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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第15話 戦の準備

「では、ゴブリンロードが来るのはおよそ一週間後なんですね?」

「はい。次の新月の晩と言っておりましたから。もし小鬼王の軍門に下って奴隷となるならば、それまでに村の全財産を集めておけと」


 村の奥にある村長さんの家にて。

 俺たちは今回の事態について、さらに詳しい経緯を尋ねていた。

 村長の話によれば、村を守護していた大蛇様がおかしくなってしまったのがおよそ三か月前。

 その後、村の戦士たちでどうにか大蛇様に正気に戻ってもらおうと戦いを挑み、失敗してしまったのが二か月前。

 こうしてできた戦力的な空白をついて、ゴブリンロードが村に最後通牒を突き付けてきたのがちょうど一か月前のことなのだという。


「猶予は一週間か。敵の戦力はどのぐらいなんです?」

「そうですな……。ゴブリンロードと側近の上位種が数体。さらに一般兵のゴブリンエリートが三百といったところでしょうか」

「思った以上ですね……。完全に軍隊だ」

「エリート種が雑兵扱いとは、なかなかだな……」


 予想を大きく超える戦力に、アリシアさんたちが渋い顔をした。

 俺も少しばかり顔をしかめる。

 普通、ゴブリンの群れと言ったらせいぜい二十か三十だ。

 三百と言ったら、いくらゴブリンでも騎士団が出てくるぞ。

 ましてロードと上位種がいるとなれば、こんな村などひとたまりもあるまい。

 これが一幹部の手勢に過ぎないというのだから、小鬼王というのは大したものだ。

 立ち向かっていくには、こちらも相当の戦力がいるな……。


「期限の引き延ばしは可能?」

「無理でしょう。ゴブリンに待つという概念はありませんから」

「なるほど。なら、一週間で可能な限り戦力を作るしかないね」

「戦力を……作る?」


 俺の言い回しに、村長さんは少し引っ掛かりを覚えたようだった。

 ああ、普通はどこかから連れてきたり育てたりするものだもんね。

 でも俺の場合、作るという表現で何も間違いはない。


「この村に魔石と鉱石が保存されていると聞いています。今回の戦いには必ず必要なのですが、どこにありますか?」

「それでしたら、お山の近くの倉庫にあります。案内して差し上げましょう」


 床から立ち上がると、ゆっくりと歩き始めた。

 俺たちもその後に続いていくと、やがて村はずれに大きな建物が見えてくる。

 石積みで出来たそれは、村の建物の中でも異質なほど頑丈そうな造りだった。

 

「……こりゃ、結構溜め込んでるじゃん」

「外から見ただけで分かるの?」

「魔石の魔力がちょっと漏れてるからね」


 へえ、流石はミーシャさん。

 近づいただけでそんなことまで分かるのか。

 俺が少し感心していると、やがて大きな扉の前で村長さんが立ち止まる。

 扉は金属で出来ていて、少し錆が浮いていた。


「……この中に保管されているのは、我が村の大切な財産です。戦いのために使うことは構いませんが、どうか大切になさってください」

「もちろん。絶対に無駄にはしませんよ」

「では……」


 村長が扉をゆっくりと押した。

 扉が重々しく開いていき、倉庫の中身が見える。

 おおぉ……こりゃ思った以上だな……!!

 村長が事前に注意しただけのことはある!


