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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第101話 執着

「……ど、どうした!?」


 ヴィクトルたちを握りつぶさんと伸ばされた岩の腕。

 それが吹き飛ばされた瞬間、フィローリはたまらず目を剥いた。

 あれほどの質量を誇るゴーレムが、いったいなぜ?

 とっさに、魔法使いが再び攻撃したのかと視線を走らせるがそうではない。

 彼女もまた、唖然とした顔で体勢を崩すゴーレムを見ていた。


「くっそ、どうなってるんだ! おい、さっさとやれ!」

「は、はい!」


 慌てて指示を飛ばすフィローリ。

 それに従って、灰被り猫の幹部は即座に金色の鍵を振った。

 すぐさまそれに応じて、少女が詠唱を紡ぐ。

 歌のように聞こえる旋律と共に、たちまちゴーレムは体勢を立て直した。

 が、ここで何かがゴーレムに向かって飛び出してきた。


「人間か……?」


 銀色のきらめきを放ちながら、宙を貫きゴーレムの上を駆け抜ける何か。

 それは驚いたことに、人型をしていた。

 いったい何者なのか、どうしたらあんな動きが出来るのか。

 フィローリの頭の中を疑問が満たすと同時に、轟音が響く。


「なっ!!」


 人型の何かが足を振り上げたと同時に、ゴーレムの頭が吹き飛んだ。

 あまりのことに、フィローリは呆気に取られて言葉を失う。

 頭だけでも、人の数倍はあるのだ。

 それがボールのように軽々と吹き飛ぶなど、ありえない。


「……い、いかん!」


 数秒後、再起動を果たした灰被りの猫の幹部が急いで少女に指示を飛ばした。

 少女の唇から呪文が紡がれ、ゴーレムはすぐに再生していく。

 だがしかし――。


「いっ!?」


 再び、人型の何かが強烈な蹴りを入れた。

 ――ぐらり。

 ゴーレムの身体が大きく揺らぐ。

 そこへさらに、嵐のような連撃が入った。

 ――ズドドドドドドンッ!!

 

「あ、ああ……!!」


 ゴーレムの巨体が信じがたいほどの勢いで削られ始めた。

 それはさながら、砂の城が波に削られているかのよう。

 あまりに圧倒的な勢いに、再生がとても追いつかない。

 その様子をフィローリはただただ呆然と見守る。

 一方、その脇に立つ灰被りの猫の幹部は気が気ではなかった。


「くそ、何者なのだあれは! まさか”特級”冒険者か……?」


 最悪の可能性が脳裏をよぎり、唸る幹部。

 そうしている間にも、事態はどんどんと悪化していく。

 胴を削られ、腕を削られ、さらには足を削られ。

 不格好な姿となり果てたゴーレムは、自重を支えることすらできなくなる。


「ぬおっ!?」

「きゃぁっ!!」


 轟音と共に、背中から倒れていくゴーレム。

 ――ズウウウゥンッ!!

 巨大な質量が崩れ落ちることで、激しい揺れが周囲を襲った。

 それと同時に埃が巻き上がり、視界がにわかに失われる。

 フィローリとその取り巻きたちは、たちまち目を閉じて身を小さくした。

 そして――。


「……おぉ?」


 しばしの後、ゆっくりと瞼を開いたフィローリ。

 彼の目に飛び込んできたのは、ゴーレムを蹴り飛ばす少女の姿だった。

 しかも驚いたことに、メイド服を着ている。

 あまりに現実離れしたその光景に、たちまちフィローリは見入ってしまう。


「あの女は……なんと美しい……!」


 躍動する豊かな銀色の髪。

 遠目で見ただけで分かるほどの整った顔立ち。

 伸びやかな肢体と悩ましい腰の括れ。

 そして何より、フィローリの目をとらえて離さない胸の膨らみ。

 彼の脇に侍る女性と比べて山の高さそのものは控えめだが、腰の細さが違う。

 たおやかに揺れるそれは、十分な質量感があった。


「フィローリ様、危険ですぞ!」


 フィローリが見惚れている間にも、メイドは容赦なく攻撃を続けた。

 危険を察知した護衛の騎士が、すかさずフィローリや侍女たちを安全な場所へと案内しようとする。

 だが、差し出された手をフィローリは払いのけた。


「待て! もう少し見させろ!」

「しかし!」

「うるさいな! いざという時はお前が死ぬ気で守れ!」

「そんな……」


 あまりにもめちゃくちゃな命令に、困惑してしまう騎士。

 そうしている間に、巨大ゴーレムとメイドの戦いは決しつつあった。

 巨大ゴーレムは身体の再生が追い付かず、次第に小さくなっていく。

 山のような巨体がいつの間にか、周囲の建物と同じぐらいになっていた。


「……潮時ですね」

「””$”$#!!」


 ゴーレムがある程度小さくなったところで、メイドは攻撃を中断した。

 そして、ゴーレムを懸命に操作していた少女へと迫る。

 少女はとっさに岩の腕を作り上げて応戦するが、あっさりと粉砕された。

 

「眠っていただきましょう」


 メイドの手刀が少女の首に叩き込まれた。

 途端に少女は意識を刈り取られ、そのままメイドの手の中に倒れる。

 それと同時に、ゴーレムも完全に動きを止めた。

 最後の頼みの綱ともいえるゴーレムが敗北し、いよいよ混乱が深まる。


「フィローリ様、今すぐ逃げますぞ!」

「欲しい……」

「はい?」

「あのメイド、欲しい!!」


 思い切り声を張り上げるフィローリ。

 彼はそのまま前のめりになると、唾を飛ばしながら続ける。


「あの見た目、あの強さ! 絶対に欲しいぞ、俺のものにしてやる!」

「無茶を言わんでください!!」

「さあ早く、こちらへ!!」

「嫌だ、お前たち何とかしろ! いくらでも褒賞は出すぞ!」


 侍女や騎士たちに身体を引っ張られながらも、暴れるフィローリ。

 彼はマキナの方を見ながら、恋焦がれたように言う。


「絶対に諦めないからな!」


 こうしてフィローリの叫びが響き渡ったところで、ゴーレムの出現によって避難していた奴隷たちが再び姿を現した。

 そしてさらに――。


「な、何かが飛んでいる!?」


 地下都市の天井に出来た巨大な穴。

 それを塞ぐように、巨大な船のような物体が姿を現すのだった。

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