210.防人というのが只の人間ではないと、改めてそう思う。
防人というのが只の人間ではないと、改めてそう思う。
突如として"赤紙の呪符"を爆発させた私は、"似非爆発"の余韻と十人十色の反応を見せた"防人"達の様子を見ながら、そんな思いに浸っていた。
「モト、"出来る奴"を見繕っといて」
「はいはい」
突然の"開始"に呆れ顔を浮かべるモトに指示を出し、それから皆の様子を見て"落ち着き"を取り戻すのを待つ。
「流石、この程度じゃ"問題ない"。ここにいる人で、呪符を使ってるのはそんなに居ないなと思ってたんだけども…"咄嗟の場面"にはちゃんと"体が反応する"ものさ。防人ってのは、やっぱ普通の人じゃないよね」
驚いた顔を浮かべて、咄嗟に"赤紙の呪符"で私の"爆発"から身を守った皆を見回して、いけしゃぁしゃぁと一言。
私はニコリとも表情を変えず、妖らしい"妖力"を纏って皆を黙らせながらそう言うと、新たな呪符を着物から取り出して皆に見せつけた。
「安心して。さっき私がやった爆発は"似非"だ。騙し打ちみたいなものだから実害は無いよ。その似非爆発の"リアルさ"に驚いた君達は、咄嗟に呪符を使ってそれを防いだ。その時に使った"妖力"は本物だけどもね…今からその力を"使いこなせる"様にするのさ。やり方は人それぞれだから"教えられない"けれど、今やったみたいに体は知っているから、"思い出させてやればいい"」
私はそう言って呪符に念を込めて、真っ赤な光を放つ。
それを見た皆は、慌てて新たな呪符を構えて私の方に手を向けた。
「そうそう、分かってるじゃないか。只の呪符だったり…"妖を隠した"経験がある奴は何人か居そうだな。それが出来れば"赤紙の呪符"を扱うのはすぐなんだが…」
全員の妖力が少し増したのを肌で感じる。
この妖力は、"防人"だけが持つ得体の知れない力。
私は、私に向けられた妖力を感じてピリピリとした感触に口を鳴らすと、真っ赤な光を宿した"赤紙の呪符"を頭上に掲げた。
「"赤紙の呪符"は、人に化ける程度の雑魚に使う呪符さ。出来ることは攪乱と攻撃。使い分けは、使い込んで理解するのが一番。"自分なりのルール"が出来るだろうからね」
真っ赤な光を宿した呪符を見せながら説明する私。
皆は、私が"いつ動き出すか"とソワソワしながらも、私の説明を聞いて僅かに表情を引きつらせる。
私は皆にプレッシャーを与えつつ、呪符を光らせたまま説明を続けた。
「眩い光と音で"攪乱"させる。それが一番簡単で…"咄嗟の時に出やすい"。攻撃のつもりでミスった時にもそうなるから、一番多く"繰り出す"だろうな。そして、攻撃。これは使い込まねば"小規模な爆発"しか起こせない。今の皆だと、ただ、相手を煤けさせるだけだろう」
そう言って、頭上に掲げた呪符を"小爆発"させてやる。
ボン!と音を立てての爆発…私の手先を軽く煤けさせただけだが、皆を驚かせるには十分だった。
一様に驚き、爆発に"反応"して呪符に念を込め、似た様な爆発を起こした者や、それすらも出来ず"光らせただけ"の者も居る。
「まずは"赤紙の呪符"を使いこなせなければ、その先は無いよ。そしてね、これを使いこなせれば、工夫次第で"呪符"を使って、色々と出来るんだ。モト、ちょっといい?」
「ん?」
私はそう言って着物の裾から新たな"只の呪符"を取り出して念を込めると、それを近くにいたモトの額に貼り付けた。
「はい」
「!!」
突然の事に驚くモト。
私はニヤリと笑いつつ、モトの"妖力を一時的に増す"様に呪符に念を込める。
「例えばこうやって、自分の妖力を他者に"分け与える"事も出来る」
「そういう事か」
「ま、相手が妖力に慣れてないと"酔う"だけでダメだけどね。こんな使い方、今は皆、出来ないはずさ。そして…ちょいと失礼」
そう言って皆の方を見やると、皆はモトの方に目を向けていた。
私は皆の反応に満足すると、モトに近づいて耳打ちを一つ。
「モト、この効果は大体1時間ちょい…"出来ると見繕った"連中を連れて、向こう側で"模擬戦"をしてほしい。モトが的で、モトからは"煤けさせる"程度の攻撃、向こうは好きにやらせな。良い?攻撃がモトに当たったら終わり。出来る?」
「了解…それなら行けるな」
モトは"他より妖力が強くなっている"程度でしかなかったのだが、今のモトは"私の眷属"位には妖力が強くなっている。
体からみなぎる妖力に満足感を得た様子のモトは、私の耳打ちに頷くと、私は皆の方を振り返って声を張り上げた。
「じゃ、今から早速"実戦練習"に行こう!光と爆発を使い分けるんだ。"ある程度出来る"連中は、今からモトが声掛けしてくから、声を掛けられたものはモトの指示に従って!」
その声と同時にモトが"見繕った"人達に声をかけて私の元から離れていく。
千鶴の他、さっき知り合った人達は皆、モトに声を掛けられて行ってしまった。
「残ったのは"呪符を使ったことが殆どない"人達だね。今からやるのは簡単なゲームさ」
私の下に残されたのは、ざっと半分ちょっとの男女。
私は呪符も取り出さずに、手元を真っ赤に光らせると、残された男女はギョッとした顔を浮かべて手にした呪符を構えた。
「大丈夫だって。怪我はさせない。その代わり、君達は、私を"落とす気"でかかってきな」
不慣れながらも呪符を構えた連中を見て、ニヤリと笑った私はそう言って翼を広げる。
幸い、道場の天井は高く…私がある程度自由に飛び回れる空間は確保できそうだ。
「あっち側…そうだな。この入り口付近から…そこの"仕切りに使うカーテン"がある所までを制限区域にしよう。大体、デカい体育館の半分位だね。そうしてモト達の方までは行かない様にする」
私は呪符を構えて緊張度合いを高めていく連中にルールを示していく。
今からやるのは、私にとっては遊びでしかないが…彼らにとっては"本気の狩り"だ。
「呪符は、あるだけ使っていい。私は君達を適当に"攻撃"するから、それを防ぎつつ、空飛ぶ私を"落とす"んだ。私の攻撃は痛くも痒くも無い位に抑える、だから何度当たったって良い。逆に、君達の攻撃が私に当たれば、私は負けを認めて終わりだ…そう、この中の誰かが1発、私に攻撃を当てるだけで良い。ルールは分かったかな?」
そう言って、皆が頷いたのを見て私は翼を羽ばたかせて宙に舞う。
ざっと3メートルほど…そこそこの高さだ。
そこから皆を見下ろした私は、手に込めた念を発散させて、"合図"代わりに周囲を赤く光らせると、皆に向かってこう叫んだ。
「さぁ!狩りの時間だ!1発で良い!私を"墜として"見せな!」
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