256.どんな問題でも、小さなことから潰していけばいい。
どんな問題でも、小さなことから潰していけばいい。
俄に問題が山積し始めた次の日、私は午前中を部活に費やすと、午後からは私服に着替えて正臣と共に小樽の街へ繰り出していた。
「最近増えてるなとは、思ってたんだ。やっぱダメな奴等だったんだな」
「えぇ、だから…そっちの方はお願いできる?私の方は連絡待ちだから」
「分かった。じゃぁ…最初はこっちの方からだな」
昨日と同じように小樽駅をスタート地点としているが…
今日の私は、上空から"妖を監視している"メノウとニッカの連絡待ち。
それまでは、昨日、鴉天狗と話して改めて気付かされた"悪霊"退治だ。
部活前、正臣にその旨を相談すると、彼も悪霊の増加には気付いていたらしく、近いうちに私へ相談するつもりだったらしい。
「こういうのってさ、勝手に祓って良いものなんだよな?」
「まぁ、うん。正臣に憑りつく方が悪いしね。全然OKなんだけども」
「ども?」
「ほら、例えばの話だけどさ。その悪霊が"成り立て"で何らかの記憶を持ってたとして…」
「証人として使える場合って奴か」
「そうそう。そう言うのが居たら私達に教えて欲しい…かな?」
「かなって、疑問形で言われても…なんだ。イタコみたいだな」
「イタコそのものだよ。悪霊限定だけど、現に憑りつかれて会話出来るんでしょ?」
「まぁ、そうだな」
昨日と同じように中央通りを運河の方に下りつつ、ちょっとおかしな会話を交わす私達。
正臣に"色々と"バレて…気付けば1年が経ってしまった今日この頃。
彼を悩ませていた体質は、彼のこれ以上にない武器に変わっていた。
私も私で京都に通って修行の日々だが、彼も彼で野良霊を使い色々とやっているらしい。
「っと…歩いてるだけで入れ食いだな」
「そんなに多いんだ。昨日までは、まだ普通だったのに」
「沙月達、きっとこれから忙しくなるんじゃないか?」
「なるだろうね」
色々と"実験(本人談)"を繰り返した結果、悪霊の心を"浄化"して怒りを鎮め、しっかりと会話出来る様になったり、悪霊を使って風を起こしたり、"霊力"を与えて僅かな間現実の物を動かしたり…
更には、いつだったか沙絵から託された"霊力"によって発動する呪符を使って、妖相手でも目くらましをして逃げる程度の事は出来る様になっていた。
"霊力"を使った呪符であれば、その程度が"限界"なのだが…まさか、こんなにも早く"限界"を迎えるとは、流石は正臣と言った所か。
「散歩だな。小樽散歩…何処行ったって"釣れる"だろう。行きたい場所無いのか?」
「んー…ちょっと待ってね」
歩きながら、会話しながら…まるで流れ作業の様に悪霊を自らに取り込み"心を浄化"し、祓っていく正臣の横で、私はスマホを取り出して位置情報共有サービスを開き、メノウやニッカ達の居場所を調べる。
「んー…式外埠頭公園の方かな。まだ雪だらけだろうけど」
「式外埠頭公園…あぁ、あっちだ。運河の左側」
「ひ、左…そうそう。橋越えた先ね」
メノウとニッカが重点的に見て回っているのは、その辺り…
私達は道すがらで悪霊を次々と祓いながら、海の方へと歩いて行った。
「おっと」
そして、私達が丁度、式外埠頭公園に着こうかという頃。
ニッカからメッセージが飛んできた…どうやら、公園内に止まっていたキャンピングカーが"昨日隠し損ねた3人"の根城になっているらしい。
「正臣、私の方の仕事だ…そうだね、近くにいると危ないから、何処にしようか。公園のあの辺りで待っててもらえる?」
「分かった。沙月はどの辺に居るんだ?」
「私は…キャンピングカーって何処かに見える?」
「あー…キャンピングカー…は…あぁ、向こうじゃないか?岸壁の隅にある」
「それだ。じゃ、ここで待ってて」
件のキャンピングカーは、公園の駐車場…ではなく、公園の奥の方…
船が停泊出来る様になっている岸壁沿いの、一番奥の所にポツリと止まっていた。
そのすぐ傍には、いつだったか、私と八沙が吹き飛ばされて微妙に折れ曲がった街灯が残っている。
私は正臣を公園内の、"現場から目線が通る"ベンチ付近で待ってる様に指示を出すと、単身キャンピングカーの方へと向かって行った。
