217.煙の後に立っている者が、まさかいるとは思わなかった。
煙の後に立っている者が、まさかいるとは思わなかった。
モトと私で"模擬戦を終わらせる為に"放った一手は、見栄え重視の派手な一撃。
「お?…まさか…」「これは意外だったな」
派手な轟音と共に舞い散った煙と粉塵。
それが晴れる頃には、皆広場に倒れている…
そう信じて疑わなかったのだが、煙が晴れた広場には、人影が4つ程見えていた。
「やっぱ本家に近けりゃ"濃い"のかな?」
「どうだろうな。も少し"楽しめる"なら、それで良いだろ」
見えた人影は、そこに立っているだけで、無事では無い様だ。
隅に避けて私達の模擬戦を見物していた面々がどよめいた。
全身が煤けて着物が所々破れて、お面も僅かに割れている。
そんな格好の4人組…私とモトが初日に知り合った、本家に近い家の4人だ。
「よく耐えたね!今回のは結構"効いた"ろうに!」
「千鶴と成寿のお陰さ!俺と龍弥は相手纏いだぜ!」
少し離れた場所に居る4人組に声をかけると、焦った声色で南大路君が反応を返す。
確かに、見てみれば彼と雲丹亀君は千鶴と三条君に護られた様だ。
というよりも…前に居る2人は、僅かに"妖"の気を出している。
「モト、千鶴は鬼だけど…三条君は何だろうね?」
「何だろうなぁ…蜘蛛の糸なら、土蜘蛛じゃねぇかな?」
「病気をまき散らすっていう?」
「あぁ、詳しくは知らないけどさ」
2人を護るように前に出て、呪符を使って結界でも張ったのだろうか。
こちらに向けて、灰になった呪符を掲げたままの2人…
2人共、自分のしたことに驚いている様で、唖然とした表情のまま動かずに固まっていた。
千鶴は鬼の角を生やし、三条君は手から防御に使ったのであろう蜘蛛の糸が伸びている。
「まぁいい。2度も3度も同じ手は食わないよ!そら!」
その様子を見て背筋を僅かに凍らせた私は、暫し止まった"時間"を動かそうと、手にした赤紙の呪符に念を宿す。
決めに行ったといえど、まだ私達には"2枚ずつ"赤紙の呪符が残っていた。
「はっ…!」「え?…」
「2人共、呆けてる暇があったらこれを防いでみせなぁ!」
「俺からも!お代わりをもう一つ行くぜ!」
暫しの間を空けた後、私達は手に宿した念を4人に向けて突き放した。
「「!!」」「やべ!!」「来るぞ!」
赤紙の呪符は一瞬で燃えて塵と化し、そこから放たれた"光線"は一直線に4人の方へと突き進んでいく。
私とモトの放った攻撃は、共に同じもの…光線が混ざり合って眩い光を宿し、一気に4人の姿を光の中に包み込んでいった。
「「(そら)食らえ!」」
そう叫んだ刹那、さっきよりも一際大きな爆風が4人を包み込んだ。
見た目重視だから威力は無いだろうけども、当たればそれなりに痛そうな一撃。
粉塵で前が見えなくなる直前、南大路君と雲丹亀君が吹き飛んだ様に見えたが、どうだろうか。
「「……」」
その場から動かずに様子を見る私達。
徐々に煙が晴れると、今度こそ立っている人影は無さそうだった。
「倒れたかな?」
「それフラグだ」
更に煙が晴れて…南大路君と雲丹亀君が倒れて伸びている様子は見えたのだけども、千鶴と三条君の姿は見えない。
それを確認した刹那、私達は背筋をゾッと凍らせて、その場から飛びのいた。
「うぉっ!!」「あぶな!」
何かが飛んでくる気配…
本能のままに跳んで避ければ、私とモトが居た場所は、何かの力で大きく抉られた。
「モト!大丈夫!?」
「大丈夫だよ畜生!こっからは手加減ナシだぜ?」
「どうせあと1枚さ!思いっきりやってやる!」
まだ見ぬ相手に何処とない得体の知れなさを感じつつ、私達は適当に動いて辺りを探る。
「ん?上?」
影のおかしさに気付いて見上げて…口をぽかりと開けた。
広場を覆う木々に、電線の様な何かが張り巡らされている…
それが蜘蛛の糸だと気付いたのはそのすぐ後だ。
「ひゅー…怖い怖い」
上を見やれば、手から糸を放ち、張り巡らされた糸を自由自在に行き交う三条君がいて…
「よそ見してるね」
「!!」
そして、眼にも見えない速さで私の目の前に姿を表わした千鶴がいる。
彼女は正に"鬼の形相"で、私に接近してくると、唖然としたままの私の腕を掴んで上へと投げ飛ばした。
「うわっ!」
「空なら逃げ場は無いでしょ!」
「く…」
投げ飛ばされた先は、三条君が張り巡らせた蜘蛛の糸。
その数秒後には、モトも私と同じ目に遭い、私達は仲良く蜘蛛の糸に絡めとられた。
「すげぇ…こうなるんだ」
「どうしよっかね」
似た位置で絡まり、身動きがとれない私達。
だが、そこに悲壮感はこれっぽっちも無かった。
「2人共!これで私達の勝ちでイイでしょ!」
眼下では千鶴と三条君が並んで私達を見上げて…私達に降伏を告げてくる。
だが、まだルール上は終わっていない。
私はニヤリとニヤけて首を横に振って見せた。
「千鶴、ルールは説明したでしょ?まだ、私達をダウンさせてないんだよ?」
「でも、もう動けるはずがないじゃない!」
「それはどうかなぁ?ねぇ、モト?」
「あぁ!二寺さん、爪が甘いぞ!俺達はな!あと1枚、呪符が残ってんだぜ!」
蜘蛛の糸に絡まれた私達…身動きは取れなかったが、"呪符"は使える状態なのだ。
「え?嘘でしょ…」
千鶴が驚く声を上げて私達の手元に目を向けた。
私達の手元には、残り1枚となった"赤紙の呪符"が握られていて、それはさっき以上に眩い光を放っている。
「惜しかったね!千鶴!三条君!良い作戦だったよ!」
「ここまでやったなら、その様子なら…もう”次の一手”は無いだろ?」
「私達はこれで最後!さぁ!これを防いでみな!」
私達は驚き顔を浮かべて固まる2人に向けて、呪符を手にした手を突きつけた。
刹那、眩い光が一面を覆いつくし…さっきよりも強い”爆撃”が辺り入り面を覆いつくす。
私達の枷を破壊しつくし…既に避けた面々を巻き込む程の威力…
私達の耳に、皆の悲鳴が轟いた。
「ここまで本気にさせたんだから、負けでもいいんだけどね。でも、負けず嫌いなのさ」
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