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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
碌章:境界線上の妖少女(下)
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277.ここが1本道なのは、幸か不幸かどっちなのか。

ここが1本道なのは、幸か不幸かどっちなのか。

道の左右に"壁の様に"立っているビルの中はどうなっているのか…

そのビルの向こう側がどうなっているのか、そんなことを知る前に、私達は周囲360度からの"殺意"を向けられ少々慌てていた。


「クソ!…兎に角"道を作る"ぞ!」「後ろだ沙月!引け!引くんだ!」


目の前の"先代沙月"が動き出した刹那。

再び四方八方からの"銃撃"に晒された私達。

以津真と風吹が結界を作り出して防いだものの、長続きするか?と言われれば心もとない。


「畜生!どっかのビルにでも飛び込もうか?」「ダメ!一旦後ろに引くの!」


先陣を切っているのは私だ。

背後の道を塞ぐように立っていた妖を斬り捨てて"道を切り開き"突き進む。

何処かのビルに入って立てこもろうか?とも思ったが、その考えは自覚に否定された。


「どうして!?」「罠だからじゃ!この辺り、商店から上は"何も無い"!!」

「はぁ!?」「兎に角!前に突き進むぞ!!」


詳しい話は後…ということなのだろう。

私は飛んでくる銃弾を全て斬り捨てながら、道すがらに居た妖達を木端微塵に斬って捨てて"道を作り出して"いく。

背後からは金色の光を感じるが…"妖が隠された"…そんな事で一々後ろを振り向いたりはしない。


「どこまで行く気?」「"沙月が前に来るまで"だ!」「なるほど?」

「兎に角ここを"掃除"しようってワケさ。沙月、飛べ!道の妖だけじゃないんだぜ!」

「はいはい!!」


以津真からの指示に頷き、風吹からの指示に従い翼を広げて空に浮き上がる。

ビルの窓際に居た妖達は、私のその姿に目を剥いて驚いていたが、私はそんな彼らの元を"尋ねる"と、その驚き顔を真っ二つに切り裂いていった。


「あー、そういうこと…」


宙に舞い、ビルの壁を伝い…所々に見える妖を斬り捨てて…入道が"罠"と叫んだ訳を知る。

"ハリボテ"だからだ…窓際こそ、何かかしらの床があるものの、そこから先は床が無く、ビルの骨組みだけが見えている状態。

更に上空へと上がってビルの"向こう側"をチラリと見やれば、その先は真っ暗で"何も見えない"状態だった。

なるほど、ビルに入ってしまえば袋小路に追い詰められたも同然というわけだ。


「沙月!後ろだ!」「!!」


ある程度進んだ頃、ふと以津真の声に振り向くと…

過ぎ去ったはずの場所に突如として妖が現れていた…いや、妖ではなく"悪霊"だ。


「ケッ!!悪霊もいやがるぜ!!」


斬り捨て様にも刀が届く距離ではなく…

悪霊が手にしていた銃の銃口がこちらに向いている。

ゾッと全身の毛が逆立った刹那、悪霊が引き金を引く間際。

突如"突風"に見舞われた私は地面に急降下していき、悪霊の手にした銃は切れ味鋭い風に引き裂かれてバラバラに砕け散ってしまった。


「助かった!」「あぁ、しっかしどこまで続くんだ?」

「もう終わりみたいよ?前みなさい!前!!」


ヒヤリとした瞬間を乗り越えて、再び地面に降り立った私。

自覚の言葉に眼前を見やれば、ニヤニヤしている様子の"先代沙月"が道のド真ん中で仁王立ちしていた。


「これで良く分かったかな?準備運動には、丁度良い距離と相手だったろう?」


彼女の元へは飛び掛からずに急ブレーキ…

刀を出したままながらも、ダラリと脱力して楽な体勢になっていた彼女は、死屍累々な光景を前にして一つも怯んだ様子も無く、不敵な様子で私達をジッと見据えている。


「随分と余裕じゃないか。手駒が無くなるぞ?」

「以津真よぉ、アレが手駒だってんならお笑いだぞ?あんなの捨て駒さ」

「ほぅ…なら、ここ以外にも"棲み処"はあるんじゃな」

「どうだか。更地にして見れば分かるんじゃないか?」


シンと静まり返った通りのど真ん中で、売り言葉に買い言葉。

以津真や入道の言葉を受けても尚、彼女の態度に翳りは見えない。


「ま、ここを引き当てただけ"褒めて"やっても良いか。入舸の能無し連中じゃ見つけられなかっただろうからさ?」


彼女は先頭に立つ私に嘲る目線を向けながらそういうと、ゆっくり刀を構えて見せた。


「見つけられたついでに、1つ教えてあげる。あぁ、冥途の土産ってやつだな」


静寂に包まれた通りに、先代の言葉のみが響き渡る状況。

私は彼女の動きをじっと見据えたまま、言葉に耳を傾けていた。


「この通りのビル。殆どハリボテなんだけどもねぇ…幾つか"完成した"ビルがあるのさ。攫ってきた人質はそこにいるよ。元気にしてる…筈だ。少なくとも死人は出てない」


彼女が言ったのは、この間攫った正臣達の居場所について…

まさかこんなに簡単に知ることが出来るとは思わなかったが、そういう話には裏がある。

先代沙月は、私にのみ目を向けて、ジトっとした顔を浮かべると、ニヤリと口元を嫌らしくニヤつかせた。


「けど、言ったよねぇ。5日後に答えを聞きに行くって。その約束はどうしたのかな?」

「素直に聞くとでも思ってた?」

「そりゃ思わない訳が無いだろうさ。人質の命がかかってんだ」


彼女はそう言ってクククと喉を鳴らすと、私の方に刀を向ける。


「だからな、沙月。"もう一度だけチャンスをやる"。お前はここに残りな。私がお前を斬り捨てるまでに、後ろの4人が人質を見つけられたら…人質は返してやる。私と沙月の1対1…邪魔はしないでくれよ?」

「…後ろの4人が言う事を聞かなかったら?」

「その時は、人質全員が死体に変わるだけさ。ホラ、見なさいな」


私の尋ねを受けた先代沙月は、ゴソゴソと着物の裾を探ると…

"古臭い"彼女に良く似合う、大柄なスイッチを取り出した。


「このボタンが押された時、人質の居る部屋はドカン!って訳さ」

「……」


彼女は得意気な様子でそういうと、スイッチを仕舞って刀を構え直す。


「さて…正直に言うとね。私は"沙月の体"さえ手に入れば"後はどうでも良いんだ」


そう言って一歩、こちらに足を踏み出す先代沙月。

私は退かず…手にした刀をゆっくりと構えて彼女の動きを牽制して見せた。


「手伝ってくれる妖共は…そりゃ、仲間意識があるけどもね。皆、分かってるだろう"捨て駒"だって事くらい。そうさね、"死なば諸共"の精神がある。古い妖ばかりだからねぇ…」


私達に向けてではなく、どこか自分に言い聞かせるように呟く先代。

彼女は私の顔を、光の無い目で見据えると、手にした刀をチャキッと揺らした。


「世直し一揆の第一歩…沙月。せいぜい楽しませてくれよ?直ぐに死なれては、困るからねぇ?」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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