247.変わったか?と言われれば、頷くしかないだろう。
変わったか?と言われれば、頷くしかないだろう。
いつもと変わらないと思っていた京都で私の身に起きた出来事が、私を変えたんだ。
「なんかさ、変わったよな。沙月」
「見た目が?」
「分かってて言ってるだろ。突っ込ませたいのが見え見えだっての」
年が明けて早1週間…正月気分も、そろそろ抜けて来てもおかしくない土曜日。
午前中の間、家の道場に正臣を呼んで特訓に付き合ってもらって…
今はそれが終わった後、自宅の食卓で昼食を摂っている所だ。
「無駄ですよ正臣君。私達がどれだけ聞いても、沙月様は答えてくれませんから」
「なるほど…でも、こう…真面目になった気がしません?気のせいですかね?」
「それは、そうですね。正臣君のいう通りかと」
横から茶々を入れてきた沙絵と言葉を交わす正臣。
私は話題が"そっちの方"へと向けば、白を切るというか…
防人元と交わした秘密を、1つたりとも明かす気は無かったのだが、どうやら話題の方向性は、思っていたのとは少し違う方向へ向かった様だ。
「今日の沙月さ、こういうと偉そうだけど…前よりも殺気があったんだよな」
「そうだった?いつも通りだった共うけど」
「全然。今日の沙月なら、ウチの部員全員やれるかもしれない。そんな勢いだったぞ」
「それは…ありがとうと言うべきかな?…正臣には負けるでしょうけど」
「それが大真面目だったんだよ。必死だったって」
正臣はオムライスを突きつつ、僅かに悔し気な顔を浮かべる。
今日も"いつものように"圧倒されていた…気がするのだが、正臣的には満足ならない部分があったのだろう。
私はそんな顔を見て口元を綻ばせると、"耳飾り"に触れて見せた。
「ズルしてるからだよ」
「したってよ。沙月、真面目に部活出て欲しいな。ズル無しでも男子に混じれるぞ」
「それは…」
「あれ、いつもの様に直ぐに否定しないんですね?」
良い淀んだところに沙絵の追撃。
私は沙絵をジトっとした目で見つめると、驚いた顔を浮かべる正臣の方に向き直る。
「自分で言っておいてビックリしてるね」
「そりゃするだろ…やっぱ、変わったな」
「うん…そうだね。なら…幾つかお願い聞いてくれたら出てあげても良いかな?」
私でも、私の変化に驚いている位なのだ。
どれ程否定したくても、虚勢を張って斜に構えていたくても…
"そんなこと"よりも今は愚直に"強く"なりたいし、もっと自分を"深め"たい。
そんなことを思うなんて…馬鹿な私には、一生に一度しか来ないおかしな時期なのだ。
だからこそ、今の私は"飢えて"いた。
「何さ、お願いって」
「宿題、見せて?」
緊張した面持ちで尋ねてきた正臣は、目を点にしてスプーンを落す。
珍しく、沙絵ですらポカンと口を開けたまま固まっていた。
「前言撤回したくなってきたな。まさか手を付けてないんじゃ…」
「そのまさかだよ。見せてっていうよりも、教えて?って方が正しいかな?」
「…沙絵さん、俺、何かいつも以上に振り回されてません?」
「そうですね。私も同じですよ…」
私の言葉に振り回される2人。
勿論、素でこんなアホな事はせず、"狙って"やっているのだが、こういう反応をされるとちょっと悲しくなる。
「と言ってもなぁ…俺、教えるのは苦手だぞ?その手のは穂花とか楓花とかに…」
「正臣ってさ、変な時に朴念仁を発揮するよね」
「え?…あ、あぁ…そういう事」
「そういう事。丁度良いでしょ?正臣も苦手克服出来て!」
「強引なこじつけって気がするんだけど…まぁ、いいか。食べた後、早速やるか?」
正臣に尋ねられた私は、ほんの少し考える素振りを見せると、首を横に振った。
「明日で良い?」
「明日。良いけど…」
「今日は別の事に使いたいの」
そう言って、シレっと明日まで正臣の身柄を確保する私。
我ながら独占欲が強い女だと思ってしまうが…実際、そうなのかもしれない。
・
・
「正臣のお勧めがあれば、教えて欲しいなぁって」
「なるほど」
昼食を終えて、"身なりを整えた"私と正臣がやって来たのは、マリーナベイオタルナイに入っている大きな本屋だった。
「穂花と楓花はさ、この辺頼らなくたって大丈夫なタイプじゃない?」
「確かに。あの2人、その手の本に頼ってるイメージないものな」
「正臣はその辺、抜け目ないでしょ?」
私達がやって来たのは、色々な参考書がズラリと並んだ参考書コーナー。
「俺が持ってるの教えろって?」
「ううん、違う違う。同じの買うのも芸が無いからさ、シェアしようよ」
「シェア…なるほどね」
ズラリと並んだ参考書たちを前にして、正臣は意図を理解してくれたらしい。
「科目は?沙月、来年は理系だっけ文系だっけ?」
「理系だよ。皆と同じ。理系なら、後で文系!ってなってもいいでしょ?」
「まぁ、そっちの方が科目多いもんな」
「それに私、日本史とか、古文漢文は苦手じゃないし」
「確かに…」
苦笑いを浮かべながら、理系科目の参考書を適当にとって眺める正臣。
そう、勉強嫌いな私だが、古文や漢文、日本史といった類の科目は苦手ではなかった。
もちろん、その手の勉強をしているわけでは無いから、点数が良いわけでもないが…
その辺りの科目に拒否感を感じないのは、家柄のお陰だろう。
「英語に数学に化学に物理。そっちが致命的だから、その辺を…」
「理系選択とは思えないんだけど」
「今に見てなさいって」
「今年の冬は酷い雪になりそうだな…ぃでっ!」
冗談を言った正臣の肩をギュッとつねってやる。
「ま、その辺なら…俺が買おうか迷ってやめたやつとかでもいいか?」
「全然。拘りとかないし」
「そう。なら…数学はこの辺かなぁ」
そう言って、正臣は数学の参考書を幾つか取って私に手渡してくる。
いきなり3冊…行き成りこんなには要らないのだけど?と言う目線を彼に向けると、正臣は小さく笑い返してきた。
「中身位は見てみろよ。楽そうなの選べばいいさ」
「はいはい」
正臣に言われて、渡された参考書の中身を確認し始める。
1冊目は小難しそうですぐ眠くなりそう…2冊目は、そこそこ楽そうだけど内容が薄いと見え…3冊目は…
「これかな?」
3冊目の参考書を正臣に見せると、彼はボツになった2冊を本棚に戻してくれた。
「よし…この調子で、残りも決めちゃおうか」
「お願いね」
正臣は次の科目の参考書に手を伸ばす前に、私をチラっと見やると、クスッと小さく笑う。
「こんな沙月、穂花と楓花が見たらさぞ騒ぐんだろうな」
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