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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
伍章:境界線上の妖少女(上)
220/300

220.正面突破しか頭にないのは、誰の影響だろうか。

正面突破しか頭にないのは、誰の影響だろうか。

狼煙代わりに空高く打ち上げた黒い靄は、ある程度の所まで飛翔すると派手に爆発し、辺り一面に"妖気の雨"を降らす。


「驚いてる間がありゃ、動くんだな!」


その様を見て驚く以津真天…怯んだ様を見た私は即座に前へ足を進める。

ザっと中庭の砂を蹴飛ばして宙に浮き、左手に纏わせた妖力を入り口の扉の方に向けた。


「爆ぜなぁ!」


ボゥっと塔の入り口が"黒いサークル"で囲まれて、その刹那、派手な爆発と共に入り口の扉が木端微塵に砕け散った。


「チィ!…」


スタッと扉があった場所の目の前に降り立ち、扉諸共吹き飛んだ以津真天を見下ろす私。

彼は険しい表情を浮かべていたが、ダメージは殆どなさそうだ。


「余裕そうだねぇ…以津真天。"いつまで"その余裕が続くか試してみようじゃないか。あぁ、やっぱ、この庭に何か、仕掛けでもあんのかい?…え?」


寧ろ、そこまで余裕があって"何もしてこない"事が不気味に感じる程…

私の勘が正しそうだという事は、この庭から感じる"妖気"にあった。

恐らく何か仕掛けがあるのは間違いない…塔に入った瞬間、何かあるんだろうさ。


「何があった!」「これは…!」「お前は…入舸の!…入舸…沙月…!」


塔の入り口に来て…これからどうしたものかと頭を動かした私の背後。

開戦の狼煙とばかりに打ち上げた"花火"に釣られて、大人の防人達が集まりだした。


「おやおや…お仕事お疲れ様ですねぇ…皆さん?」


突然のことで統率が取れている様子は無い。

皆、こちらに様子を見に来ては私の変化と塔の"小破"に驚くだけ…

私は以津真を牽制しつつ、そちらの方へ嘲る表情を向けてやると、大人に混じって"模擬戦"をやった"同期"達の姿も見えた。


「沙月!さっきは…塔に挑むつもりは無いって言ってたじゃん…!」

「やっぱり嘘だったのか。相変わらず嘘が下手だな!こんなこったろうと思ったよ!」


その先鋒…狼狽える大人達を避けて前に出てきた千鶴とモトの叫び声を聞いた私は、ニヤリと口元を歪めると、全身に妖力を纏わせて真っ黒な靄を纏って見せる。


「「「「「!!!!!」」」」」


たじろぐ防人達。

以津真も反撃する気を削がれた様で、暫し私は自由を得られた。


「私も…思ってた以上に"防人"に真面目だったみたいでね。でも、ひよっこを連れて面倒見切れる程、出来たモンじゃねぇんだなぁ」


全員の注目が注がれる中で、全員に聞こえるように…"人の声"で言葉を放つ。


「そこを動くなよ!多分だが、私が塔の中に入った途端、"仕掛け"が作動するんだ!」


そう言って、様子を見に来た防人達に牽制を一撃…

小さな爆発を起こすだけだが、彼らを驚かせ、動けなくするには十分過ぎる一撃だった。


「沙月っ!」

「邪魔はさせないよ?止めようってんなら、容赦はしない。危険に首を突っ込む必要は…」

「そうじゃない!沙月!聞いてくれ!俺等も手伝うって決めたんだ!」

「は?」


膠着状態…それはモトの声によっておかしな空気が流れ出す。

私が目を見開いて彼の方を見ると、モト達"同期"は皆、お面と耳飾りを持ってきていた。


「沙月が"動き出したら"俺等も加勢するって、さっき皆で駄弁ってる時に決めたんだ。足手まといになったっていい!構うもんかってな!これは全員の総意だぜ!」


そう言ってお面と耳飾りを付けて、前に一歩踏み出してくるモト。

その様子に、"洛波羅家"を快く思わない大人達が汚い言葉を吐いたが…


「そうよ沙月!沙月だけに良い格好はさせないってね!」

「あぁ!」「1人だけ良い格好させるかっての!」「そうだそうだ!」


そんな彼らの子供…"洛中組"や、他の同期達がモトに続いて来たことで、野次が一気に困惑へと変わった。


「私だけが、馬鹿を見てれば良かったものをまぁ…予想外な事してくれるな!君達は!」


私はその光景を見て、背中がムズムズし始める。

嬉しいのやら、悲しいのやら…それともイライラか…

何とも言えない感情に、私のニヤケ顔は深みを増していき、やがて一人高笑いをし始めた。


「アッハハハハハハハハハ!!!最高に馬鹿だな!相手が悪すぎる!それに、見てみな!こっちは妖相手だが、その様なら、親が黙ってないだろう!」

「黙ってないだろうがな!防人元が出した"お題"だって言えば黙るだろうさ!それにな沙月!俺等が"反抗期"だって事、忘れてるぜ」

「んな、反抗期があってたまるか!あぁ、分かった分かった!なら、そんな命知らず共に仕事をくれてやる!」


私はモトの言葉にそう返しながら、ヒョイと塔の敷居を跨いで見せる。


「「「「「!!!!!」」」」」


刹那、綺麗に整備された中庭の砂の中から"使い魔"達が数十体、一斉に姿を現した。


「私が"防人元"の居場所に辿り着くまでに、出てきた薄気味ワリィ肉人形共を片付けてな!塔の中には絶対入るな!庭だけだ!怪我しようが知らねぇからな!」

「任せろよ沙月!そっちはそっちで"しくじるんじゃねぇぞ"!」


モトの声援を背に、塔の奥へと踵を返す私。

その前では、ニヤニヤと満足げな顔を浮かべた以津真が、奥へ繋がる通路の前で仁王立ちして立っていた。


「すばらしい…たった1日でこうなるとは…"あの鬼"のカリスマ性は未だ健在という訳か」

「まさか。似た年の連中なんてそんなもんだろうよ。これで満足してんなら、黙って通して欲しいんだが」

「それとこれとは別だ。この先は、通すなと言われているのでな」


そう言いあう背後で始まった、"使い魔"と"若手防人"達の戦闘…

その雑音を聞きながら、私達は間合いを詰めて行く。

塔の入り口から少し入った所にある、何てことの無い通路上…暗く狭い通路で、私達の目線が交差していた。


「でも、少し想定外だったよ…まさかアレが使えないとは…思わなかったよ」

「肉壁が消えて不満か。別に、アレを全部消してからでも良かったんだがな」

「威勢の良さも鬼譲り…か」


以津真天はポツリとそう呟くと、あっという間に妖力を解き放ち"姿を変える"。

40代程度の…ダンディな男の姿はすぐに消え失せ…

代わりに、人の顔を持ち、鳥と蛇が混ざり合ったような巨体の化物が通路上に現れた。


「マァ、ワシノ、カチハ、ユルガナイ!ワシラ、"シテンノウ"ヲ、タオサンカギリ、ココハムゲンカイロウダ!」


最早、人の言葉を話せなくなった形態。

私は背筋を凍り付かせながらも、体の中から沸き立つ"何か"を感じて震え立った。

体中にみなぎる妖力…兎に角"前へ前へと押していく"事しか頭には無かったが、どうにかなるだろう。


「4匹倒せば良いだけか、楽なもんだな。まずはデカブツ退治…さぁ、行くぜ!」



お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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