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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
伍章:境界線上の妖少女(上)
203/300

203.行かない方が良いと思う度、進む足が止まらなくなるのは何故だろう。

行かない方が良いと思う度、進む足が止まらなくなるのは何故だろう。

思っていることとやってることが噛み合わなくなる時、私の心臓は早鐘を打つものだけど…だからと言って"逃げ"るような真似はしない。

去年はこれのせいで酷い目に遭い続けてきたというのに止められない…

私は苦笑いを浮かべて脳内で自虐を重ねると、前を歩くモトの肩に手を乗せた。


「モト。ここからは私が先頭に立つから、案内宜しく」

「あぁ。二寺さん達は俺の後ろに…沙月、目的地は、もうすぐそこなんだ。遠くにある看板見えるか?」

「あぁ、なんだ、アレか」

「そう。だが…そこが厄介な現場になってるみたいだな。どうする?」

「あー…」


集団の先頭に立った私は、モトの言葉に反応しつつ、外国人が走って来た方へ目を向ける。

モトの言う通り、異境の中心街はもうすぐ目の前で…

目的地の和菓子屋も、もうすぐそこという所まで来ていたのだが…

丁度、目的地の辺りに人混みが出来ていて、何か"モメている"様子だった。


「出直す?」

「まぁ、それでも良いと思うけど。二寺さん、この用事って急ぎなの?」

「急ぎ…なのかな。明日までにあれば良いからって言われてるんだけど」

「今何時だっけ?」

「んー…僕の時計で4時前」

「最高…時間無いじゃん」


私が呆れ顔を浮かべてそう言うと、近くで私達と同じように揉め事を眺めていた妖が私に気付いて声をあげた。


「アッ!エカキ!…オニミタイダカラ、キヅカナカッタ」

「え?あぁ、どうも」


通りで店をやってる妖…私は彼の事を知らないが、向こうは私のことを知っているらしい。

二寺さん達の驚いた声をバックに、私は声をかけてきた妖の方に身を寄せた。


「あれ、何があったのさ?」

「ワカラナイ。タダ、サッキカラ、モメテル」

「そう…私達、あの店に用があったんだけど…」

「ソウカ、ダガ、アノモメゴト、オワラナイト…」

「だよねぇ…」


何か情報でも…と思ったが、大した情報は得られない。

私ははぁ…と深い溜息を付くと、着物の内側に仕込んだ"妖になれる呪符"に手を当てた。


「使わないで済めば良いと思ったけど。アノ人数じゃなぁ…」


ボソッとそう呟いたのち、皆の方を振り返る。


「連中の揉め事は私に任せてよ。軽く散らしてくるから、終わったら呼びに来る」

「呼びに来るって…沙月さん、まさか1人で行く気か?」

「えぇ、そのつもりだけど。モト、見張り役お願いね?」

「あぁ。任せた」


長々と話すのは一旦後だ。

モトに二寺さん達を任せると、私はスタスタと先を急ぐ。

こういうモメ事は、サクッと終わらせてしまうに限るのだ。


「ナンダアレ」

「ワカラン」

「アッ、エカキ」

「エカキ…ヒサビサ」


歩みを進めると、段々と周囲の妖達の声が聞こえるようになってきた。

時折私に気付いた妖に声をかけられるが、私はそれに反応を返して…そしてシーっと指を口に当てて合図を回す。

そして、誰にも邪魔をされる事なく"モメ事"の中心地にやって来た私は、何か良く分からない言語で喚く妖達数名の背後に立って、コホン!と咳ばらいをして注意を引いた。


「ナンダ!!」


バッと私の方へ振り返る妖達。

その向こう側では、絡まれていた和菓子屋の店主らしき妖がホッとした表情を浮かべている。


「アンタ方"外国人"だろ?ここは外人禁制でね。退場願おうか」


私より顔2つ分背の高い妖達を見上げてそう尋ねると、連中は私の顔をジッと見やり、そしてニヤリとした笑みを浮かべた。


「ソウダナ、ヨウガアッタノハ、テメェダ」


さっきまでの、カタコト日本語での喚き声と違い…"妖言葉"で答える外国人。

パッと見、異境に迷い込んだ外人にしか見えなかった彼らの姿は、そう言った刹那、瞬時に化物の形態へと姿を変えた。


「イリカサツキダナ。オマエニ、ヨウ、アッタ。トラエヨト、イワレタ」


食人鬼の姿に変わった身なりの良い外国人…周囲の妖からは悲鳴があがる。


「オトナシククレバ、キガイハクワエナイ」


私を囲ったグールが勝ち誇ったような声色で告げた。

周囲を見れば、この通りには既にグール達が紛れていたらしい。

安全だと思っていたモト達の所まで…人畜無害な妖に扮していたのであろうグールたちが睨みを利かせていた。


「変装まで出来んのか。大した連中さね…」


私はどこか他人事のように呟くと、モト達の方に目を向ける。

モトが呪符を光らせてグールを睨み返し、鍔迫り合いの様相を呈していたが…

数的不利なのはこちら側、長くは持たなさそうだった。


「仕方がない…体も動かしたかった所だし、馬鹿に付き合ってやるかぁ…」


状況を把握しきった私は、何処まで行っても"運がない"自分を呪いながら、着物の袖に手を入れる。


目当ては"妖化"の呪符…

それに手を触れ、念を流した瞬間、目の前に立ったグールの目は大きく剥かれ…

金色の光に包み込まれた私の意識は瞬時に"塗り替わった"。


「スコシ、"アソビ"ニ…ツキアッテヤル!シナズニ、ツイテ、コレルカナ!?」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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