264.知らなくていい事は、知らせたくないものだが…
知らなくていい事は、知らせたくないものだが…
私は隠し事が苦手というか、顔に出るらしい。
だが…"鬼沙と先代沙月"の事はまだ、正臣達には伝えたくないだろう?
「待たせたのですよ…って、素なのですね?」
「あぁ、うん。ジュン君、いらっしゃい…全然待ってないから大丈夫だよ」
雪女を捕らえた次の日の午後。
外国人連続怪死事件の犯人は"被疑者死亡"のまま解決する事となった。
私の手により"干乾びた"状態の雪女を犯人として警察に引き渡し、"家の息がかかった"連中が司法解剖をして"書類上の手続き"を終わらせて、無事に事件解決…捜査終了。
3月、一部を騒がせたニュースの終わりは、それはもう、呆気の無いものだった。
「私達を家に集めたってことは、今朝のニュースの話かしら?」
「そうだね。見てるから分かると思うけど、とりあえず犯人は捕まったからさ」
私がやらねばならぬのはその後始末…
とても"人間技"では起こせぬ事件だったものだから、正臣を始めとして、穂花や楓花、ジュン君には"事のあらまし"だけを伝えておきたかった。
正臣は悪霊絡みの時に色々知ってしまっている立場だが…正臣は"コッチ側"だからいいか。
兎に角、"もう心配しなくていい"と、皆に伝えたかったのだ。
「女の人が犯人でしたよね?意外だったのですが…」
「雪女ってやつだよ。普段と違って警察に身柄が行ったでしょ?ちょっとその辺の訳を離しておかないと気になるかなって思ってさ」
午前中は正臣と共に部活に興じて…午後、私の部屋に皆を集めて説明会。
これも仕事だと思えば気が重いが…必要な事だろうから、仕方がない。
妖の事件として皆に注意喚起をしていた以上、皆の警戒を解くのも仕事のうちだろう。
「そうね。それも、死んでるんだって聞いて驚いてたのだけども…実は違ったり?」
「流石だね楓花、そうなのさ。今の雪女は仮死状態。その状態で、とりあえず"犯人はコイツです"って突き出したの」
「それだけ聞くとでっち上げの犯人みたいだけどさ。雪女の犯行なんだよな?」
「そこは大丈夫、本人が自慢げに話してたよ。雪女風の"縄張りの主張"だそうで」
「縄張り…って」「野生動物なのです…」
「実際野生動物だからね。人に化けるだけで…本性なんてそんなものさ」
私は、一昨日見て来た"食糧庫"の事は明かさずに話を続ける。
「でね?今回は警察に突き出したんだけど、ホラ、被害者は外人でしょ?だから、ソッチ側を静める為に必要だったのさ」
「なるほどね。その辺りの対応も沙月達の仕事ってわけ」
「まぁ…ほら、いつだったか話したっけ?外国の妖組織の…」
「学校でしてたのですよ。その辺が煩かったわけですか」
「そうそう。まだ騒いではいないけど、未解決だと騒いで来ちゃうでしょ?」
そう言いながら、少々ゲンナリした顔を浮かべる私。
実際、まだその辺の組織が動き出した等々の話は入っておらず、理由付けに使っただけなのだが…まぁいい、"鬼沙達"の事を隠す隠れ蓑にしてしまおう。
「それで、とりあえず仮死状態にして警察に渡して…ホトボリを覚まして、いつものように隠すつもりだから、とりあえず、その報告ね。安心してくれる…?」
「えぇ、ありがとう沙月、ニュースを見てちょっと気になってたから助かったわ」
「余計な心配かけちゃうもんね」
「そうなのです…というと申し訳ないのですが…え?って思ってたのですよ」
とりあえず、皆は納得してくれたらしい。
いつものように穂花や楓花からの追及も無く、何故かアッサリ…
私は肩透かしを受けた気分になりながら、正臣の方に顔を向けた。
「とりあえずさ、暫く沙月は何も無いのか?」
「防人としての仕事は無いよ。だけども、ホラ…部活とか勉強とかしないと…」
「本当に変わったなぁ…去年の沙月に見せてやりたい位だ」
正臣が呆れ半分といった顔になってそういうと、女子3人もうんうんと頷いて見せる。
その頷きには、こう…"長年苦労してきました"と言いたげな感情が多分に含まれていた。
「良い傾向なのだけどもね、やっぱり何が沙月を変えたのか気になるわ…ねぇ?」
「そうね、姉様のいう通り…でも、それは秘密なんでしょ?」
「まぁね。こればかりは…言えないからなぁ…」
「正臣辺りにはポロっと言ってそうなのですが、言わないのです?」
「言わない言わない。その辺は家の人にも言ってないみたいだからな」
「へぇ…意思は硬いのね。まぁ、3日坊主にならないだけ間違いないのだろうけども…」
「アハハ…凄い言われ様ですこと…」
苦笑い気味の顔を浮かべて皆を見回す私。
確かに、去年の受け身な私から比べれば随分と変わったと思うが…
そこまでだろうか?とも思ってしまう。
「そういえば、マサは悪霊が見えるのよね?」
「ん?あぁ、そうだけど。大分減ったでしょ?」
「最近、靄がかってないのはマサのお陰?」
「うん…あぁ、穂花はそういうの見えるんだっけ?」
「気配を感じるだけね。もう、大分"片付いた"んじゃない?」
緩んだ空気になった時、ふと穂花が正臣に"悪霊"の事を尋ねる。
私は僅かに奥歯を噛み締めて、その話題が"発展"しない様に祈っていた。
発展してしまえば…まだ、"懸念事項"があることが皆にバレてしまうから…
「殆ど終わりかなぁ…その辺ってどうなってるんだっけ?」
「ん?あぁ、正臣の仕事もとりあえず終わりでOKだよ」
「分かった。なら、大丈夫か…」
アッサリとした返答に、正臣は僅かに怪訝な顔を浮かべながら受け入れてくれる。
きっと彼の脳裏には"鬼"の話が渦巻いているだろうが…それは今、話せない事柄だ。
「結局、悪霊って何で大量発生するのかしらね」
「3月とか、季節の変わり目ってホラ、寒暖差のせいで急死する人が多いから」
「…それ、真面目な理由なの?」
「うん。嘘みたいだけどもね。そうじゃなければ、事件だよ。悪霊なんて、人が死ななきゃ生まれないもの」
そう言うと、穂花は少し訝し気な目を向けてきたが、直ぐに溜息を付いて呆れ顔になる。
「嘘じゃないのね」
「嘘言ってどうするのさ」
「いや、沙月の事だから、適当なこと言って心配かけまいとしてるんじゃないかって思っただけよ」
穂花の言葉に楓花が「うんうん」と同調した仕草を取ると、私の顔をジーっと見つめてきて首を傾げた。
「沙月も、少しは隠し上手になってるからなぁ~…前までは嘘を付けば顔が動いたのに」
「成長するものでしょ?」
「そこは成長して欲しくなかったと思うのですよ…」
楓花の言葉にドヤ顔を返せば、ジュン君から突っ込まれる。
私は皆の反応に苦笑いを浮かべると、姿勢を崩して机の上のウィッグに手をかけた。
家にいても真面目な妖絡みの話しか出てこなさそうだったから…ちょっと空気を変えたい。
「まぁ、兎に角…妖も悪霊も"捌けた"事だし…外に出ない?せっかく集まったんだしさ?」
お読み頂きありがとうございます!
「いいね」や「★評価」「感想」「ブクマ」等々頂ければ励みになります。
よろしくお願いします_(._.)_




