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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
伍章:境界線上の妖少女(上)
230/300

230.後は遊んで帰るだけだと思っていたのだが、そうではないらしい。

後は遊んで帰るだけだと思っていたのだが、そうではないらしい。

昨日で、防人の"厄介事"が色々と片付いたと思ったのだが…


「入舸沙月、ちょっと良いか?」

「はい…?」


昨日、日付が変わっても尚どんちゃん騒ぎをしていた私達。

そのせいで、朝の目覚めはいつも以上に遅くなり、気付けば朝の11時を回っていた。

部屋に戻ったのが最後なら、起きたのも最後…

私が目を覚ました時には、親は既にいなかったし…沙絵や八沙の影も無い。


「以津真さん」


未だに眠たい頭を起こして身なりを整えて、食堂にでも行こうかと思って部屋を出た瞬間。

私を呼び止める声に驚いて見れば、声の主は、今回何かと会う事の多い以津真天だった。


「どうかしました?」

「あぁ、少し話がしたいのだが…眠そうだな」

「えぇ、昨日は遅くまで起きていたので」

「なるほど。だが、すまない…ちょっと急ぎの用なんだ」

「それなら…部屋で聞きましょう。今、誰もいないので」


部屋の外で立ち話…というのも何なので、彼を部屋に招き入れる。

多少荷物で散らかっているが、人が呼べない程の酷さでも無かった。


「今、お茶を…」「いやいい。言っただろう?急ぎだと」


部屋に招いてありきたりなやり取りをした後…

部屋の縁側の方にある…広縁のスペースで対面する私達。


「それで。話って何でしょう?」

「あぁ、昨日の今日で悪いんだがな…清水の方に行ってくれないか」

「清水…?清水寺ですか」


神妙な顔で頼みごとをされている…のだけども、それにしては行き先がおかしい気がする。

怪訝な顔を浮かべて聞き返すと、以津真天は頷いて着物の裾からあるものを取り出した。


「これは…?」

「昨日始末した外国人が持っていたメモだ。翻訳したところ、今日の夕方に清水寺の方で何かをしでかす気だったらしい。そいつらは消したから何も無いとは思うが…念のためさ」

「始末って…」

「グールとかいう輩さ。食人鬼だ。隠してやった。っと…そんなことは良い。それよりも、このメモだ。何人か"出来る者"で組んで出て欲しいのだよ」


以津真天の頼みを聞きながら、私は渡されたメモをジッと見つめる。

生憎英語には明るくないが…一緒にプリントされた地図は、確かに清水寺周辺のものだった。


「別に良いですけど、親たちは何を?外人騒ぎは片付いたのでは?」

「あぁ…"ほぼ片付いた"が正しいな。お主の親や使ってる妖…"強い"者達は皆、街にいるぞ。別の場所を警邏してもらってる。それ以外は、言いにくいんだが"居残り特訓"だ。昨日、お主と手合わせした後で見れば余りにも"弱い"のだ。それでいて、選民意識があるのだから性質が悪い」


以津真天の言葉を聞いて、苦笑いを浮かべる私。

外人騒ぎ…終わったものだと思っていたのだけども、まさか"やり残し"があるとは。

それに、特訓の事については…言ってる事はわかるが…放置していたのは彼らも同じだ。

まぁ、どっちも尻拭いしようとしているだけマシか。


「防人元もそこを憂慮していて…昨日の件もあり、大ナタを振るう事になったのさ。そのせいで今日、街を見張る者の数が足りなくなった。1箇所だけだが…まぁ情けない話さ」


以津真天の愚痴を聞いて、事情は大体理解できた。

やることは何てことない、"正月"に毎年やっていた事だ。

仮面や耳飾りを付けて人々の前から姿を消して…妖達に睨みを効かせればいい。

私は苦笑いを浮かべたまま、心の中で彼に同情すると、頭を仕事モードに切り替える。

だが、ここは京都…"もしも"の時、何処までやって良いかを知っておく必要があるのだ。


「して、何人位の規模で?あと、もしもの時の対処を知りたいです」

「そうだな…清水に居てくれればいい。6人位か。昨日ツルんでいた連中でいいだろう」

「そうですね」

「もしもの時は、近くの大人を呼べ。近くにはお主の親族を配置してる」

「なるほど…配慮頂きありがとうございます…」

「こっちの不手際だ。それとな、最悪の場合。"市民に危害が加わったら"、姿の露呈を気にせずに動け」

「了解です」


私は眉を吊り上げながらそう言うと、以津真天は口元を緩める。


「……まぁ、いいか。では…昼食を摂ったらすぐに出てくれ。15時までには居て欲しい」


何か言いたげだったが、私の目を見て止めたらしい。

そう言って立ち上がり、部屋を出ていく。

私は席に座ったまま、彼が部屋から出ていくまで見送ると…ふーっと溜息をついた。


「さて…と」


外を眺めて、雨が降り出しそうな曇り空を眺めて顔を顰め…

着物の裾からスマホを取り出してモトと"洛中組"にメッセージを打ち込む。

"昼食を食べたら、"仕事"の準備を整えて玄関ホールに集合…13時までに来て"

すぐに既読が付き、OK!というスタンプが返って来たのを確認すると、スマホを仕舞って準備に取り掛かる。


(防人本家の、外の世界…耳飾りも付けておこうか)


完璧に"遊ぶ気"だったから、いつもの様に着物に呪符を仕込んでいるわけでは無かったのだ。

折角着替えた"楽な着物"を脱いだ私は、下着姿のまま部屋の中をうろついて、必要なものを集めていく。


呪符に、お面に、防人元から貰った耳飾り…

服装は着物…なのだけど、外が寒そうだから外套も欲しいし…

雨が降ったら困るから、笠も頭に被ろうか。


そんな感じで部屋にある物を集めて、それを身に着けていく。

そうして出来上がったのは、如何にも時代劇村とかに居そうな和服姿の女…

青系の着物に身を包み、黒い外套を羽織り…頭に笠を被った女。


「まぁ、良いか。京都だし」


どう考えても道中で目立つ格好だが、ここは京都だ。

道中は目立つだろうけど、こういう格好は私だけでは無いのだし…

ここ数日、防人達も似たような格好で京都の街をうろついていたのだから、気にすることでもない。


「さて、お昼にでもしましょうか」


姿見で身なりをもう一度確認して、準備が整った事を確認した私は部屋を後にする。

部屋を出る段階で、時計の針は12時手前を指していた。

食堂の込み具合が悪ければ…待ち合わせ時間ギリギリになりそうだ。


「……ふぅー」


私は廊下に出てすぐ、軽い溜息をつく。

急な仕事、状況的には"何も無い"と思いたいが、今回の京都は"何かが違う"…

だから、これから先に、何かがありそうで、少し胸がざわついていた。


「運が良いのか悪いのか…」



お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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