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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第111話 予期せぬ提案

「ぐぐぐ……!!」


 マキナの威圧によって、豚人王は唸りながらも武器を引いた。

 心なしか、その巨体が先ほどまでよりも少し小さく見える。

 ……マキナが強くなりすぎたのか、それとも豚人王が弱いのか。

 大樹海に君臨する六王の一角にしては、いささか拍子抜けだ。


「……王よ、ここは冷静になるべきかと」


 ここで、豚人王の後ろから側近らしきオークが現れた。

 重厚な黒い鎧を身に纏った彼は、歴戦の戦士といった風格がある。

 王はその姿を一瞥すると、しぶしぶといった様子ながらも頷く。


「わかった、そちらの条件を飲もう」


 王がそういうと、すぐにマキナが水晶玉を操作した。

 それに合わせるように、こちらでツヴァイが掲げている水晶が光り始める。

 そしてチカチカと明滅したのち、巨大なオークの顔がはっきりと映し出された。

 ……うわ、遠目で見るよりもすごい迫力だな!

 壁の上からでは見えなかった牙がはっきり見えて、俺はたまらず身を引いた。

 しかし、ビビった姿を見られるのも良くないのですぐに気を取り直す。


『ヴィクトル様、どうぞ』

「あー、聞こえますか?」

『……聞こえるぞ』


 俺の言葉に対して、豚人王はゆっくりと頷きを返した。

 重々しい声がツヴァイの口を通じて発せられる。

 ゴーレムであるため、声色は如何様にも変えられると知ってはいたが……。

 彼女の口から太い声が出てくると、結構な違和感があるな。


「ヴィクトル様、顔が緩んでいるでありますよ!」

「すまんすまん」


 ツヴァイに注意され、表情を引き締める俺。

 一方、画面の向こうの豚人王は何やら自信を失ったような表情をしていた。

 あ、もしかして今の緩んだ表情が余裕があるように受け取られたのか?

 六王の一角ともなれば、対峙した相手はみな委縮してただろうからなぁ……。

 そこを緩んだ表情でこられれば、逆にビビってしまうのかもしれない。


「気を取り直して。俺がこのイスヴァールの領主のヴィクトルです。まず、あなた方は何の目的でこの街へ来たんですか?」

『我らは小鬼族との戦いで住処を追われた。一時、身を置く場所が欲しい』


 やはり、最初に想定した通りの理由だな。

 彼らを保護するべきか、拒否するべきか。

 暴れられるリスクなども考えると、かなり難しい選択だ。

 さて、いったいどうするべきかな……。

 

「連中を街に入れるのは危険です。小鬼王に狙われますよ!」

「既に狙われているではないか。今更変わらないだろう、むしろ連中と共闘した方が戦力的には楽かもしれない」

「仮にも王と名乗る存在よ。かなり喧嘩っ早いようだし、共闘なんてうまくいくとは思えないわ」

「利害が一致すれば可能性はあると思いますがな」


 コボルトのララルを皮切りに、アリシアさん、エリスさん、サルマトさんが立て続けに意見を出してきた。

 やはり状況が状況だけに、皆の意見も割れているな……。

 俺が思案していると、さらにその場にいたコボルトが次々と意見を出してくる。


「相手は六王です! 受け入れは危険すぎます!」

「でもここで暴れられるのも怖いです!」

「大丈夫、マキナさんが抑えてくれますよ!」

「いや、王なんだからもしかすると奥の手が……」


 王という存在にいまだ恐れをなしているのだろう。

 コボルトたちの意見は全体的に消極的なものだった。

 うーん、俺自身は彼らと共闘しようかと思っていたけれど……。

 街の主な住民であるコボルトがこれだけ怖がっているとな。

 連携していくのはいろいろと困難がありそうだ。


「街の者があなた方を恐れています。すぐに受け入れることはできません」

『我々も他に当てはない。簡単に引き下がるわけにはいかぬ』


 再び、豚人王は大戦斧に手をかけた。

 彼らとしても簡単に退くにはいかないのだろう。

 数多の脅威がうごめくこのサリエル大樹海。

 そこをいつまでも放浪し続けるわけにもいかないという事情は分かる。

 だがこちらとしても、恐れるコボルトたちを押し切ってまで受け入れるのは……。


「領主様、よろしいでしょうか」


 俺が腕組みして頭を悩ませていると、下から声がした。

 振り向くと、階段を使って壁上へと昇ってくる男の姿が見える。

 年は六十前後といったところだろうか。

 髪は大部分が白く、顔には木の幹を思わせるような皺がある。


「あなたは?」

「申し遅れました。私はロン・アシュリーと申します」


 なるほど、彼が件のロン・アシュリーか。

 わずかな間に移民たちを束ね上げ、リーダー格となった人物である。

 マキナが切れ者と言っていただけあって、油断ならない雰囲気のある人物だ。

 このタイミングで現れたのも、何らかの策があってのことだろう。


「あなたが噂の。マキナから聞いているよ」

「領主様に名前を知っていただけていたようで、何よりです」

「それで、どんな考えなんだ? 出てきたということは何かあるんだろう?」

「簡単なことです。街をもう一つ作るのですよ」

「街を?」


 ――街をもう一つ作る。

 さらっと出てきた思わぬ提案に、俺やほかの面々はたちまち怪訝な顔をするのだった。

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