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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第24話 エルフ領の話

 ゴーレムに乗って移動すること二時間足らず。

 俺たちはお山のふもとのコボルト村へとやってきていた。

 急速に開発の進められている拠点と比べて、こちらはあまり変化がない。

 強いて言うならば、新しく頑丈な柵が作られ警備用のランスロット型が巡回しているぐらいだろうか。


「これは領主さま! いったい何の御用でしょう?」


 村に着くと、すぐさまムムルさんたちが出迎えてくれた。

 俺はにこやかな笑みを浮かべつつも、さっそく話を切り出す。


「ちょっとムムルさんに話を聞きたいことがあって。いま大丈夫?」

「もちろんです。むしろ最近は、領主さまのおかげで暮らし向きも安定しておりましてな。時間が余っているぐらいですよ」

「そりゃ良かった。領民のみんなが楽に暮らせてるなら、そんな嬉しいことはない」


 こうして軽く言葉を交わしながら、俺たちはムムルさんの家へと上がらせてもらった。

 そして出されたジュースのようなものを飲みながら言う。


「ムムルさん、前にエルフのことについて話してましたね? あれについてもう少し詳しく教えてくれません?」

「エルフについてですか? 別に構いませんが、エルフと何かするおつもりで?」

「実はですね……」


 簡単に拠点の状況について説明するマキナ。

 するとそれを聞いたムムルさんは、ふむふむと深く頷く。


「そういうことですか。確かに、エルフたちはリャマという家畜を飼っておりますな。大柄なヤギとシカを合せたような家畜で、肉も旨いですぞ」

「おぉ、そいつを譲ってもらえたら助かるなぁ」

「ですが、なかなか難しいでしょうな」

「エルフたちの領地まで行くことがですか?」


 祝勝会の席で、エルフたちの領地へは難所を越えていかなければならないとか聞いた覚えがある。

 えーっと確か、白骨沼だったっけ?

 コボルトたちでは通過できないので、向こうから来てくれた時だけ貿易するとか言ってたような。


「それもあります。ですがそれ以上に、エルフたちは我らのことを見下しているのですよ。交易の際も、はっきり言って鉱石と引き換えに施しをしてやるといった雰囲気でして……。品目の選択すらさせてもらえないのです」

「それ、交易というにはずいぶんと一方的な関係だなぁ……」

「森の覇権も握れない有機生命体ごときが生意気ですね」


 ……しれっとトゲのあることを言うマキナ。

 段々と過激派になってきているように見えるのは、果たして気のせいだろうか?


「仕方ありません。相手は六王の一角ですし、抱えている戦力も多いですから」

「そうなんですか?」

「ええ。彼らの魔導騎士団の平均レベルは五十以上だとか。その上、ゴブリン族ほどではないですが相当に数も多いようです」

「なるほど、確かに以前のこの村の戦力では話にならないでしょうね」

「しかも、エルフを束ねる魔導王はその騎士団を一人で全滅させられるほどの力を持つそうですよ」


 平均レベル五十以上の騎士団か……。

 一流冒険者のアリシアさんでそのぐらいと考えると、とんでもない戦力だな。

 しかも、王はそれを一人で全滅させられるってマキナよりも強いんじゃないか?

 レベル五百どころじゃすまなさそうだ。

 ……うーむ、こちらを見下して威張るだけの戦力はあるってことか。


「ひとまず、力に訴えるのは愚策だな」

「ええ、業腹ですがしばらくは控えた方がよいでしょう」


 しばらくって、いずれはどうにかするつもりなのだろうか?

 俺はマキナの言葉に引っかかりつつも、腕組みをして唸った。

 亜人の中では友好的とされるエルフすら、そんな有様なのか。

 肉以外にも拠点に足りない物資をいろいろと輸入するつもりだったが、それだと交渉はかなり難航しそうだ。


「エルフに気に入られる策が必要でしょう。何か手掛かりはありませんか?」

「うーん、エルフたちは優れた魔法の使い手です。魔法使いならば、話が合うかもしれませんな」

「そうなるとミーシャさんだね」


 暁の剣のメンバーの一人であるミーシャさん。

 彼女は冒険者でありながら、なかなかに優れた魔法使いである。

 前に聞いた話によると、火の上級魔法まで使えるとか。

 これは上級貴族が抱えている魔法使いと比較しても、遜色ないぐらいの実力だ。


「念のため、護衛のゴーレムなども舐められないように豪華なものを用意いたしましょう。ミスリルコーティングなどはいかがでしょうか」

「それは流石に派手過ぎない?」

「いえ、こういった場合は派手過ぎるぐらいでちょうど良いかと。外交は見栄の張り合いといった側面もございますので」


 なるほど、確かにエンバンス王国の貴族も見栄と体面で生きてたからなぁ。

 亜人族が相手でもそれは変わらないということか。


「わかった、それで行こう。あと、移動用の台車ももっと立派な奴を用意しようか」

「はい、十人程度乗れるものが良いかと」

「それでデメテル型にでも引っ張らせると見栄えは良さそうだ」


 マキナと話しながら、アイデアを膨らませていく俺。

 するとここで、ムムルさんが言う。


「……規模が大きくなると白骨沼を通過するのが大変かもしれませんぞ」

「あー、そう言えば難所のこと忘れてた。どんな場所なの?」

「一年中、霧に覆われた湿地帯です。方向感覚がなくなってしまう上に、凶悪なモンスターも住み着いております」

「なるほど。モンスターは何とかなるとしても、湿地帯は結構厄介だな……」


 交易をするということは、大量の物資を運ぶということである。

 湿地帯ということは、当然のように足場が悪いだろう。

 ゴーレムを使うとしても、物を運ぶにはかなりの手間がかかりそうだ。

 特に台車なんて、車輪がすぐに湿地へめり込んでしまう。

 しかしここで、マキナがあっけらかんとした顔で言う。


「それならば問題ないでしょう」

「え?」

「非常に簡単な解決策があります。湿地帯に道を作ればよいのです」

「いやいや、そんな簡単にいうけど……」

「ゴーレムを量産すれば労働力の問題はありません」

「そうはいっても、魔石はどうするのさ?」


 俺がそう言うと、マキナはフフッと不敵な笑みを浮かべた。

 まるで、既に魔石を調達する当てがあるようである。

 

「私の推測では、あの山には――」

「大変だ!!!!」


 ここで、タイミングを計ったように家のドアが押し開かれた。

 そして中に入ってきたアリシアさんをみて、マキナは少し驚いた顔をする。


「早かったですね。戻ってくるのは明日以降かと思っていましたが」

「緊急だったからな。それより大変だ、ダンジョンが見つかったぞ!!」


 ……うっそだろぉ!?

 思わぬ報告に、俺はたまらず腰を抜かしそうになるのだった。


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