。

 ダンジョンの完全攻略と言えば、国家を挙げて行うような事業なのだ。

 アリシアさんたちは決して弱いパーティではないが、いくらなんでもいきなりそんなことができるとは思えない。

 するとガンズさんを補足するように、アリシアさんとミーシャさんが言う。


「全部で五階層しかなかったのです。階層主もファイアリザードで大した強さではありませんでした。レベル六十程度ですね」

「たぶんだけど、まだダンジョンとして育ってないんじゃない。ちょっと小さすぎ」

「育ってない?」

「ええ。ダンジョンは年数とともに育つと言われているんです」


 なるほど、まだ生まれたばかりの赤ちゃんダンジョンだったってわけか。

 きっと今までに見つかったダンジョンは、発見されるまでに長い年月を経ていたのだろう。

 それがこのダンジョンの場合、たまたまできた場所の近くに大蛇様が住み着いていたためすぐに存在がバレてしまったというわけだ。

 これまた運がいいというか、悪いというか……。


「最深部まで到達したということは、核を制圧したのですか?」

「いや、それらしい巨大な水晶は見つけたのだが……。私たちではどう扱っていいのか分からなくてな」

「あたしもいろいろ調べようとはしたけど、正直さっぱりだったし」

「なるほど。では、私が後で調査に行きましょう。ミーシャも同行してください」

「わかったし!」


 まだ帰ってきたばかりだというのに、元気よく返事をするミーシャ。

 自ら研究員として志願しただけあって、もともと探求心が強いのだろう。

 マキナと未知の存在を調べられることが、よっぽど嬉しいらしい。


「では、その間はヴィクトル様の護衛は以前のように私がやるとしよう」

「お願いいたします。しかし、こうなると手がいよいよ足りなくなってきましたね」


 うーんと困った顔をするマキナ。

 いま現在でも、彼女は非常に多忙な身の上である。

 俺のメイドとしての仕事はもちろんのこと、研究から拠点の実務に至るまで様々な仕事を担っている。

 いくら疲れ知らずのゴーレムとはいえ、そろそろ一人で出来る仕事量ではなくなってきていた。


「今のところは何とか回っていますが、いずれは身体を増やすことも考えた方が良いかもしれません」

「身体を増やす?」


 マキナの口から飛び出した、あまりにも力技な解決策。

 俺たちは少し呆れた顔をするが、マキナはいたって真面目な様子で言う。


「私の演算能力が大幅にさらに増大すれば、身体を複数動かすことは十分に可能です。そのためには、さらに大きな魔石が必要となりますが」

「今よりデカい魔石となると、なかなか手に入りそうもないな……。いくらここが大魔境でもそんな化け物そうそういるか?」

「ダンジョンをうまく育てられれば可能かもよ。ミナスティルの下層とか、上位竜種が階層主だったはずだし」

「だが、それをするためにはまず何をすればダンジョンが育つのかを研究する必要があるな」


 ああだこうだと話し合うアリシアさんたち。

 いずれにしても、大きな魔石の入手にはなかなか手間がかかりそうだ。

 一朝一夕では困難だろう。


「確か、この村に溜めてあった魔石ってもともと物々交換用だったよね?」


 ここで俺は、後ろに控えていたムムルさんの方を見た。

 するとすぐさま、彼は怪訝な顔をしながらも頷く。


「ええ、その通りですが何か?」

「だったら、エルフたちも魔石を蓄えてるんじゃないかな。上手くすれば、譲ってもらえるかもしれない」

「確かに、六王の一角であるエルフ族ならば巨大な魔石を持っていてもおかしくはありませんな。ですが、簡単には……」

「そこはまあ、おいおい考えるとしよう」


 心配するムムルさんをよそに、俺はそう言って会話を打ち切った。

 まあ、俺たちにはマキナの戦闘力とお山の資源がある。

 仮に代価を吹っ掛けられたとしても、ある程度は応じられるだろう。

 とりあえず重要なのは、まずエルフとの貿易を開始することだな。

 できればそれまでに――。


「貿易を始める前に拠点の名前とか考えておかないとな。名もなき村じゃ、相手と会話するときに困る」

「そうですね。他の地域と交流するならば、名前はあると便利でしょう」

「お、そう言うことなら俺たちも考えるぜ!」

「あたしも!」


 積極的に手を挙げるみんな。

 こうして俺たちは、着々と準備を進めていくのだった――。


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