288.どこにいるか分からない時、頼れる考えはただ一つだ。
どこにいるか分からない時、頼れる考えはただ一つだ。
基本中の基本に立ち返り、この建物を虱潰しにしてやる他無い。
そう心に決めた私は、グッと奥歯を噛み締め…口の中を牙で切って血を滲ませた。
「舐めやがって…」
鬼沙の煽りを受けて、私の顔は真っ赤に染まっており…
周囲から飛び出してきて襲い掛かってくる妖共は、ただの"観客"にしか見えなかった。
「沙絵」
ボソッとした声で沙絵の名を呼ぶ。
沙絵はすぐさま私の方に顔を向けると、私は沙絵に正臣の"体"をヒョイと投げ付けた。
「ここから抜け出して、トンネルの中で"待ってて"」
「え?でも…」
「でもじゃない!行け!沙絵!!!!!!!!!!」
驚く沙絵に、怒鳴りつける私。
その声は周囲から襲い掛かって来た妖共の勢いを削いで足を止めさせる。
その刹那、エレベーターまでの"道のり上"に居た妖数体の方へギロっと目を剥いた私は、足を踏み出すと、一瞬の間もおかずに妖共を真っ二つに引き裂いて道を作ってやった。
「沙絵!早く!早く来い!そして消えろ!!!!!」
エレベーターの前までやって来た私は、エレベーターの扉を開けて沙絵を呼ぶ。
沙絵は困惑した顔を浮かべつつも、私が作った道を無駄にすることなくこちらへやってきて、"抜け殻"と化した正臣と共にエレベーターの中に飛び込むと、私は彼女に背を向けて追ってくる妖達に目を光らせた。
「じゃ、後でね」
一番奥まで入り込んだ沙絵にボソッと一言投げかけると、それを待っていたかのように閉じていくエレベーター。
ガコンと音がして扉が閉まると、1人残された私は周囲を取り囲んだ妖達を前にして真っ黒な妖力を宿した両手の爪を"カシャン!"と突き合わせて見せた。
「防人は妖を殺しはしなかった。何処か遠くへ隠すだけだったんだけどもネェ…ソレモ、モウ、"フルイ"、カンガエニナルノカ…」
ワナワナと体を震わせながら…
今すぐに飛び出して目の前の妖共を粉微塵にしてやりたい衝動を抑えて"威嚇"して、動きを牽制しながら、取り囲んだ妖達に"警告"を放つ。
「アヤカシ、シネバ、ドウナルカ…シッテルカ?シネバ…ソコデ、オワリジャナイ。ドコカデ、ウマレカワルンダトサ。マイルヨナ、コンナ"ブチョウホウモノ"ドモ、ケシテモケシキレネェナンテ」
エレベーターの稼働音に耳を澄ましながら、妖達に向かって語り続ける私。
まだ、エレベーターは12階まで辿り着かないらしい…随分と遅いエレベーターだ。
「オセェ…」
エレベーターの音に焦れて足をドン!と踏みしめた時。
丁度、エレベーターが到着したようで、背後から聞こえていた音が止まった。
そこまで行けたのならば、途中で彼らの邪魔も無く…ちゃんと"屋上"まで行ける事だろう。
「ツイタカ…ヤハリ、ネライハ、ワタシダケ…」
機械音が消えて、少し静かになった中。
ボソッとそう呟くと、ジロリと周囲を囲った妖共を見回しどう道を切り開くか考え始める。
鬼沙が何処にいるかも分からない以上、何処に行けばいいかもわからない。
「!!」
ジリジリと迫って来た妖達が、私の間合いに入ったその刹那。
ふと、私の視界の奥に、ここへ来た時に見えた"子供"の姿が見て取れた。
「おねえちゃん!!こっちこっち!!」
彼女は少し遠く…1階フロアの中でも、少し"高くなった"所からこちらを見下ろしており…
そして、私に気付いた様子で無邪気な声を上げてくる。
目の前の妖達は、その可愛らしい声を受けて僅かに"隙"が生まれ…
私の口元はニヤリと下衆な笑みを浮かべた。
「イマイクヨ!!」
その叫びと共に足元の力を解放した私は、ドン!!と床に爪を抉り込ませながら飛び出して、目の前にいた妖3名を爪で切り裂き真っ二つにして見せる。
「クソ!」「マテ!!」「トオスナ!!!」「アノガキヲダマラセロ!!!!」
俄に周囲の妖が叫び出すが、私は道の上に居る"必要最低限"の妖を狩りながら、低空飛行であの子のいる方へと駆け出した。
「チクショウ!!ウチオトセ!!」
更に4名、超低空飛行をした状態で切り裂き…
最後の1名の腹部を蹴飛ばして上昇してみれば、私の居た場所を散弾が通り過ぎていく。
さっきまでは射線が通ってしまうせいで銃を撃てなかったとみるべきか…
背筋をヒヤリと冷やしながらクルリと急展開して見せると、上昇する切欠に吹き飛ばした妖を掴みあげて盾にして、後方に飛びながら追いかけてくる妖達と対峙する。
「カマウナ!ウテウテウテ!!!!!!」
何処からともなく"銃火器"を取り出す妖達。
出鱈目な存在が、この世界で生きようと決めているはずの連中が、文明の利器を使うという事に変な滑稽さを感じながら…私は右に左に銃弾を交わして距離を広げていった。
「マメデッポウ。アタルカヨ…」
頬すれすれを飛んで行く銃弾の軌道を見ながら、ボソッと呟く。
この姿であるならば、音速で飛んでるモノすら"ゆっくりと"見えるんだ。
「!!」「!!」「!!」
盾にしている妖で"銃弾の威力を確かめてみる"と、妖の手足は数発の銃弾で簡単に千切れ跳び、あっという間に盾は胴体と首だけになってしまった。
「ヒュー…」
ほんの出来心からの実験だったが、思った以上に悲惨な結末を招いてしまい、思わず声が漏れてしまう。
「おねえちゃん!早く早く!」
背後からは子供の声…
この惨状にも関わらず、彼女の無邪気さは変わらず私を呼び続けていた。
「ハイハイ…」
ポイと盾を捨てて、一度彼女の方を振り返る。
彼女がいる高台までは、もう目の前までやってきていて、屋上で出会った女の子の姿が鮮明に見えてきた。
「オット!!」
後少し、高台に辿り着く寸前…ヒュン!と傍を銃弾が通り抜けて彼女の頬を掠めていく。
ゾッと背筋を凍らせた私は、彼女との距離を一瞬で詰めると彼女を抱えて物陰に隠れた。
「アブナイアブナイ…」
「おねえちゃん。あれ、どうにかして?」
見ず知らずの子の言葉に、"場に似合わない"無邪気な声色に、私は僅かにニコリと笑うと小さく頷いて、左手を眼前に掲げて見せる。
「マカセテ」
短くそう呟くと、真っ黒な光を宿した左手を追手の方へと突き出して妖力を解放した。
今の私なら…"有無を言わさぬ"程の、強大な威力を纏った一撃を放てそうだ。
「アホドモハ、コレデ、カタヅクカラ…」
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