228.外と中では、まるで別世界の様だった。
外と中では、まるで別世界の様だった。
4人の妖の絵を"刺青"に取り込んだ私は、1人、防人元の部屋を出て…
元来た道を戻って塔の入り口まで戻ってきた。
「気負うなよ。私は私の"自由"を説くが。お主はお主の"ありのまま"でいいのだからな」
部屋を出る間際に言われた、"大妖怪"の一言を延々とリフレインさせながら…
私は遂に塔の外へ足を踏み出した。
「沙月!」「戻って来た!」
中庭での騒ぎは既に収束していて、モトや千鶴…"子供達"が私を出迎えてくれる。
「皆…もう、寝てる時間じゃないの?」
「まさか!戻って来るまで寝れるかよ」
「そう…かな。で…大人は?どこに?」
「それならさっき、大講堂呼び出されて行ったわ。外人騒ぎの後始末じゃない?ま、安心して!もう、"大人達"も、私達の事で口を挟んでこないでしょうから」
「え?あれから、なしたのさ?何かあったの!?」
私はモトや千鶴と話しつつ…中庭から、本家の廊下に移る。
皆が私の周囲に集まって、私達の会話に聞き耳を立てている様だったが…
この扱いは何なのだろうか。
「沙月が塔で暴れてる時に、私達は私達で色々あったのよ。込み入った話は…食堂で話しましょ?」
「え?うん…そうだね。って…皆来る気?」
「当たり前でしょ!」「こんなに楽しい夜なんてないし!」
「えぇ…」
疲れた顔を隠さない私と、やけに"元気"な様子の千鶴たち。
込み入った話は食堂で…という事で、ぞろぞろと食堂に向かって歩き出す。
「どうだった?あの塔の中は。そう言えば、格好も入った時と何か違うような…」
廊下の角を1つ曲がった後で、モトが私の隣にやって来た。
「どうもこうもないよ。良くまぁ…無傷で居られたなって」
私はさっきまでの出来事を頭に思い返しながら、自らの体を見回す。
そう言えば…借りた着物のままだ…まぁ、明日以津真天辺りを尋ねて返せば良いか。
「なんか派手な音が聞こえてたからな。大分派手に動いたんだろ?」
「やっぱそうなんだ。まぁ…修繕費はかかるかなぁって位には。…半壊位?」
「相変わらずやることなす事派手だよなぁ…」
「あははは…それはねぇ、命がかかれば、なりふり何て構わないのさ」
適当に塔であったことを濁しながら答え続けてやってきた食堂。
中に入ってみればまだ中に人の気配があって、ちゃんと食堂として機能している様だった。
「まだやってるんだ」
「あぁ、今日は日付変わるまでだってよ」
「そもそも、今、何時さ?」
普通に"食堂がやってる"事に驚いた私は、食堂の時計を見て目を丸くする。
まだ11時前…あの塔の中は、時間の進みが遅いのだろうか…?
時計を見てポカンと口を開けていると、私の目の前がお盆で塞がれた。
「わっ!」
「ほら。俺等も晩飯はまだだったんだ。入舸さんが戻って来るまでは粘るって、大立ち回りだったんだぜ」
「はぁ…あ、ありがと…」
南大路君からお盆を受け取った私は、列にならんで食事を受け取る。
いつもの夜の光景だ…時間がおかしい以外は…大して"おかしなこと"になってない。
私はまだ"塔の中"にいるみたいな、どこか浮ついた…不思議な心地よさの中にいた。
フワフワして…何事も、どうにかなるだろうと思えるような感覚。
「じゃ、先ずは食べちゃおうか!大事な話はその後で!」
お盆に夕食を乗せて…モトと"洛中組"と同じ卓につくと、周囲に"同期達"が集まって来た。
千鶴の音頭で、夕食会がスタートする。
私は完全に空気に流されて、何がどうなっているかも掴めていないが…とりあえず、場の空気に乗っておく事にした。
「い、いただきます…」
手を合わせて、夕食に手を付けながら…"明らかに仲良くなった"周囲の光景を見回す。
置いて行かれた感が無くも無いけど…私が塔の中にいる間、何があったのだろう?
「晩飯無しで動くのはやっぱきついよな!」
「食べ盛りだもんね~…流石にお腹空いちゃって…幾らでも食べれちゃいそう」
「そうだね。あ、鶴姉…ちゃんと消化してから寝ないと…太っちゃうよ?」
「成君…そんなこと言わないでよ!食べづらくなるじゃん!」
「ま、時間が時間だもんなぁ…こんな時間まで起きてる事が先ず無いし」
さっきまでは、私が修行の"教官"をやっていた時までは、まだ初々しさというか…
互いへの遠慮というか、クラス替え直後の浮ついた感じがあったのに…
今ではそんな空気は何処にも見当たらない。
「ねぇ、そっちの地域ってさ、森が多いって本当?」
「そうね。家の周りは緑ばかりよ。だから、こういう都会に来ると緊張しちゃって」
「分かる!俺んとこは海の近くなんだけどさ、ノンビリしてねぇ?」
「そうそう!歩くのも速くて!ビックリしない?」
仲のいい親戚が集まった時はこういう空気なのだろうか?
色々な場所に散らばった親戚が集まって…
ノーガードで色々聞き合って盛り上がってる感じ。
(本当に、この数時間で一体何が…?)
まるで宴会の様な盛り上がり。
私は辺りを見回しつつ、何とも言えない気持ちになった。
疎外感…とも違う、この気持ちは、何て言うのだろうか?寂しい?うーん、違う。
「どうした?そんな難しそうな顔して」
「いや、何か、皆…仲いいなって。何があったの?たった数時間のうちに」
私の様子に気付いたモトに尋ねると、彼は「あぁ」と言って笑い、全員の方を見回した。
「確かに、全然違うか。それもな、沙月のお陰なんだ」
「私の?」
「あぁ、ま、その辺はあとで二寺さんが叫ぶだろうさ」
モトがそんなことを言うと、私達の会話を間近で聞いていた千鶴がピクッと反応して私達の方に顔を向ける。
「何?もう話して良いのかしら?」
「いつだって良いだろうに。沙月が不思議がってるぞ?この盛り上がり具合にさ」
「なるほど!そうだね!なら…」
私の様子を見た千鶴がそう言って、パッと席から立ち上がる。
「はい!注目!」
良く通る声でそう叫ぶと、盛り上がっていた皆が一斉に静まり返った。
「もう少し後にしようと思ってたんだけど!沙月が不思議がってるからもう言っちゃいます!今日は記念日だからね!ね?皆!」
静まり返ってすぐ、千鶴がそう言うと、皆が一斉に盛り上がる。
ここはコンサート会場か何かだろうか…
唯一このテンションに付いていけていない私が「え?え?」と、困惑していると、千鶴は満面の笑みで私の元までやってきて、手を掴んでグイっと体を引き上げた。
「わ!」
驚く間もなく、されるがままに立たされる私。
千鶴はそんな私に、お構いなしに肩を組んでくると、全員を見回して言葉をいうタイミングを溜める。
無言で全員を見回して、全員の注目が私と千鶴に向いた時、彼女は皆に向かってこう叫んだ。
「"家柄"関係無しに、好き勝手に交流することが許されたの!!沙月のお陰よ!!」
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