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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第109話 様々な思惑

「街の運営はおよそ順調です。新たに入ってきた移民たちも、無事に街での生活に馴染んできています」


 イスヴァールの街へ、移民たちがやってきてからおよそ一週間。

 今のところ、街は大きなトラブルもなく運営できているようだった。

 マキナからの報告を聞いた俺は、ほっと胸をなでおろす。

 移民と元の住民の間で軋轢が生まれるのではないかと心配していたが、それもひとまずはなかったようだ。


「よかった、これで一安心だな」

「はい。ただ、移民の方から一つ要望が上がってきておりまして」

「なんだ?」

「自治会のようなものを作りたいと申しております」


 自治会ねえ……。

 いったい、どうしてそんなものがいるのだろう?

 住民たちの要望に関しては、極力聞くようにしているつもりだけど……。

 俺がはてと首を傾げると、すかさずマキナが疑問に答える。


「現状、我がイスヴァールの街には細かな法規がありません。そのため、それについては自分たちの作った自治会で定めていきたいというのが彼らの考えのようです」

「なるほど。言われてみれば、その辺については結構任せてる感じだったな」


 現状、街での小さなトラブルについてはコボルト社会におけるルールがなんとなく適用される感じになっていた。

 住民のほとんどがコボルトだからこそ成り立った方式である。

 しかし、人間の移民がたくさん加わった今ではそうもいかないだろう。

 自治会を作ってルールを決めていきたいというのは、もっともな話だ。

 実際、シュタイン伯爵領でも日常の細かな事柄については住民に任されている。


「わかった、自治会の設立を許可しよう」

「では、そのように伝えます」

「……しかし、うちの街も大きくなったなぁ」

「ええ。岩山の村も含めますと、千人も見えてきていますので」


 いよいよ千人か……。

 辺境の街としては、なかなかの規模になってきたな。

 まだまだ人口の流入は続いているし、二千ぐらいはほぼ確実だろう。

 あとはかねてからの懸念事項となっている男女比の問題とかが改善すれば、いよいよ独立した都市として機能できそうだ。


「自治会についてですが、すでに代表が決まっているそうです。設立の許可が下りたことを知らせれば、すぐに挨拶に来るでしょう」

「……なかなか仕事が早いな」


 予想を超えた返答に、俺は少し驚いた。

 この街にやってきた移民は、もともと灰被りの猫が各地からかき集めた奴隷。

 当然ながら出自はバラバラで、共通点などほとんどない。

 そう簡単に意見がまとまるような人たちではないはずなのだ。

 それをこの短期間にまとめ上げ、代表になるとは……。

 どうやら、かなりのやり手が奴隷たちの中に混じっていたらしい。


「ロン・アシュリー。十五年前に滅びたレールセン男爵家にて、家令を務めていた人物です」

「ああ、あの家の関係者か……」


 レールセン男爵家。

 建国より続く名門だったが、十五年前に起きた隣国との戦争で当主が死亡。

 その後、跡目を巡って一族が揉めに揉めて最後には取り潰しとなった家だ。

 家を失った使用人はほとんどが他の貴族によって取り立てられたそうだが……。

 まさか、家令が奴隷にまで落ちてしまっていたとは。


「どんな人物だった?」

「私もそれほど長く話していないのですが、相当な切れ者かと。これまでは目立たないように様子を窺っていたようです」

「こちらの出方が分かったから、表に出てきたってわけか」

「はい、そのようです」


 なるほど、マキナが切れ者と評するだけのことはあるな。

 こちらの出方を確認し、安全と分かったところで手近な人々を束ねて掌握する。

 その動きの速さと皆を束ねるカリスマ性は大したものだろう。

 ……これは少し、警戒が必要そうだな。


「挨拶の場については、こちらで設定すると伝えてくれ」

「承知しました」

「それから、イメラルダさんはどうしてる? 自治会に関係してるのか?」

「いえ、距離を置いているようです。彼女はもっぱら、私とツヴァイの観察に精を出していますね」


 そういうと、マキナはスッと窓の外に目を向けた。

 すると何か小さな影のようなものが動くのが見える。

 あれはいったい……なんだ?

 慌てて窓の方へと向かうと、大きな芋虫が壁を這って動くのが見えた。

 

「なんだ、虫か」

「いえ、ただの虫ではありません」


 そういうと、マキナはひょいっと窓の外に飛び出した。

 そしてそのまま虫を捕まえると、ジャンプして部屋に戻ってくる。

 

「これをご覧ください」

「これは……魔法陣か?」


 マキナの掌の上に乗せられた大きな芋虫。

 昆虫系モンスターの幼体だろうか。

 親指より一回り大きなそれは、鮮やかな緑色をしていて何とも不気味だ。

 そしてそのお腹には、古代文字が鮮やかに光っている。

 

「この魔方陣を通じて、視覚を共有していたようですね」

「なかなかすごい技術だ」

「生体に魔方陣を組み込むことに関しては、我々のはるか上を行っていますね。ラバーニャ帝国の錬金術は大したものです」

「うーん、いずれは研究開発に協力してもらいたいんだけどねえ……」

「私への警戒が解けるといいのですが」

「それはなかなか難しいだろうな」


 ――イメラルダさんはマキナを警戒している。

 核心部分をある程度ぼかしつつも、俺はそうマキナに伝えていた。

 知能の高い彼女のことなので、これだけでもおおよそイメラルダさんの言いたいことは察してしまっただろうが……。

 そうなるのは時間の問題なので、最初から隠さず言うことにしたのだ。

 まぁ、それで俺とマキナの関係性が変わるわけはないという自信もあるし。


「ま、とりあえずは街の運営に集中しよう。六王のこともあるし、この街はまだまだやらないといけないことが多すぎる」

「そうですね。近いうちに飛行船を使った探索なども……おや?」

「どうした?」

「ツヴァイから緊急の連絡です。オークが来たと」


 オーク……?

 いきなりの来訪者に、俺はぽかんとした顔をするのだった。


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