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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第105話 新生活

「お帰りなさい!」


 飛行船が街の入り口に着陸すると、すぐさまコボルトたちが出迎えに来た。

 その先頭に立つのは、街を守る衛兵隊である。

 ピカピカの鎧に身を固めた彼らは、小柄ながらもかなりの迫力がある。


「ご苦労様! 俺たちがいない間、何か異変はなかった?」

「特にありませんでした! 六王も今のところ、怪しい動きはしていません!」


 ぴしっと敬礼をして答えるコボルト。

 名前は確か、ララルだったっけ。

 もともとは岩山でゴーレムの監視役をしていたらしいが、いち早くクロウラーの襲来を知らせたことで出世したらしい。

 今では街の衛兵隊長さん兼移住者担当だ。


「さあ、住民の皆さんはどうぞこちらへ! まもなく、迎えのゴーレムがきます!」

「は、はぁ……」


 コボルトたちに促されるまま、列を作って並ぶ移民たち。

 やがて彼らの前に、八本足の大型ゴーレムが姿を現した。

 上部がすべて平らな荷台となっているこのゴーレムの名はタイタンⅡ型。

 二十人ほどの人を一気に運べるすごいやつだ。

 それを見た移民たちは、たちまち目を丸くする。


「これはまた……」

「足の生えた……荷車……?」


 見慣れないゴーレムに対して、おっかなびっくりと言った様子の移民たち。

 彼らはコボルトに促されながらゆっくりと荷台に乗り込んだ。

 そして全員が着席したところで、タイタンⅡ型が前進を始める。

 ――ドゴドゴドゴ……!

 重々しく動き出したゴーレムの姿に、移民たちは完全に圧倒された表情をする。


「ゴーレムはまだまだ来ます! 他の人たちも乗る準備をしてください!」


 その後も列をなしてやってくるタイタンⅡ型。

 百名以上いた移民たちであったが、あっという間に全員が荷台に乗って街の奥へと移動していった。

 俺たちもまた荷台に乗り込み、彼らとともに街の通りを進んでいく。


「信じられない……大樹海にこんな町が……」

「あれはまさか、エルフか?」

「うちの村よりよっぽど都会じゃないか」


 開発された石造りの建物群を見て、驚きを隠せない奴隷たち。

 未開の地だと思っていた大樹海にこれだけの街があることが信じられないらしい。


「大樹海には、他にもエルフたちの国なんかもありますよ」


 俺がそう言うと、移民たちはほうほうと何度となく頷いた。

 こうしているうちに街の大通りを抜けて、タイタンⅡ型の列は新しい家々が立ち並ぶ一角へとたどり着く。

 大きな平屋の家々は、すべて新しくやってくる移民者のために建てられたもの。

 当然ながらインフラも整備されていて、すべての家に下水が通されている。

 さらに魔石を利用した魔道具もたくさん置かれていて、暮らしていくのに不自由のない環境を整えていた。


「ここが、新しい皆さんの家です!」

「こんな大きな家が……いいんですか!?」

「すごい……石造りだ……!」


 コボルト村の岩山から切り出した良質な石材。

 それを積んで作られた家は、なかなかに立派で高級感があった。

 まさか、移民先でこれほど良い住居を提供されるとは思っていなかったのだろう。

 移民たちはみな、驚きで眼を見開き圧倒されてしまっている。

 しかし中には、家を疑い深い目で見る者たちもいた。


「もしかして、家で縛り付ける気なのか……」

「いくらなんでも話がうますぎる」


 なるほど、どうやら彼らは少し賢くて用心深いグループらしい。

 俺が移民たちへ最初に大きな恩を売ることで、外へ逃げられないようにしているのではと危惧しているようだ。

 ……実際、そういった類の考えがないわけではない。

 でも、住居としてよい場所を用意したのはこれから頑張ってほしいという純粋な好意が理由のほとんどを占めている。

 それに、ゴーレムたちの労働力を持ってすれば家の用意ぐらいは簡単なのだ。


「大丈夫です! この家を提供するにあたって、お金を取ったりすることはありません! この街に住んでくださるのであれば、無償で提供します!」

「本当に、何もいらないんですか?」

「必要であれば、書類を作成いたしましょう」


 マキナが俺の脇から出て、そっとフォローをしてくれた。

 それを聞いた移民たちはやや安心したような顔をする。

 やっぱり、口約束ではなく目に見える形にするのが良いようだ。


「皆さん、まずはそれぞれ家に入って設備をチェックしてください! それが終わりましたら街の中を案内します!」


 ララルに促され、三々五々に家へと入っていく移民たち。

 こうしてほとんどの移民がそれぞれの家に入る中、一人だけぽつんとその場に取り残されている者がいた。

 いや、正確には自ら残ったというべきだろうか。

 瞳にラバーニャの月を宿した件の少女である。


「君は……そうだな……」

「話を聞かせて! わかること何でもいいから!!」


 俺が少女をどう処遇しようかと考えていると、エリスさんがものすごい勢いで話に入ってきた。

 その目は血走っていて、手には手帳とペンが握られている。

 おいおい、もうインタビューする気満々じゃないか!

 俺だってぜひ話を聞きたいとは思ってたけど、この迷いの無さは恐れ入る。

 研究者魂の為せる業というか、何というか。


「言われずとも、すべてを話すつもりでした。私の名はイメラルダ、ラバーニャ帝国の魔導師です。ゴーレム技術者でもあります」

「ゴーレム技術者だって!!!!」


 少女の予期せぬ言葉に、今度は俺が大声を張り上げるのだった。

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