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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第19話 祝勝会

「カンパーイ!!」


 大蛇様を倒した翌日。

 村では盛大な祝勝会が催されていた。

 仮にも村を守護していた大蛇様を倒したことを祝っていいのかと思ったが……。

 もともと、大蛇様は積極的に村を守っていたというよりはこの辺りを縄張りにしているだけの存在だったらしい。

 加えて、おかしくなってしまったときに戦士たちを何人も喰ってしまったのでそこは別に問題ないのだとか。


「さあ、ヴィクトル様も飲んでください!」

「これは?」


 村長から差し出されたのは、木のカップに注がれた紫色の液体だった。

 この匂いと見た目はもしかして……。


「エルフたちから輸入した葡萄酒です」

「おおお!! 大樹海にもあったんだ!」

「収穫祭の時にしか飲まない貴重品ですがね。ささ、どうぞどうぞ」


 勧められるがままにワインを口に含むと、思った以上の上物だった。

 こりゃすごい、貴族の会合でもなかなか飲める代物じゃないぞ!

 前に公爵家を訪れた際に出された二十年物のワイン。

 俺が今までに飲んだ中ではあれが一番うまいワインだが、それを軽く凌いでいる。


「香り豊かで味わいが深く、さらに酒精がまろやか。流石はエルフだなぁ……」

「なかなかの品でしょう?」

「ええ。これ、たくさん輸入できるんですか?」

「我が村からエルフたちの領地までは遠いですし、白骨沼という危険地帯を抜けなければなりませんからな。向こうから隊商が来た時だけです」


 なるほど、いつでも好きな時に買えるわけじゃないのか……。

 俺は別に呑兵衛というわけではないが、それはちょっと残念だな。

 いずれは、こちら側から隊商を仕立てて買い物に行けるようにしよう。

 もっとも、小鬼王への対処が終わってからになるだろうけど。


「おーい、メインが出来たぞ!」

「血抜きがめっちゃ大変だったんだから!」


 ここで、ガンズさんたちが大きな肉の塊を運んできた。

 大蛇様の肉を丁寧に血抜きして、さらにこんがりと焼き上げたステーキだ。

 たちまち肉の香ばしい香りが漂ってきて、こりゃもうたまらないぞ……!!

 小さく切り分けられたそれを口に放り込めば、たちまち旨味が口いっぱいに広がる。


「んんー!! 美味しい! なんかいい鶏肉みたいだ!」

「これは行けますな! 久々の肉が、身体に染みます……!」

「うまい、こりゃうまいぞぉ!!」


 肉食系の種族だったにもかかわらず、最近は肉が食べられなかったコボルトたち。

 彼らの食欲に、たちまち火が付いた。

 次々と肉を口へ放り込み、凄い勢いで食べ尽くしていく。

 年がいっているはずの村長のムムルさんも、モリモリと凄い喰いっぷりだ。

 かなり大きく切り分けてもらったはずのステーキが、あっという間に消えてしまう。


「……そうだ。大蛇様の身体を解体した時に、何か異変は見当たらなかった?」

「異変?」

「そうそう。何で大蛇様がおかしくなったのか、念のため調べておこうと思って」

「そういうことか。つっても、元の大蛇様を俺たちは知らねえしなぁ」

「特におかしな部分とかは……。あー、でもちょっと気になるとこはあったし」


 ここでミーシャさんが何かを思いついたように言った。

 彼女は懐から、大蛇様のものと思しき鱗を取り出す。


「ヴィクトル様もゴーレムを作るならわかると思うんだけどさ。この鱗、魔力焼けしてるみたいなんだよね」


 魔力焼けというのは、強い魔力に晒されて素材が変質してしまうことである。

 彼女が取り出した鱗も、一部が奇妙なほど鮮やかな緑色に染まっていた。

 相当に濃い魔力に晒されたとみて間違いないだろう。

 流石の大樹海と言えども、ここまで濃密な魔力は珍しいはずだ。


「これは……。ひょっとすると、あの岩山に魔力溜まりでもあるのか?」

「そうかも。魔力に冒されてモンスターがおかしくなるとか、たまにあるし」

「ふむ……そういうことでしたら、我々の方で調査を進めておきましょう。お山には我々の採掘場などがありますので」


 村長さんが調査を申し出てくれた。

 ひとまずは、彼らに任せておけば大丈夫だろう。

 俺たちが行ってもいいが、土地勘もないしやるべき作業はいろいろあるからな。

 

「ま、難しいことは置いておいて今日は思いっきり騒ごうぜ」

「ですね! ガンズさんも、このワイン飲みます?」

「もちろん! いただきます!」


 そう言うと、ガンズさんは受け取ったワインを一気に飲み干してしまった。

 そして空になった器を手に、何とも気持ちよさそうな顔をする。


「かー、たまんねえ! やっぱ酒は命の水だな!」

「あたしにもください!」

「どうぞどうぞ!」


 こうして、酒盛りにガンズさんたちも加わった。

 すると俺の陰で護衛をしていたアリシアさんが、何とも物欲しそうな顔をし始める。

 

「くっ……! 私も警備の仕事が無ければ……!」

「別に飲んでもいいですよ?」

「なりません! マキナが動けなくなっている今、私が酒を飲んではいざという時に対応できませんから」


 言ってることは全くその通りであった。

 しかし、その表情がどうにもよろしくない。

 明らかにこう、何というか……。

 めちゃめちゃ我慢しているというのが、まるわかりな感じだ。


「ランスロット型もまだ残ってるし、ちょっとぐらいはいいですよ」

「ヴィクトル様、しかし……」

「いいっていいって」

「では……!!」


 ゆっくりと器を口に運び、ワインを飲むアリシアさん。

 するとたちまち、その表情が緩み……。


「あああぁ!! 旨いぃ!!!!」


 清廉な騎士の仮面を脱ぎ捨てるように、アリシアさんは会心の笑みを浮かべた。

 そしてワインを一気飲みすると、すぐにまた注ぎ始める。


「あー、リーダーって戦いのストレスを酒にぶつけるからね。こりゃやばいっしょ」

「え、そうなんですか?」

「ああ。俺はちょっと失礼するぜ」


 危険を察知したのか、すぐさま距離を取るミーシャさんとガンズさん。

 まずい、これは俺も逃げないと……!

 そうしたところで、不意に肩をがっしりと捕まれる。


「ヴィクトル様もどんどん飲みましょう! 私が酌をしますから!」

「いや、俺はそんなに……!」

「領主たるもの、器量を示さねば!」


 何やらよくわからんことを言って、酒を注いでくるアリシアさん。

 結局その日は、夜まで飲んで二日酔いするのだった。

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