表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/143

第119話 魔剣レルヌス

「完全に囲まれたぞ!!」

「クッソ、どうしてこの数に気づかなかったんだ!?」


 四方八方から押し寄せてくるゴーレムたち。

 そのあまりの数の多さに、油断し切っていた兵士たちは血相を変えた。

 ライリーもまた、チッと大きく舌打ちをする。


「……汚してある。うまく隠してやがったな」


 土にまみれたゴーレムの姿を見て、ライリーが舌打ちをする。

 おそらく、見つかりにくいようにわざと汚したのだろう。

 そのうえで森の奥に隠れてしまえば、見つけることはかなり困難だ。

 機能停止したゴーレムは完全に動かないのだから。


「狼狽えるな、たかがゴーレムだ! 戦え!」

「そうだ、ゴーレムなど恐れるに足らん!」

 

 ここで、後方で指揮を執っていた貴族たちが発破をかけた。

 彼ら直属の騎士団が前に出て、押し寄せるゴーレムたちと戦い始める。

 流石は精鋭というべきだろうか。

 騎士たちはゴーレムを押し返し、戦況が再び討伐軍へと傾く。

 そして――。


「唸れ!! 魔剣レルヌスよ!!」


 剣を振り上げて、アーブ男爵が叫ぶ。

 たちまち剣身が雷を纏い、稲妻が迸った。

 ――ドゴゴォン!!

 雷鳴が轟き、ゴーレムがまとめて吹き飛ぶ。


「あれが雷の魔剣か、凄まじいな!」


 吹き飛ばされたゴーレムを目の当たりにして、目を輝かせるライリー。

 ――アーブ男爵家に伝わる宝、魔剣レルヌス。

 雷の魔剣として知られるそれは、いくつもの伝説に彩られている。

 眉唾物とばかり思っていたが、そのうちのいくつかは真実のようだった。


「この戦、勝てるかもしれん!」


 ゴーレムの攻撃を受け止めながら、ライリーが笑う。

 完全に流れは討伐軍へと傾いていた。

 ゴーレムたちも、数は多いが強さはまったく大したことはない。

 そこへさらに――。


「……な、なんだあの音は!?」


 ――ドオオオオオォン!!!!

 ライリーたちのはるか後方から、巨大な爆発音が聞こえてきた。

 魔剣の稲妻すら上回る大音響だ。

 それと同時に前方にいたゴーレムが爆発して吹き飛ばされていく。

 火柱が上がり黒煙が漂う様子は、さながら噴火のよう。

 無慈悲なまでの破壊の景色だ。

 

「素晴らしい!! これが大砲か!!」


 輿の上で立ち上がり、喝采するフィローリ。

 それに合わせるかのように、再び大砲が火を噴いた。

 帝国の最新兵器であるそれは、法外な購入金額に見合っただけの破壊力を見せる。

 押し寄せるゴーレムの群れが次々に吹き飛び、その勢いが目に見えて弱まった。


「ははは! このまま殲滅してくれるわ!!」

「フィローリ様、ぜひとも我々に先陣を!」

「うむ、任せた!」


 フィローリの承認を受けて、本格的にアーブ男爵が打って出た。

 魔剣を手にした彼を先頭に騎士団はゴーレムの群れをみるみる切り崩していく。

 さらに大砲がそれを援護すべく、砲弾の雨が降り注いだ。

 爆炎と雷鳴を伴いながら、軍勢はゴーレムの包囲を食い破る。

 そして街の外壁へいよいよ手が届くというところで、声が響く。


「初期型の在庫処分、ご苦労様でありますよ」


 涼やかな少女の声。

 それと同時に、続々と新手のゴーレムが姿を現した。

 これまでのゴーレムより一回り大きく、より禍々しいフォルムをしていた。

 ――明らかに戦闘向きだ。

 それらを遠目で見た瞬間、ライリーは嫌な予感がした。

 そしてそれを裏付けるかのように、前線で戦っていた騎士が宙を舞う。


「ぬなっ!?」


 これまでゴーレムを圧倒していた騎士が、呆気なく投げ飛ばされた。

 その事実に、たちまちアーブ男爵が間抜けな声を漏らす。

 だが、経験豊富な彼はすぐさま態勢を立て直す。


「ひるむな! 油断しなければ勝てる!!」


 こうして騎士たちに喝を入れると、アーブ男爵は魔剣レルヌスを高々と掲げた。

 再び剣身を稲妻が迸り、激しい雷鳴が轟く。

 やがて剣全体が白い輝きを放ち、直視できないほどとなった。


「な、何という魔力だ……!」

「凄まじい……これが魔剣レルヌスの真の力……!!」

「いかん! ひけ、ひけえええぇ!!」


 目を庇いながら、恐れおののくライリーとマルス。

 彼らはすぐさま部下たちに退くように命じた。

 あれほどの力が炸裂すれば、自分たちにまで被害が出る可能性があるからだ。


「おおおおおぉっ!! 雷よ!!!!」


 限界まで高められた雷の魔力が、掛け声とともに解き放たれた。

 剣を中心として、巨大な雷の刃が形成される。

 それでゴーレムたちを薙ぎ払おうとした瞬間、アーブ男爵に影が迫った。


「もったいない気もするでありますが……えいっ!」


 緊迫した状況で響く、何とも間の抜けた掛け声。

 それと同時に恐ろしい破断音が響く。

 ――バキイイイイィンッ!!!!

 さながら、金属をめちゃくちゃに打ち鳴らしたような高音。

 それに遅れて、膨れ上がっていた魔力が急速に霧散した。

 白い光もうせて、立ち尽くすアーブ男爵の姿があらわとなる。

 そして――。


「僕の魔剣があああああああっ!!!!」


 根元からぽっきりと折れてしまった魔剣レルヌス。

 もはや修復は不可能であろう。

 その無残な姿を見つめ、アーブ男爵は大声を上げて泣き崩れるのだった――。

読んでくださってありがとうございます!

おもしろかった、続きが気になると思ってくださった方はブックマーク登録や評価を下さると執筆の励みになります!

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしていただけるととても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