202.この年で親戚が増えた気分を味わうのは、ちょっとムズ痒い。
この年で親戚が増えた気分を味わうのは、ちょっとムズ痒い。
親戚…防人家系なら、少なくとも"他人"ではないが…こう、今まで"会ってこなかった"同世代というのは、なんだろう…不思議な感覚しか感じない。
親戚のおじさんに同世代の子供がいると発覚した感覚…なのだろうか。
防人本家に近い"洛中"家系の二寺さんに、三条君に雲丹亀君…そして南大路君。
私とモト以外はお面と耳飾りを付けて"異境酔い"しない様にしているから、傍から見ればなんとも奇妙な連中に見えるだろう。
私達は妖からの奇異な目線を浴びつつ…適当に前後に集団を分けて異境の中心街までの路を歩いていた。
「親からお使いを任されて、で、丁度よかったから私達に会いに来たって訳だ?」
「嫌味だね。鶴姉の言葉にそれ以上も以下も無いんだけど?」
「だったら懐に飲んでる金色の呪符を仕舞ってよ。見境無く襲わないからさ」
前にはモトと二寺さんと雲丹亀君。
こちら側には三条君と南大路君…という分け方なのだが、どうも組み分けを間違えたような気がする。
共にモトよりも大きい男共…私の軽い冗談に過大反応を見せたのは三条君だった。
大人しめの文学少年といった風貌なのだが…どうも、私への風当たりは強い様だ。
「まぁ、落ち着け2人共。行き成りそんなんじゃ仲良くなれるもんもなれないぞ」
ピリ付いた私と三条君の間に入ってくれたのが南大路君。
人畜無害そうな…印象に残らない男だが、この中で一番"大人"なのは彼だろう。
彼の言葉を受けて私は肩を竦め、三条君は着物の裏で光らせていた呪符から手を離した。
「それに、入舸さん。成寿の肩を持つわけじゃないが、"この間"やられた身としてはちょっと緊張するんだ。それ位は許してくれ」
「この間?…って何時のだろ」
「半年前だな。異境帰りの入舸さんが暴れた事あっただろ?それでな、俺達2人、骨折してるのさ」
「あー…なるほど…なるほど…その節は、ごめんなさい…」
南大路君からの言葉に威勢を失う私。
身を縮こまらせると、南大路君は小さく口元を笑わせて首を振った。
「終わったことだけどもな。それに、気付いてるか知らんが…今も姿が変わってるぞ?」
「え?」
優しく笑ってくれた南大路君の指摘を受けて、私は自分の頭に手を当てる。
「なるほど、異境だからか」
狐耳も翼も生えていなかったが、おでこの辺りに鬼の角が生えていた。
「でも大丈夫、心配しないで。今の私は呪符を使わないと妖にならないから」
しっかりと生えている角を暫く触った後でそう言うと、2人は僅かに引きつった顔を浮かべて頷いてくれた。
「で…この、お使いなんだけど」
話が一旦途切れたところで、気になっていた本題へ。
暫く歩いて、異境の街の端までやって来た私達。
お使いの"目的地"となる中心街までは、もう少しだ。
「紙に書いてる物を買ってこいって事?」
私は二寺さんから渡された紙を見ながら2人に尋ねる。
用紙には、中心街の通りにある"和菓子屋"で幾つかのお菓子を買ってこいとの指示が達筆な字で書き込まれていた。
「あぁ、そうらしい。と言っても、俺達は異境に行ったことすら無かったんだけどさ」
「そうそう。でも、僕達に渡されてね。紙とお金…行けば分かるからって」
「なんて適当な…ま、それなら私達に声をかけて正解だね。私ってよりはモトか」
そう言いつつ、紙を持った手をヒラヒラさせて間を置いて…僅かに眉を潜めた。
「でもさ、異境のお菓子なんか使って何すんだろ?食べるためでも無いんでしょ?」
一番気になっていた所を尋ねると、2人は何とも言えない表情を浮かべる。
「僕も良く分かってないんだよね。祭事に使うらしいって事くらいか。徳兄は?」
「俺も同じ。そもそも、そんな祭事あったっけ?って位でな」
「ふーん。あ、変な意味に取らないで欲しいんだけど…そっちの家の行事ってさ、何か私の家のと違ったりするの?ほら、本家に近い家だし、洛内の家特有の~とかあったりさ」
「どうだろうね?何かあれば全国から集まるって感じだから、変わらないと思うけど」
「そうだな。地域それぞれって感じだし。京都の家は本家に集う以外でやらないはずだ」
「へぇ…」
防人本家に近しいからと言って、末端のウチと大差は無いと…
私は紙を折り畳んで着物の袖に仕舞いこむと、肩を竦めて首を傾げた。
「じゃ、何の為かは分からず仕舞いか。祭事に混じる事も無いでしょ?」
「うん。それに、今回の頼み主は防人本家だしね」
「本家だって!?」
「あぁ、千鶴のばっちゃから貰った使いなんだ。本家からの頼みだって」
「なんだってそんなのを異境に行ったこともねぇのに託すかな…」
「通過儀礼?だとか言ってたよ」
「幾ら異境が危険だ何だって言っても、入らない訳には行かないだろうけどもさ…」
私は頭をわしゃわしゃ掻きながら、要領を得ない"本家の頼み"にモヤモヤ感を募らせる。
別に私の身がどうこうなろうってわけでは無いが…こう、もう少しやり方があるだろうに。
「ま、"面倒事"にならなそうなら、なんだって良いんだけどさ」
そう言って前に向き直ると、丁度遠くから走ってくる人影…妖の影が見えた。
「っと、端に寄ろっか」
何てことの無い急いでる人…路を半分ほど塞いでいた私達は、自然と端に寄ってその影が過ぎるのを待つ。
「ん?」
何気ないすれ違い…のはずだった。
最初に違和感に気付いたのは、先頭を歩いていたモトだ。
「沙月」
「ん?…え?」
モトに呼ばれて、彼の指さす方を見て…私も違和感に気付く。
その違和感の主は、向こうから走って来た妖。
ソイツは私達の横を颯爽と通り過ぎて行って、すぐに角を曲がって姿を消した。
「今の妖がどうかしたの?」
「あぁ、沙月。気付いたよな?」
「あー、そうだねぇ…」
今の妖に違和感を感じなかったのは、私とモト以外の全員。
彼らは普段の異境を知らないから無理も無いが…異境で少しでも過ごしたことがあれば、あの姿は違和感でしかない。
今通って行った妖は、日本の妖じゃない…あれは、西洋の妖だ。
「まだ騒ぎになってないけど、気を付けようか。"外国人"は異境に入れないハズだからね」
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