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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
碌章:境界線上の妖少女(下)
279/300

279.もう一人の自分が居たとしたら、きっと私は殺すだろう。

もう一人の自分が居たとしたら、きっと私は殺すだろう。

目の前で刀を振るう先代の姿を見続けていて、ふとそう思った。


(……イライラしてくるな)


彼女の攻撃を何度も躱して、刀で受け止めているうちに…

段々と"癖"というものが体にしみ込んでくるのだが、悲しい事にその"癖"は私と全く同じ。

こっちから見れば、ひいばあちゃんって事になるのだから当然と言えば当然なのだろうが…

だが、目の前で"瓜二つ"の姿を持った女が、私と似た動きをすることに、段々と私の気持ちはささくれ立っていた。


「…!!」


彼女が"取り出した"刀は先程よりも切れ味が鋭いらしい。

脇差で何度も何度も斬撃をいなし続けているうちに、脇差の切先から感じる感触が僅かに"緩く"なってきている様に感じる。

異常を顔には出さず、どうしたものかと考えながら彼女の攻撃を凌いでいる私だったが、遂に、攻撃を受けた際に脇差の刀身が真ん中からポッキリと折れて何処かへ飛んで行ってしまった。


「これで2本とも台無しだねぇ?」

「……っ」


刀が折れた刹那、私は脇差を抜いてから初めて後方に跳んで距離を取る。

先代が煽ってきたが、それでも私は顔色を変えず、折れた脇差を見て溜息をつくと、先程しまった打刀を再び鞘から抜き出した。


「折れてても、まだ"残ってる"。それで十分さ」


両手に一本ずつ…二刀流となった私は、折れた刀を重ね合わせて鉄が掠れる嫌な音を掻き鳴らすと、トン!と足を踏み出して先代との間合いを一気に詰めて行く。


二刀流…ともなれば、動きはさっきと全然違う。

私はダンスを踊るかの如く、左右の手を交互に動かし体を回し、変幻自在な動きで先代に襲い掛かった。


「!!!」


これには流石の先代も驚いた様だ。

彼女は勢いを増した私の動きに目を見開きながら、何んとか二刀流から繰り出される斬撃を躱して、隙を縫って刀を振るってくる。


「ぐっ…!」


私は彼女の動きを完全に見切っており、突き出された刀をヒョイと躱すと、伸びてきた彼女の腕に脇差の刀身を滑らせて、彼女の腕を切り裂いてやった。


「ジワジワやるのは趣味じゃ無いんだけどね」


やり合いだして、もう5分は経っただろうか。

最初に血を噴き出したのは、先代の方…

彼女は腕から出血すると、ドクドクと流れる血を見て僅かに顔を歪めた。

今の彼女は妖に成り果てているといえど、血を噴出させて痛くない筈はない。


「筋までは行かなかったか」


私はそんな彼女に嘲る声を向けると、再び間合いを詰めて一気に畳み掛けていった。

だが、カン!キン!と派手な金属音を出して、攻撃は弾かれてしまう。

血を流していると言えど、彼女の刀さばきに陰りは見えない。

私はそんな状況にニッコリとした笑みを浮かべると、更に勢いを増して彼女に襲い掛かっていった。


「っ…!!クソ!!」


思わずといった声が彼女から漏れ出る。

さっきまでの打ち合いよりも、一段も二段も上のスピード。

これは私の特色だと思うが、1本よりも2本の方が"動きやすい"のだ。

狂笑を貼り付けた私は、ジリジリと後ろに下がっていく先代に迫っていき…


「ガッ!!!」


遂に、打刀が彼女を捉え、胸元に一文字の筋を入れた。

着物がハラリとはだけ、胸を縛っていた白いサラシが赤く染まっていく。


「ギ…!!!」


だが、まだまだ私の猛攻は止まらない。

そこからクルリと一回転して今度は脇差で彼女の右腕を深く切り裂く。

パックリと着物の袖が割れて、手首辺りに入った深い切れ筋から血が噴き出し始めた。


「着物を真っ赤に染めてから送ってやろうか」

「このっ…!!」


胸と手首から噴出する血は、ドクドクと彼女の着物を染めていく。

着物から出た生足に、真っ赤な血がツーっと垂れて流れていく…

地面を蹴って後退した彼女に一度間合いを取られた私は、打刀と脇差にこびり付いた彼女の血をヒュッと払うと、再び彼女目掛けて足を踏み出した。


「畜生め!!」


私の勢いを見て、彼女は溜まらず叫び声を上げて"何か"を起こす。


「!?」


パッと消えた彼女の姿。

妖術を使われたと思っても、私はそれに即座に対応することが出来ずに彼女が"いた"場所に刀を振るって風を切り裂く。

当然のように手応えは無い…刹那、周囲の明かりが一瞬の内に掻き消えて真っ暗な世界に引きづり込まれ…私が異変に気付いた時には…


「使うつもりは、無かったんだけどねぇ…!!」


苦し紛れな声を上げた先代沙月が、私の胸元に深々と刀を突き刺していた。


「うっ…ぐ…!!!!!」


一瞬遅れてやってくる苦しみ。

心臓は外れたが、肺を突き刺され…悲鳴を上げた瞬間、私の口から吐き出された血が彼女の頬を赤く染めた。


「異境で"学んだ"のは、生ヘノ執着サァ!!シネェ!!サツキィィィィ!」


ルール違反…いや、殺し合いにルールなどは無いのだが。

私達の間にあった"暗黙の了解"が破られた瞬間。

闇の中で、私を文字通り"闇討ち"してみせた彼女は、ニィと笑って妖言葉で喚き散らす。


「く…はっ…こ…の…!!!腐レアマガァァァァァァァァァァァァァァ!」


彼女の叫びの直後、再び世界が色付いたその刹那。

瞬時に脳内が沸騰した私は、痛みに歪んだ顔を彼女に向け…手にしていた刀を手から放すと"自らに掛けていた"術を解いて"素の姿"に変化して見せた。


「グッ…ギッ!?」

「ハッ…ソッチガソノテヲツカウナラ…コッチニハコノテガアルノサ!!」


この程度の"刃如き"…何てことない。

刀を手から放した…いや、"手に持っていられなかった"私は、刀を突き刺したまま動かない先代目掛けて"左爪"を突き刺さんと腕を振るう。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


アッと彼女が目を剥いた…

「しまった」と言わんばかりの顔を晒した彼女の体を、私の左手が貫いていく。

貫手…猛禽類の様な、鋭い爪が生えた手を"取り戻した"私は、容赦なく彼女の体を抉って腕を貫かせ、バクバクと動く彼女の心臓の一部をギュッと掴み込んで千切ってやる。


「シネ、ウラギリモノ」


心臓の一部を掴んだ刹那…シンと静まり返った瞬間、私は彼女に短く告げると、ギュッと心臓を握りつぶし、翼を広げて大空へと飛び立った。


「コレデ、トドメダ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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