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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第14話 勝利への宣言

「じゃあ、コボルト族って言うのはもともと大樹海の外の種族だったんだ」

「はい。それが今から五百年ほど前、ラバーニャ帝国の乱獲にあってこの大樹海へと逃げ込んできたんです」


 翌朝。

 俺たちは全員でデメテル型に乗り、コボルト族の集落へと向かっていた。

 これまで遠征の準備をしていたおかげで、すぐに出発することが出来たのだ。

 その途中、揺れる背中の上で俺たちはポポルたちと改めて話をしていた。


「乱獲で逃げて来たか……。でも、それでよく大樹海でやってこれたな。こういうとだが、あんまり強い種族じゃないんだろ?」

「ええ。でも、僕たちは身を隠すことが得意ですから。モンスターの脅威や森の勢力争いからは上手く逃れてきたんです。大蛇様と出会ってからは村を守ってもらってきましたしね」

「なるほど。それで今までうまくやってきたけど、大蛇様がおかしくなってしまって小鬼王に目を付けられたと」

「はい。正気を失った大蛇様を抑えるために、村の戦士たちもやられてしまいましたしね……」


 しょんぼりと肩を落とすポポル。

 まさに泣きっ面に蜂って状態だな。

 村を守る大蛇様もいなければ、戦士たちも失われたってわけか。

 だからこそ、ゴブリンたちも今が好機と思っているのだろうが。


「ねえポポル、村はまだなの? ちょっと気持ち悪くなってきたわ……」

「あと少しです、十分ぐらい!」

「十分も!?」

「ミーシャ様、お水をどうぞ」

「待って、揺れすぎて飲めない!」


 マキナがミーシャに水筒を差し出すが、あっという間に揺れで中身が飛び散った。

 ……ああ、もうめちゃくちゃだよ!

 こうして皆が濡れたところで、木々の向こうに大きな岩山が見えてくる。

 あれが大蛇様の住むというお山だろうか?

 想像していたよりもずっと立派な山で、高さ二百メートルぐらいはありそうだ。

 

「あのお山の麓に、僕たちの村があるんだ」

「まさか、拠点の近くにこんな山があったとは」

「今まで気づかなかったのが不思議なくらいだぜ」

「それだけ、魔境の木々が密に生い茂っているということでしょう」


 そこからさらに進むこと数十分。

 岩山の麓に、柵で囲まれた小さな村が見えてきた。

 規模感としては、俺たちの村より一回り大きいほどだろうか。

 柵の向こうに見える建物は意外なほど文化的で、木の柱としっかりとした石積みの壁が特徴的だ。

 人間の村と言われても、まったく違和感はないな。


「あれです、あれが僕たちの村です!」

「小さいですが、意外と文化的な建物に住んでいますね」

「人間の村とほとんど変わらねえなあ」

「でも、よく見ると畑がないね」


 俺がそう言うと、ポポルは少し困ったような顔をした。

 そして肩をすくめて言う。


「今まで、僕たちは食料のほとんどを狩りと採集で賄っていました。ですが、正気を失った大蛇様のせいで戦士が多くやられてしまって。最近はあまり狩りが出来ていないんです」

「そう言えば、お肉をあんまり食べてないとか言ってたね」

「はい……」


 しょんぼりとした顔をするポポルとロプル。

 俺たちの村に果物をどっさり持ってきたことから考えると、今でも採集の方は順調なのだろうが……。

 種族的に肉食の傾向が強い彼らにとって、肉が食べられないのは死活問題だろう。

 これは、あとで食糧庫からお肉を持ってきてあげないとな。

 ゴブリンたちと戦う前に負けてしまいそうだ。


 こうして、あれこれ考えながら村に少しずつ近づいていた時だった。

 門の前に立っていたコボルトたちが、俺たちの姿を見て騒ぎだす。


「な、なんだお前たちは! か、帰ってくれ!!」

「見たこともないモンスターだあああぁ!!」


 ……ああそっか、デメテルなんて新種のモンスターにしか見えないよな。

 僕たちがしまったと顔を見合わせたところで、ポポルたちが急いでデメテルの背中から飛び降りる。


「大丈夫だよ! この人たちは味方だから!」

「ポポルじゃないか! それにロプルも! よく戻ってきたな!」

「もしかして、この人間たちがお前たちのいっていた新しい村の?」


 あまり人間のことは見慣れていないのだろう。

 衛兵たちは俺たちのことを上から下までじっくりと見定めるような眼で見てきた。

 その容赦のない眼差しに、アリシアさんがやや不機嫌そうな顔をする。

 するとそれを察したのか、ポポルが言った。


「詳しいことは後で話します。それより、村長を呼んできてもらえますか?」

「……わかった、すぐにつれて来よう」


 足早に村の奥へと走っていく衛兵。

 そして数分後、ゆっくりと杖をつきながら一人のコボルトが歩いて来た。

 彼が、この村の村長なのだろう。

 顔が犬なのでやや分かりづらいが、明らかに年長者である。

 服も他のコボルトたちに比べるといくらか上質で、首に宝石のついたペンダントを下げている。


「村長! ポポル、ロプル、ともに戻りました!」

「うむ、よくぞ帰ってきた。して、そちらが新しく出来たという村の住民か?」

「そうです。事情を話したところ、助けになってくださるとのことです」

「おおお!! なんと、なんと……!!」


 村長の眼に涙が浮かんだ。

 彼はそのまま崩れるようにして地面に膝をつくと、天を仰ぎ始める。


「偉大なる神よ……! あなたは我らを見捨ててはいなかったのですね……! 私は村長のムムル、何卒よろしくお願いいたします……!!」


 深々と土下座をする村長。

 地面に額をこすりつけんばかりのその様子に、いたたまれなくなった俺たちはすぐさまデメテルの背を降りる。


「そんなに頭を下げないでください」

「いえいえ、これから村をお助けいただくのにこのぐらいは当然のことです……! これ、お前たちも頭を下げないか!」


 ここで村長は、周囲にいたコボルトたちにまで頭を下げるように言った。

 するとたちまち、その辺にいたコボルトたちが全て俺たちを見て首を垂れる。

 ……何だか、王様になったみたいな気分だなぁ。

 伯爵クラスの上位貴族でも、今時はここまでやらないからね。

 それだけ、コボルト族の皆が救いを求めているということの表れだろう。

 

「……俺はヴィクトル・シュタイン。この樹海を開拓しに来た者です。この村に攻め入るゴブリンロードは、必ず俺たちが撃退します!」


 少しでもコボルトたちを安心させるため、俺は柄にもなく強い宣言をした。

 するとたちまち、マキナが深々とこちらに跪く。


「すべてはマスターの仰せのままに」


 その様子はさながら、騎士が忠誠を捧げるかの如く。

 それに合わせて、アリシアさんたちも俺に跪いた。

 たちまち拍手が沸き起こり、コボルトたちの歓声が響く。

 こうして俺たちは、コボルトたちとともに戦いに備え始めるのだった――。


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コボルトの一方的な言い分に従うのは短絡的過ぎはしないかい?
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