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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
伍章:境界線上の妖少女(上)
204/300

204.マサカ、サイショカラコウナルトハオモワナカッタヨ。

マサカ、サイショカラコウナルトハオモワナカッタヨ。

毎週の様に京都へ通って"修行"して大正解だった…

脳裏で僅かに残る"人間"の部分でそう思い返した私は、自らの考えを笑い飛ばすと同時に腕を振るった。


「ナニヲッ……!!!!」

「ナッ!!」「ソンナ…!!」「クソッ…!!」


腕と同時に開かれた翼。

翼を開いたと同時に周囲に散らばった羽根は、"たった今"斬り裂いた外国人の血に汚れながらヒラヒラと落ちていく。


「オマエラ!シバラク、アバレルゼ!マキコマレナイヨウニカクレテナァ!」


両手で二匹の外人を斬り裂いた私は、呆気に取られた周囲の連中を他所にそう叫ぶと、トンと地面を蹴飛ばして舞い上がる。

上空へ舞い上がり、少し離れたところで私を見て、唖然とした顔のモトの方をジロリと見やると、私は"私に戻って"こう叫んだ。


「モト!"私は私のまま"だ!皆を連れて向こうに戻って、異常を教えてきて!ここの"掃除"は私に任せてくれていいから!」


妖の姿から放たれた日本語での叫び声。

妖の声色…甲高い、鳥類の様な声色で放たれたその言葉は、モト達"同年代"をゾッとした表情に染め上げたが、モトはすぐに私の意図を察して手にした呪符に光を宿した。


「分かった!沙月!後は頼んだぞぉ!」


モトの返答…私はニヤリと笑ってそれ以上何も言わない。

モトの手元で眩い光を放った呪符は、辺り一面を真っ赤に染め上げて轟音と閃光を放ち、妖達の視界と聴覚を奪う。

フワリと上空で漂ってそれを眺めた私は、モト達が問題なく逃げ始めたのを見ると、眼下で何かを取り出した外人妖達を見やって表情を消した。


「アブナイモノ、モッテヤガルナ」


そう呟いた瞬間、ヒュッと上空で位置を変える私。

その刹那、辺りをつんざく銃声が響き、私がいた場所を鉛玉がすり抜けて行った。


「マメデッポウゴトキ、オトサレルカヨォ!」


連中が取り出したのは、拳銃というやつだろう。

この異境ではもちろん、日本でもまず見かけない得物。

異境の妖達は、銃の発砲音に驚いて次々と通りから逃げていく。

狙われている私は、人の目なら到底捉えきれない銃弾を"見て避けながら"急降下すると、とりあえず目に付いた男に向かって腕を振るった。


「ッ…!」


爪で一裂き。

地面に足を付けて、再び地面を蹴飛ばすまでの短い間で、男の首は体から離れてポロリと地面に転がっていく。

私はそれを見ることなく、次の標的に向けて滑空し始めた。


「ば、化物だぁぁぁぁぁぁ」「殺せ!いや、無理だ!逃げろ!」


日本語の悲鳴が聞こえてくる。

残った食人鬼達…見た目は完璧に外国人なのだが…ハーフなのだろうか?

私は脳の片隅でそんなことを考えつつ、銃を乱射してくる連中の首を次から次へと落として回った。


「コレデ、ムッツ。ナカマ、ヘッテクゾォ?ドースルゥ?…」


通りの建物の上に登って、通りのあちこちからわんさか出てきた"外人"達を見下ろして煽りを一つ。

私の爪に"引っ付いてきた"誰かもわからない女の首を剥がしてポイと捨てると、下に集まった連中は一様に顔を青褪めさせた。


「ハナシガシタイナラ、ウチニ、クレバイイ。コンナ、バショジャア、ナクテヨォ…」


カシャカシャと、爪にこびり付いた血肉を剥がすと、私は体内の妖力を混ぜ合わせて両手を金色の光で包み込んだ。


「マ、ココニキタナラ、カエサナイ。コロシテ、ココノレンチュウノエサニスルカ…カクシテ、マワルダケ…」


そう言って、屋根を蹴飛ばし宙に舞う。

それを合図にしたように拳銃の銃弾が次々に放たれたが、私は器用に飛んでそれらを回避し通りに降り立った。


「アタラネェヨ、タコ!」


外人たちのど真ん中に降り立った私。

一様に、この異境に"紛れる"格好はしてきたようだが…

その顔の作りと髪色のせいで、"外来種"なのは一目瞭然だ。


「アッ…」「クソッ…」


銃口が私に向けられたが、外せば"味方"にあたるだろう。

降り立った私に銃を向け…そして引き金を引くのを躊躇した連中を他所に、私はニヤケ顔を貼り付けたまま動き出す。


「ソラ!」


トンッ!と地面を蹴飛ばして間近に立っていた女を"隠し"、そのままの勢いで近場に居た男を八つ裂きにしてから"隠してやる"。

あっという間に2人が消えた…それだけで周囲からは悲鳴があがり、やがて何かの糸が切れたかの如く銃が火を噴き始める。


「アハハハハハハ!!!」


放たれた弾は、私の体を貫かない。


「やめろ!撃つな撃つな!!!あぁぁぁぁぁ!!!」

「くそ!クソ!!!ちくしょぉぉぉ!!!」

「うわぁぁぁぁ…」

「あがぁっ…!!!!!!!!」


通りの店の壁に弾痕を残したり…味方を撃ち抜いたり。

通りのど真ん中…私の周囲で阿鼻叫喚…軽い地獄の様。

私はその中で軽々と足を動かし、次から次に、目に付いた外人どもを金色の光に包んで"隠して"回る。


隠された連中が何処へ行こうかなんて知った事ではない。

まぁ、所詮"食人"するだけの力なき妖…向こうで生きて行けるわけもないだろうが…それは、私達"防人"が気にする事では無かった。


「サァ…ノコッタノ…オマエラダケ…」


私の周囲に集る外人たちを次から次に隠して回り、あれだけいた外人も遂に残すところ後2人。

通りの、それも少々離れたところで私に銃を向けている男女は、私と目が合っても引き金を引くことをせず、顔を青褪めさせてただただ震えているだけだった。


「ヤリカタ、マチガエタナ。ジゴウ、ジトクサ」


翼を振るい、腕を振るい…体中についた血を振るい落した私は、そう言って2人の方へ近づいていく。


「ドウスル?シヌ?…ドコカ、トオクヘ、キエルカ?エラバセテヤルヨ」


カシャ!と両手の爪を合わせてかきならしながらそう言うと、2人は遂に銃を放り投げて私に背を向ける。

私は大笑いをしながら彼らを追いかけようと足に力を込めたが…

彼らの行く先に見えた人影を見て、ふーっと溜息を吐き、力を抜く。

数秒後、逃げた先で派手な轟音が鳴り響き、真っ赤な閃光が輝き…

瞬きを幾つかするうちに、逃げた男女は"防人"の妖2人に捕らえられていた。


「沙月様、お疲れ様でした。異境の騒ぎは私どもが引き継ぎます。妖の領分ですからね」


2人のうちの1人、沙絵が私の方にやってきてそう言い、膝を付いた。


「外国人…何処の手先かはまだ分かりませんが、京都のあちこちで"騒ぎ"を起しておりまして…至急、本家にお戻りください」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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