223.タネが分かれば、どうにでもなるものさ。
タネが分かれば、どうにでもなるものさ。
「お?これはこれは…」
中庭に頭から墜落した私は、"とっておき"の呪符の効果を受けて再び立ち上がった。
とっておきの呪符とは、いつか"入舸"で使った"黄紙の呪符"…
妖の状態で使えば、効果はテキメンで、受けた傷の殆どが癒えてしまう。
「ノコノコと来やがったな?戦果の確認とは、念の入った連中だ」
ゆっくりと中庭に立ち上がった私は、私の"確認"に来た妖達に薄汚れた笑みを向ける。
手には、"戦いの中で徐々に強くなってきた"妖力を纏わせていた。
「そこのババァだけは得体が知れねぇが…」
「叩きのめせば良いとおっしゃるつもりだろう?…大入道!来るぞ!」
「あ?」
台詞を遮られ…それどころか、私をここへ墜とした者への"復讐"すら読まれてしまう。
不意の出来事、手にまとわせた妖力を消して言葉の主を眺めれば、ババァと言うにはまだ早い位の年頃の、何の変哲もない"中年婦人"が私に微笑み顔を向けていた。
「最後の1人は覚か」
「そうだ。覚だ。私が覚…だがな、入舸沙月。お前の"単純脳細胞"は、心を読まずとも分かるぞ?」
気品の良さそうな中年婦人が、その気品に似合わない嘲る様な笑みを私に向けてくる。
そんな覚を囲むようにして立つ男2人…以津真天と鎌鼬がその笑みに釣られて笑い始めた。
「以津真天が先鋒な訳だ。鎌鼬に、大入道に、覚とはな」
「あぁ、ワシを倒したところで…お前に残りを倒すのは無理じゃろう」
「どうだかな。妖怪なんざ、倒されるのがお似合いなのさ」
私は連中の安い挑発に乗って、再び両手に妖力を纏わせる。
「その割には、同じ手を使いすぎではないか?まだ、"そんな手"に頼る気か?」
「あぁ、"この手"しかしらないんでね!」
以津真天の言葉に乗った私は、両手を天高く掲げて、一気に妖力を解放させた。
「!!」
塔の中心部…中庭から、空まで立ち上る妖力で出来た"渦"は、周囲の物を巻き込み、何もかもをもみくちゃにしてしまう。
それと共に、黒い霧が一気に晴れだしてきた。
「ジジババ共め、さっきまでは大入道に"霧"を出させてた見てぇだが、今はどうだ?」
私の心を読んでおいて、降参するとでも思っていたのだろうか?
「それに、この間合いじゃあ…"心が読めても"、意味はねぇよなぁ?」
驚く3人を前に、渦を操った私は、"トドメ"とばかりに再度渦に"妖力"を流し込んだ。
「さぁ!第3ラウンドと行こうか!」
派手な爆発音…少し遅れて、妖の断末魔が聞こえ、中庭に面した廊下が次々と崩壊していく音を背に、私は3人の妖に向かって足を踏み出した。
「うぉっ…!」
妖力が駄目なら、真っ直ぐ言って吹き飛ばしてやる。
私は以津真天に向かって真っ直ぐ突き進み、両手の爪をカシャン!とカチ合わせた。
「…くそっ!」
短い距離、あっという間に間合いを詰めて、以津真天の胸に右手の爪を突き立てる。
そのまま、内臓諸共グシャリと握りしめると、以津真天を"武器"にして、驚いた顔を晒している鎌鼬と覚の方に顔を向けた。
「驚いてる暇はねぇぞ!」
思うがままに、乱雑に腕を振り回しているうちに以津真天の上下半身が分離して、辺りに鮮血をまき散らす。
鎌鼬と覚も、驚きつつ反撃してきて、刃やナイフが私の体を貫いていったが、私の動きは"鈍らない"。
どうやら、あの見えない刃は鎌鼬のもので…ナイフは以津真天ではなく、覚の得物だったらしい。
「その程度かよ!鈍らで私は止まらねぇぞ!」
以津真天を斬り裂いた私は、奴の血飛沫の中を突き抜けて次の得物を目に捉えた。
次の得物は、偶然にも間近の距離にいた覚だ。
「ぐ…!」
トン!と足で床を蹴飛ばしてあっという間に覚との間合いを詰めて行く。
心が読める分、奴は私の動きに"1段階早く"反応するものの、私の速度が乗ってしまえば、それまでだ。
腕を一振り、二振り…刀を振り回す事よりも乱雑で、手っ取り早い攻撃。
以津真天の時とは違い、今度は少し"いたぶって"やる。
さっきのお返しには温いが、まぁ、いいだろうさ。
「がぁ!…目が…このっ!畜生!」
「鈍ら如き!心臓には届かねぇ!」
腕を振るって覚を痛めつける私。
お返しに奴が放つナイフが体中に突き刺さったが、最早私は痛みすら感じない。
適当にナイフを弾き…弾きそびれたものは体の何処かに刺さっていくが、そんなものはどうだっていいのだ。
少し血を吐き出すだけなのだから。
「生身の痛みにゃ、慣れてねぇ見てぇだなぁ!」
乱雑に腕を振り回し、次から次へと覚を血みどろにしていく私。
体の表面が全て赤く染まる頃には、さっきまでの様な"嘲る"表情は消え失せて、私への恨み辛みが籠った顔をこちらに向けていた。
「その顔を見たかったんだ。嘲る顔も良い顔してたがな、そういう顔する連中はな、こういう顔も良く似合うものさ」
同じく全身を血だらけにしつつも、まだまだ"平気"な私は、覚に嘲る笑みを向けてやる。
奴が流す血で、奴の足元には血だまりが出来ていた。
「お仲間も能力が悪いわな。お前に当たるのを怖がって、オドオドしてるだけだぜ?」
フラフラの状態で立つ覚と対峙しつつ、少し離れたところで、顔を引きつらせて身構えたまま、私達の様子を見続けていた鎌鼬を煽った。
「手品もタネが知られるまでは驚かれるモンだがな。タネさえわかりゃ、造作も無いのさ」
私はそう言って覚に背を向ける。
刹那、背後でドサっと何かが倒れる音が聞こえた。
「どうするよ?惑わす要員もいなけりゃ、照準代わりになっていた覚もいねぇ。出来る事は見えねぇヒョロ刃を飛ばすだけだろ」
残ったのは、鎌鼬。
雰囲気のある中年男性だった以津真天や、淑女然としていた覚…
豪快な坊さんオヤジといった風貌の大入道と違い、奴はヒョロい若者風の見た目だ。
「まとまってりゃ、"塔を護れた"んだろうな。生半可な防人は良い餌だったろうさ」
私は両手にドス黒い妖力を纏わせつつ、一歩一歩鎌鼬との距離を縮めていく。
確かに…いつか裏切り者が私に言った"押し通せる"というのは、本当だったらしい。
「私は、頭を使う事にゃ向いてないが…どうやら異常なまでに"頑丈"らしくてね?」
妖力を纏わせて、居っぽい歩近づいていく中で…私の体についた傷は次々と癒えていた。
妖は丈夫で、治癒し易いと言えど…普段からこうではない…ちょっと異常な早さだ。
戦いのお陰でアドレナリンでも出てるのだろうか?分からないが、今の私には好都合…
「生憎だったな。舐めてかかってこなけりゃ、こうはならなかっただろうぜ」
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