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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第100話 ゴーレムとゴーレム

「な、何が起きてるんだ……?」


 遥か地底から響いてくる轟音。

 やがて俺たちのいる塔全体、いや、地下都市全体が細かく震える。

 まさかな……。

 猛烈に嫌な予感がして、額から冷たい汗が噴き出す。


「これって……」

「まさか……いくらなんでもあり得ないだろ……?」


 ガンズさんが青い顔でそう言った時だった。

 さながら地獄へ続くかのような穴の底から、巨大な何かが這い上がってくる。

 こんなこと……ありうるのか……?

 現れたのは、途方もなく巨大な岩の塊だった。

 それはもはや、山が動き出したかのよう。

 あまりの質量ゆえに、ぽろぽろと表面が崩れて不格好になっている。


「ひぃっ!?」


 たまらず悲鳴を上げる俺。

 その次の瞬間、岩の巨人はこちらに向かって殴りかかってきた。

 ――ゴオオオオォッ!!

 子どもがこねて作ったような岩の拳が、轟音を立てて迫る。

 巨大さゆえにいくらか鈍重なのが、より恐怖を煽った。


「まずい、避けろ!」

「避けろったって、あんなの喰らったら塔ごと崩れる!」


 迫りくる脅威に、なすすべもない俺とガンズさん。

 もう駄目か……!!

 覚悟を決めた俺は黙って目を閉じた。

 すると次の瞬間、巨人の腕で爆発が起こる。

 ミーシャさんがとっさに炎魔法を放ったらしい。

 しかし威力は不十分で、わずかにそらすにとどまる。


「うわっ!!」


 巨大な拳が、俺たちの横を通り抜けた。

 ――ドゴオオオォンッ!!

 塔を半分ほど破壊した拳は、そのまま天井へと衝突する。

 轟音、振動。

 半壊した塔を立っていられないほどの揺れが襲った。

 たちまち天井に大きなひび割れが出来て、そこから水が噴き出す。

 そして水が収まった後には、微かに月光が差し込んできた。

 おいおい、あった一撃で地上までの穴をブチ空けちゃったのかよ!

 数十メートルの土をぶち抜くパワーに、背筋が寒くなる。


「どうにか命拾いをしたが……とんでもねえな!」

「やばい、次が来る!」


 ほっと一息つくガンズさんだったが、そう落ち着いてはいられない。

 水に濡れながらも、岩の巨人はゆっくりと体勢を整えた。

 そして再び、こちらに向かって狙いを定めてくる。

 まずいな、既に塔はボロボロ。

 やつの拳がかすめただけでも崩壊してしまうだろう。

 とにかく動かなくては!

 

「まずいな、いっそあの水たまりに飛び込むか?」

「無理だよ、いくらなんでも高すぎる!」

「ええい、何とかする方法はねえのか!」


 いよいよ窮地に追い込まれ、声を上げるガンズさん。

 そうしている間にも、岩の巨人はこちらに向かって手を伸ばしてくる。

 先ほど攻撃が外れたことを反省しているのだろう。

 ゆっくりゆっくり、広げられた手が迫ってくる様子はたまらなく不気味だ。

 恐らくは、俺たちを塔の残骸ごと握りつぶしてしまうつもりなのだろう。

 

「考えろ、考えるんだ……! 俺が何とかしないと」


 どうにか命を繋ぐべく、懸命に思考を回す俺。

 しかし次の瞬間、どこからか涼やかな声が響く。


「いえ、ヴィクトル様ではなく私が何とかしましょう」


 声にやや遅れて、爆音が響いた。

 こちらに迫っていた手が押し返され、岩の巨人が大きくのけぞる。

 山のような巨体が、驚くほどに激しく揺れ動いた。

 これは……間違いない……!


「マキナ!!」

「脱出口を作ろうとしていたのですが……あれは何ですか? 少し手間が省けましたが、騒々しいですね」

「ええっと、説明は後だ! とにかく救出してくれ!」

「はい。ではまず、あのデカブツを倒しましょう」


 俺たちの目の前に降り立ったマキナは、ひどく落ち着いた様子でそう言った。

 まずはみんなを穴から外に逃がすんじゃないのか?

 そのために色々と準備していたと思うんだけど……。

 あまりに予想外なマキナの返答に、俺は目をぱちぱちとさせた。

 するとマキナはこちらの心情を察したのか、軽く説明をしてくれる。


「あのようなデカブツがいては、奴隷たちの救出に触りがあります。さっさと倒しておくに限るでしょう」

「そりゃそうだろうけど、あんなのをどうやって倒すんだ?」

「あの程度、今まで戦ってきた相手と大差ありません」

「けど……」


 俺が再生能力のことを伝えないうちに、マキナは塔から飛び出した。

 圧倒的な跳躍力を見せた彼女は、そのまま岩の巨人の肩へと着地する。

 そしてその細く長い足を大きく振り上げると――。

 ――ズウウゥンッ!!!!

 ひたすらに重く、速い一撃。

 一瞬だが、マキナの足が消えたように見えた。

 岩の巨人の頭が、たちまち胴体と別れて飛ぶ。


「意外と柔らかいですね」


 拍子抜けしたようなマキナの声が、ずいぶんとはっきり聞こえた。

 あまりの展開に、俺たちはたまらず眼を見開く。

 大森林を離れたせいで、レベルが大きく落ちているはずなのだが……。

 まるでそんなことを感じさせない動きだ。

 

「……!! #%#$%$!!!」


 直後、驚いたような少女の声が聞こえた。

 そして呪文が紡がれ、ゴーレムの身体が再生し始める。

 

「マキナ! そいつは無限に再生するんだ!!」

「なるほど。しかしヴィクトル様、無限なんてことはそうそうありませんよ」


 マキナはそう言うと、再び強烈な蹴りを入れた。

 そしてそのまま、左右の足を交互に繰り出していく。

 ――ドドドドドドドッ!!

 もはや蹴りというよりも、地割れでも起こっているかのような轟音が響いた。

 ゴーレムの身体が再生する傍からみるみるうちに削り取られていく。


「性能のテストです。どれだけ再生できるか見てあげましょう」


 そう告げるマキナの顔は、凄惨な笑みを浮かべていた――。


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