「驚いた、魔石の山じゃねえか!」

「見てください、こっちにはミスリルがありますよ!」

「やっば! これ紫水晶じゃん! 貴重品だよ!」


 これだけの資源があれば、相当な数のゴーレムや武器が作れるぞ。

 特に魔石の数は、数百にも及ぼうかというほどの多さだった。

 恐らくは、モンスターを狩るたびに取り出して保管していたのだろう。


「さっそく、拠点に持ち帰ってどんどんゴーレムを作ろう! 村長さん、村人の中から手先が器用な人を何人か預けてくれないか?」

「承知しました。では、何人か見繕いましょう」

「僕も行かせてください! 役に立ちたいです!」


 ここで、ロプルが力強く手を挙げた。

 村長も承諾するように頷く。


「良かろう、迷惑をかけるんじゃないぞ」

「はい!」

「じゃあ、さっそく倉庫の中の資源を運ぶのを手伝ってもらおうか」


 こうして俺たちはコボルト村の資源と人員を借り受け、戦力を拡充すべくいったん拠点へと戻るのだった。


――〇●〇――


「これが……ゴーレム工房ですか?」

「そうだよ」


 その日の夜。

 大急ぎで村に帰ってきた俺は、連れてきたロプルたちに工房を案内していた。

 今日から数日間、彼らにはここでゴーレム製作の作業をしてもらうことになる。

 もちろん倒れない程度に加減するが、緊急事態なので過酷な労働になるだろう。

 彼らもそのことを理解しているのか、皆、厳しい表情をしていた。


「ここで君たちには、ひたすらゴーレムの部品を作ってもらう」

「ゴーレムって言うと、村で動いているあれらのことですか?」

「ああ、そうだ。もっとも、これから作ってもらうのは村にはまだない種類のゴーレムだけどね」


 そう言うと、俺は工房の端で丸められていた紙を手にした。

 そしてそれをパッと広げると、集まったロプルたちに見せてやる。

 そこには、甲冑のような姿をしたゴーレムの設計図が描かれていた。


「おぉ……強そうですね……!」

「こいつは近接戦闘用ゴーレムのランスロット型だ。これを一週間以内に百体生産してもらう」

「ひゃ、百体!?」


 たちまち、ロプルたちは悲鳴じみた声を上げた。

 彼らはブンブンと頭を横に振ると、焦った様子で言う。


「こんなに複雑なゴーレム、そんなにたくさん作れませんよ!」

「無理です、無理無理無理! 百体どころか、十体でも難しいです!」


 彼らは総勢十名。

 もともと工房にいたヘルメス型を加えると、十五人もいる。

 それで一週間で百体作れないとは、逆にどういうことなのだろうか?

 そりゃ大変だろうけど、決して無理な物量じゃないぞ。


「いや、できるはずだぞ。むしろ、どういう手順で作る想定なんだ?」

「そりゃあ、みんなで木を加工して組み立てて……」

「んん? 全員で加工してから組み立てするのか?」


 そう言うと、ロプルたちは何を当たり前のことを言っているんだという顔をした。

 なるほど、それだと確かに時間がかかって仕方ないはずだ。


「そういうことか。うちでは大量に物を作る場合、流れ作業でやるんだ」

「流れ作業?」

「みんなで工程別に役割を分担して作業をするんだよ」


 全員が目の前に置かれたテーブルを見たところで、天板の裏のスイッチを押した。

 たちまちテーブルの天板に撒かれたベルトが動き始める。


「この上にそれぞれが加工を終えた部品を置いて、次の人に回す。この繰り返しでやっていけば、一週間で百体は生産できるはずだよ」

「おおおぉ……! なんて効率的な……!」

「こんな方法があるのは初めて知りました! す、すごい……!」


 感心しきりといった様子のロプルたち。

 文化的に進んでいる種族とは思っていたけど、人間にはおよばなかったようだ。

 とはいえ、まあ俺も俺以外の工房で流れ作業してるところは見たことないけど。

 こんなに簡単で便利なんだから、きっとみんなやってるだろう。


「私も二十四時間体制でお手伝いをいたしますので、頑張りましょう」


 そう言うと、にっこりと微笑みを浮かべるマキナ。

 彼女はさっそく、コーヒーカップを皆に配って注ぎ始めた。

 こうして俺たちの戦いが、本格的に始まるのだった。


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― 新着の感想 ―
ゴブリンって人間だけじゃなくコボルトのメスも犯すんだろうか?ゴブリンにメスの美醜は関係ないのかな?
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