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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第20話 新たな日常

「おおー、あと少しだな!」


 建設途中の道を見ながら、よしよしと腕組みをして呟く俺。

 コボルトたちが領民に加わって、はや一か月。

 この間、最優先で開発を進められたのはコボルト村と拠点とを結ぶ道であった。

 いっそコボルト村に拠点を移すという考えもあったのだが、あいにく、コボルト村周辺には農業に必要な大きな水場が無かった。

 そのため、現在の拠点も残すこととしたのである。

 そこで必要となったのが、両者を効率よく行き来するのための道だったのだ。


「これが開通すれば、コボルト村まで二時間もかからないでしょう」

「ああ。これで本格的な開拓が出来そうだ」


 あと半日もすれば、道は無事に開通するだろう。

 ゴーレムたちの順調な働きぶりを見届けたところで、俺は護衛のアリシアさんと一緒にいったん拠点へと戻った。

 こちらも、二週間前とは比べ物にならないほどに開発が進んでいる。

 コボルトたちがこちらに移ってきたため、それを受け入れるための家や施設を作ったのだ。

 以前は数軒しか家が建っていなかったはずなのに、今ではちょっとした街並みのようなものが出来ている。

 加えて――。


「ヴィクトル様! ポッパル村の村長が来ています!」

「また?」


 俺たちを出迎えたポポルが、労をねぎらうのもそこそこにそう告げた。

 この大樹海に住むコボルトの集落は、つい先日助けた村以外にもいくつかある。

 それらの村がどこからか情報を聞きつけ、俺の傘下に入りたいと次々に申し出てきたのだ。


「領民になることは許可しよう。ただ、拠点への移住は準備が出来てないから待ってもらって」

「わかりました。それから指定された分の畑の拡張が完了いたしました。これでひとまず、現在の移住者分の食料は確保できるかと」

「わかった。まだ人は増えるだろうから、もう少し広くしておいて」

「では、一回りほど大きくしておきましょう」


 それだけ言うと、ポポルは足早に去っていった。

 ……はぁ、この拠点も人が増えてきて仕事が激増してるなぁ。

 下手をすれば、アルファドに赴任した頃より大変かもしれない。

 あの街は主力産業が傾きつつあるという点では危なかったけど、歴史も長くて割と安定してたからね。

 こういう開拓初期独特の慌ただしさのようなものはなかった。


「……開拓が進んでいるのに、段々と理想から遠くなっている気がする!」

「理想とおっしゃられますと?」

「働かずにメイドさんとイチャイチャする生活」


 俺がそう言うと、アリシアさんはその場で固まってしまった。

 その口は半開きになっていて、すっかり呆れているようだった。

 しかし彼女はすぐに、気を取り直すように笑いながら言う。


「流石はヴィクトル様。冗談もお上手です!」

「いやいや、俺はいたって本気だぞ」

「そんなわけないでしょう。実際、ヴィクトル様はここ一か月ずっと働きづめだったではないですか。あなたはとても働き者です」

「それはまあ……。コボルトたちが領民になったし、マキナもまだ改良できてないしな」


 大蛇様の戦闘で損傷したマキナは、新しい身体への移管が決まっていた。

 ちょうど魔石も手に入ったことだし、修理をするよりも作り直すこととしたのだ。

 しかし、流石にマキナほどの高性能ゴーレムは一朝一夕にはできない。

 この一か月、夜の時間をすべてマキナの新しい身体の製作に充てていたが未だに完成していなかった。

 今までのマキナを超える性能を実現するためには、やはり相当の時間がかかるのだ。


「マキナはいつ頃になれば完成するんですか?」

「身体の方はほぼ出来てるから、後は核の魔石に術式を刻むだけだね。今日の夜に作業して明日には完成すると思う」

「おお、あと少しではないですか!」


 そう言うアリシアさんの顔は、心底嬉しそうであった。

 マキナがいないこの二週間、彼女には護衛だけじゃなくてマキナの代わりに色々こなして貰ってたからなぁ。

 慣れない仕事に、いろいろと疲れがたまっていたのかもしれない。


「ああ。でも、ここが一番の山場なんだ。超精密作業だから」

「なるほど。では、後でコーヒーでもお持ちしましょうか」

「いやいい、むしろ集中したいから誰も工房に近づけないようにして」

「わかりました! ミーシャとガンズにも言っておきます!」

「じゃあ、行ってくる」


 こうしてアリシアさんに見送られながら、俺は工房へ入った。

 するとたちまち、首だけとなったマキナが目に飛び込んでくる。

 腐食が激しかったため、首から下はいったん分解したのだ。

 それと、今回の作業で彼女に直接的な補助をしてもらうためでもある。


「調子はどう、マキナ」

「首だけですので特に変わりはありません。強いていうのならば、早く新しい身体が欲しいです」

「わかってるって。よし、さっそくやるか!」


 こうして工房の奥へ行くと、俺は箱の中から魔石を取り出した。

 あの日、大蛇様の頭から出てきた特大サイズのものである。

 内部に満ちる濃密な魔力が、怪しく渦を巻きながら光を放つ。

 これまでに見てきたレッドドラゴンやグレートボアの魔石などとは、明らかに格が違っていた。


「……さあ、ここからが一番大変な作業だぞ」


 魔石を目の前に置いたところで、俺は作業用の機械手袋をはめた。

 この手袋の表面にはミスリル製の外骨格が入っていて、それをマキナに動かしてもらうことで超精密作業が可能となるのだ。

 ある意味でここからは、俺とマキナの共同作業ともいえる。


「コード接続完了。マキナ、手袋を動かせるか?」

「問題ありません」


 マキナが返事をすると同時に、手がひとりでに動いた。

 よし、これなら補正は任せられそうだな。

 俺は首だけになっているマキナに向かってグッと親指を上げる。


「完璧だ。さっそく、魔石の術式を刻んでいこう!」

「はい」


 こうして、半日以上に及ぶ超精密作業が始まるのだった――。


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