238.分かれば子供騙しなのに、どうしてそこまで頭が回らないのだろうか。
分かれば子供騙しなのに、どうしてそこまで頭が回らないのだろうか。
思いがけぬタイミングで再会した鬼沙から"ヒント"を貰った私は、すぐ答えに辿り着いた。
バラバラに散らばった氷漬けの体…
なのに、私の手足の感覚はちゃんとあって、血は吹き出ていない。
凍っているとかそういうのではなく、"ただ、そう見えるだけ"だと気付いたのは、彼が私の周囲に捨てて行った"手足と胴体"の断面を観察していた時。
「……」
どういう仕組みになっているかは知らないが、胴体…
体の"切断面"をまじまじと、間近で確認した私は、"血肉が蠢いている"様が良く見えた。
そこに、"血が通っている"…私の体は"くっついたまま"なのだ。
なのに、手足は"少し"しか動かなかったし、なんなら、今はもう動かない。
(どういうことだ?)
私は目の前の光景をジッと見つめながら頭を回転させる。
目の前の手足や胴体には、血が通っているし…
動かそうとすれば、何かがピクリと反応を見せている。
なのに、動かない、動けない。
「……!」
もうすぐ…答えが導けそうになってきたその時。
遠くに人の気配を感じる。
吹雪の音に混じって…遠くから、誰かが歩いてくるような音が聞こえてくる。
私は目を見開いて目の前の"断面"を睨みつけ…
そして、ふと、目を閉じた。
見えなければ、どうなるのだろう?
「!!!」
唐突に試した、馬鹿みたいに単純な対処法。
それは、面白い位に"ハマった"…全身に冷たさが駆け巡り、手足が"動かせる"。
この妖術…"氷の冷たさ"を感じるが、氷漬けになっているのは飽くまで"見てくれ"だけ。
私は目を閉じたまま、口元をこれ以上ないほど"邪悪な"笑みで歪め…
そして、右手を左の着物袖に入れ…獣の爪先で、とある箇所に仕掛けた呪符に触れる。
ここまで来たのなら、"こんな妖術"から逃れるのは、容易い事だ。
「あら…?誰かにその姿を見られちゃったのかしら?可哀想ね、年頃の女の子なのに」
目を閉じた私の周囲…遠くから聞こえていた足音は、エミリアのものだったらしい。
エミリアの他にも数名…人の気配を感じるが、私を"運ぶ為"に人を呼んだのだろうか。
カチャカチャと何かが擦れる音が聞こえ…その足音はエミリアのそれよりも"重たい"。
「まぁ、いいわ。彼女を"梱包"して、本国に運んで頂戴」
エミリアの冷たい声が聞こえる。
「ふっふっふっふ…はっ…アハハハハハハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
それを聞いた私は、喉を鳴らして笑い始め…
爪で触れた"黄紙の呪符"に念を込めた。
「なっ…」「「「「「!!!」」」」」
驚く声に、身構える音が…暗闇の中から聞こえてくる。
吹雪の舞い散る中、私の周囲に集った者達が慌てる音が聞こえてくる。
私はそれを聞きながら、口元に歪んだ笑みを浮かべたまま、ボッと金色の光に包まれた。
「やっと、下らねぇ手品から抜け出せたよ…エミリア。随分と"不味そう"な部下を連れてるじゃないか。食人鬼の肉なんて、何を付けたって"食えない"よ?」
眩い光に包まれた刹那。
復活した"翼の感触"を頼りに空へ舞い上がった私は、吹雪の中、眼下で目を剥いてこちらを見上げた外人連中にそう言った。
「…撃ち落とせ!!」
"傷一つ無い"私の姿を見て顔を青くしたエミリアが叫び、部下が手にしていた"銃"が一斉にこちらに向いた。
拳銃よりも"物々しい"銃…それは、ライフルと言うのだろうか?ショットガンといっただろうか?生憎、ゲームには疎いから良く分からないが…
「豆鉄砲だな」
十数名の部下が、私を目掛けて一斉に放った銃弾をいともたやすく躱して見せる。
尖った銃弾に丸い銃弾…それらが吹雪の夜空へ消えていく…そんな様すら"止まって見える"今の私は、これまで以上に"調子"が良かった。
「エミリア。私は、二度同じ手を食う程馬鹿じゃないぜ?」
歯を食いしばった様子のエミリアを見て嘲る笑みを見せる私。
彼女の"妖力"を推し測るに、あの手品はそう乱発できる妖術では無いのだろう。
現に、人の姿に戻って…少し疲れた様子が見える。
夕方、清水新道に"姿を見せなかった"のも分かる気がした。
彼女は、元々"戦いに向いていない"のだ。
「なぁ?エミリア?そして…豆鉄砲使いのオッサン共」
そう言って、両手に纏わせた妖力を彼らの方へ解放してやる。
狙いは彼ら…ではつまらないから、彼らの周囲を塞ぐように"爆撃"を放ってやった。
「ぐっ…」
「逃がす気は無いよな?アンタも私も…」
エミリア達の周囲に"雪の壁"が出来て…
辺り一面は、一時的に周囲から"視界が届かなく"なった。
それだけじゃない…道も抉れていて、逃げ出したところで"転ぶ"様になっている。
私は一瞬で彼らを"追い詰める"と、彼らの処置の"仕上げ"に入った。
「ちょっとばかり…お礼と言っては何だが。エミリア、貴女にとっておきを見せてやろう」
吹雪模様の夜空に漂う私は、眼下で手をこまねいている彼らにそう告げると、左手を、左耳の後ろへと持って行く。
妖に姿が変わっても残っている"耳裏"の刺青…私はそこに手を触れながら、ゆっくりと地上へ降りて行った。
「な、何をする気…?」
「なぁに、アンタ方が見たがってたものだよ。この姿だけじゃないんだろ?見たい力は」
絞り出すようなエミリアにそう返すと、私は刺青に当てた手に念を込める。
その刹那、私の背後が"真っ黒"な空間へと様変わりした。
「う、嘘でしょ…!?」
「エミリア様…これは…退却を!!」
「え、えぇ…!!時間を稼ぎなさい!」
「は、はっ!!!」
さっき出したソレよりも"どす黒い"闇が広がる。
妖の状態で初めて使った"百鬼夜行"。
「あら、本日二度目ね?入舸さん。良い格好よ?」
「あぁ、先生、やることは…分かっているよね?」
「えぇ、任せて!!あんなの、"すぐ"消せるわよ」
「沙月様、人使いが荒いですよ?というか、ここにいたんですか」
「言ってろよ。探しに来るのが遅くなったからこうなってるんだ」
「お叱りは後で。目標は…あぁ、なるほど、やり残しがいたとは」
「元様が騒いでおったぞ?」
「見てるなら手伝ってよ…」
「そうはいかんと分かってるだろう。ま、こうなるのは予期しておったわ」
その闇から出てきた妖達は、"一切酔っている様子が無く"…
私の意思を正確に把握して、目の前で狼狽えている外国人の方へと向かっていった。
「チト"遊び相手には物足りねぇがぁ"!!先に送ってやったアホ共の所へ送ってやりな!」
私は次々に出てくる妖達に指示を出し、妖達は私の言葉に唸り声を上げる。
目の前…エミリア達は、断末魔を上げる間もなく、妖が作った妖波の中へと消えて行った。
「防人は、何も妖を殺す為の機関じゃない。ただ、ふざけ過ぎたアホを遠くに隠すだけさ」
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