(正臣を危険に晒すわけにはいかないよね)
コートの袖から呪符を取り出し、妖力を呪符に流し込みながらキャンピングカーへと近づいていく。
"わ"ナンバーの車、昨日隠した連中は立駐にコレが止まっていると思っていたのだろうか。
隠した今となっては分からないが、6人…これを"根城"にして何をしようとしていたのか…
それは今から"問いただせばいい"話だ。
「すいませーん」
コンコンとキャンピングカーの窓をノックして声をかける。
すると、中から何人かがゴソゴソと動き出したような音がして、無警戒に後ろの扉が開いた。
「はいはい…もしかして邪魔でした…か?…あ…」
ノコノコと出てきたのは、妖力から察して"6号"…骨を偏愛する妖。
若い青年になりすました彼は、表行きの私を見て怪訝な顔を浮かべて首を傾げたが、直ぐに"違和感"に気付いたのかみるみるうちに顔が青くなっていく。
「アンタは話が通じないタイプだからなぁ…別のが出て来て欲しかったよ」
私は6号の姿を見て、彼の態度が急変しそうになった刹那。
真っ黒な光を宿していた呪符を、彼の額に貼り付けて妖力を"解放"して見せた。
「!!!!!」
額に張られた呪符は6号の行動能力を一瞬のうちに吸いつくし、彼は驚いた顔を浮かべたまま固まって地面に倒れ込む。
最近出来る様になった"妖力の吸い取り"…一時的に動けなくする術だが、人の常識で言えば"血を吸いつくされた"様なもの。
妖力が一瞬のうちに干乾びた6号は、放っておけば向こう半年は起き上がることも出来ないだろう。
「人の姿のまま干からびるとなれば…ちょっとやりすぎたかな」
"そのくらいの強さ"に調整しているのだが…吸血され尽くした死体みたいな感じになった6号を見て笑う私。
「さて、中にいるはずの2人は?もしかして寝てるとか言わないよね?」
金色の呪符であっという間に6号を"隠した"私は、開いたままの扉から中に顔を覗かせる。
すると、中には男2人がテレビを見て談笑している姿があって…
私の姿を見るなり2人は目を点にした。
「……アンタは消えろ。アンタは残れ」
妖力で77号の妖だけを残すように"呪符を使って痛めつける"と、私は一瞬の内に身動きを取れなくした77号の妖の首元を掴みあげて車の外へと引っ張り出す。
「随分と各地で暴れて来たんじゃないか?え?…さながら逃亡生活中といった所か。ここで何をするつもりだったか吐いて貰おう!」
ドン!とキャンピングカー後部の窓に顔を押し付け、中でぐったりしている28号の妖を見せつける。
「隠すまでは規定事項だがな、お前が"五体満足"で向こうへ行けるかは、私へ対応次第って所だ」
そう言いながら、28号の妖の元へ金色の呪符を投げ入れて28号を異境へ隠した私は、絶望と恐怖の表情に染まった妖へ幾つかの質問を突きつけた。
「ここへは逃げて来ただけか?ここで起きてる怪死事件を知ってるか?知ってるなら、犯人の妖と繋がりは無いか?鬼沙と言う名の妖と繋がりは無いか?…さぁどうだ?77号の妖はな、嘘を付く時に癖がある。私はそれを知ってるのさ。嘘を吐いてみろ。首から上だけ隠してあとは海に捨ててやる」
ハッタリ混じりの脅し文句。
だが、これまで悲鳴しか上げて無かった妖は震えて怯えながら脱力してキャンピングカーの車体に寄り掛かるようにへたり込むと、弱々しい言葉で質問に答え始める。
「逃げてきただけです…田舎の方なら、防人もいないって…その、鬼沙って妖に唆されて…クソ!騙されたんだ!俺達を利用する気だったのは分かってたのに!…畜生!!」
「ほぅ。で、怪死事件は?」
「そ、そそそっちは知らないです!本当です!!こっちでニュースを見て…初めて知りました」
「ほぅ…従順なのは良いけども。オタク等、なんだって内地で騒ぎを起こしてきたんだ?」
「内地…それは…その、鬼沙って奴の指示で…兎に角暴れろって…貰えるものは貰っちゃってて…」
「ほー?」
そこまで聞いた私は、呆れた表情を浮かべると、妖を金色の呪符で隠して"仕事"を完遂させた。
「鬼沙…何を考えてる?」
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