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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
伍章:境界線上の妖少女(上)
207/300

207.こんなにも子供がいるのかと、ちょっと驚いている自分がいる。

こんなにも子供がいるのかと、ちょっと驚いている自分がいる。

"防人元"の使いだと言う子供の姿をした妖の後をついていく私達は、やがて防人本家の"大講堂"に通されて、中の様子を見て驚いた。


「こんなに居るんだな。同年代は少ないけどさ」

「全国に幾つ家があるかって話だもんね。でも、埋まる位居るんだ」


大講堂の作りは、歴史の教科書とかに出てきそうな大層な作りをしている。

何と言えばいいのだろうか、国会議事堂?そんな感じ。

中央に話す人が立って、それを円形に囲む席…

装飾は茶色系で纏められて、線香の匂いが鼻に付く独特な空間だ。


私達は空いていた一番前の隅っこの席に並んで座ると、周囲を見回して異様な光景を目に焼き付ける。

同年代の子もチラホラと見えるが、殆どは小学生か、それ以下の小さな子供だ。

全員防人だから当たり前のことだが、白菫色の髪を持った子供ばかり…

こうも白髪だらけだと、少し気味が悪い。


「これで集まったみたいじゃな」

「えぇ、元は来ないんですか?来るとか言ってましたけど」

「まさか、口だけで元々来る気無いんだ。"いつも通り"声だけさ」

「全く…出不精具合も治りませんねぇ…」

「何時もの事だろう」


講堂の中心で話し合う五人の"妖達"を他所に、ざわざわと騒めきたっている大講堂。

今回の"外人騒ぎ"で子供たちの交流も進んでいるのか、あちらこちらでグループみたいなものが出来ている様だ。

私達もその中の一つ、普段の様に"集団の中で浮く"事無く、"数多の防人家系の子供"として、この場に良く馴染んでいた。


「千鶴はこの中に、どれだけ知ってる顔があるの?」

「そんなに多くないよ。付き合いすら無い家が多いんだもの」

「なるほど。私は…北海道の家の子は何となくわかるけど、それ以外はサッパリ」

「そんなもんでしょ。どいつもこいつも変わらないさ」


私の右側にはモト…左側には二寺さん。

二寺さんと言葉を交わした私は、周囲からの視線を感じて僅かに背筋を凍らせる。


「沙月はホラ、例外だと思うけどな?去年何度か暴れたせいで有名だぞ?」

「なるほど、背中の寒気はそれが理由か」

「沙月、妖力も強いしね。妖と間違われてるんじゃない?」

「まさか」


変な注目の浴び方だ。

私は視線を感じてからは、なるべく周囲を見ない様にしつつ、僅かに身を縮こまらせた。


「静粛に!!」


その時、中央にいた妖の1人が大講堂に声を響かせる。

マイク無しでこの声量…この迫力…

私達は全員が一斉に黙り込むと、背筋を正して声の方に注目した。


「集まってもらったのは他でもない!今、京都の街は大混乱の最中にあり、皆の親は街へ出払ってしまっていることであろう!」


現状の共有から始まった謎の集会。

私が小声で「子ども相手に何話す気だろうね?」と呟くと、左右から脇腹を叩かれた。


「そして今、時代は激しく移ろう時!我らが頭首防人元は兼ねてから防人家系の分断に心を悩めていた。全国に散らばった防人達は、当初こそ同じ志の下で動き始めたものだったが、長い年月を経て修復不可能な溝が出来てしまった!」


5人の中で一番大きな妖の演説。

チラリと二寺さんの方を見ると、僅かに呆れた表情を浮かべている。

きっと私と二寺さんは同じ気持ち…"煽った側が言うなよ"と言いたいのだろう。

大人達のゴタゴタがいつ始まったかは知らないが、その時々で論説を変えて分断してきたのは防人本家そのものなはずだ。


「なにをいけしゃあしゃあと…」

「そんな話、俺等にされても困るだけだってのに」


その時々で主張を変えて本家の意向に従う"主流派"、妖の殲滅を主張する"急進派"、妖との共存を主張する"穏健派"と、今はこの3派閥のゴタゴタがあるはず…

元々は全て、時代時代で防人本家が唱えてきた主張で…

それに現実的な利権の争いだなんだとか、色々あるのだと聞いているけれど、詳しい事までは良く分からない。


「そして今、京都の町に大人が散らばり、暫くここには子供しか存在しない。事件については案ずる必要は無い!じきに収束する。だが!子供達しかいないこの状況!関係改善に活かさぬ手は無いだろう。そこでだ!今から"レクリエーション"を行う事をココに宣言する!」


仰々しい言いざまだが、要は私達がしていたみたいな馴れ合いをしようとのお達し。


「子供向けにしちゃ、ハードじゃねぇか?」

「ま、良いんじゃない?私達まで親たちの真似して争う必要も無いでしょうし」

「沙月の考えに賛成。言いたいことはあっても、ねぇ?」


私達は無言で顔を見合わせて肩を竦め遭うと、大講堂に備え付けられていたスピーカーが嫌な反響音を鳴らした。


「聞こえてるよね?」


スピーカーから聞こえてきたのは、妖の様に甲高い感じの、男の声。

一瞬ざわつきかけた私達だったが、スッと静まり返った。


「防人元だよ。顔見せできなくて申し訳ない。話は今、言った通りだ。"レクリエーション"に興じてもらおうと思っている」


落ち着いた口調。

私達はスピーカーから流れて来る"頭首"の声を聞き逃すまいと、ジッと耳を澄ませる。


「何をやるか…それは、こちらから"お題"を出そう。皆はまだまだ若い。年もバラバラだから、その時々に合った"お題"を出す。それは、周囲と協力して初めて完遂出来るお題だ」


防人元はゆっくりと、分かりやすい声色でそう告げると、大講堂の中心にいた妖達が私達全員の顔を見回しながら、用紙を配る準備を始めた。

どうやらその用紙に"お題"とやらが書かれているらしい。

全員分ある様には見えないが…"周囲と協力"させるためだろうか。


「この先、時代は変わっていく。我々防人は、時代錯誤な組織になってしまったという自覚がある。それを是正したいところだが…まぁ、君達はまだまだ若い。是正する前に"勉強"も必要だ。防人にしか出来ぬ"特権"を使いこなす勉強をしてもらう所から始めようと思ってね…」


私は引きつった表情を貼り付けたままスピーカーの声の続きを待つ。

なんとなくだが、これから私達が何をさせられるのかが想像できてしまった。


「"詳しい事"は"お題"を読んでくれ。期限は2日後…大人達が"街中の騒ぎ"を収束させるまでだ。今回は交流が主だから、お題を全て達成する必要は無いが…全て乗り越える者が出る事を期待してる」


そう言って、スピーカーからの音が途切れた。

それと同時に、前に立っていた妖達が動き出し、私達に用紙を配り始める。

先頭で座っていた私達は真っ先に用紙を受け取り、そこに書かれてる"お題"に目を通そうとしたが…

用紙を配る妖が、私の前に立ち止まったために、私達は一度彼の方に顔を向けた。


「入舸沙月だな?」

「えぇ」


妖のお目当ては私らしい。

口元を引きつらせながら答えると、妖は私をジロリと見回して目を細め、そして、私にこう告げた。


「お前達の様な、"後少しで大人になる"者には少し特殊なお題が出されている。入舸沙月、お前には同年代の者達を取りまとめる役割を頼みたい。詳しくは、紙に書かれている内容を見てくれ」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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