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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
幕間:その肆
197/300

197.こんなことをするから、誤解されるのだと思うけど…

こんなことをするから、誤解されるのだと思うけど…

そういうのは勝手に誤解していればいいのさ。

脳裏に浮かんだ過去の嫌な思い出に口元を歪ませると、すぐに首を振って振り払った。


「大丈夫か…?」

「なんとも無い」


事件から丁度1週間、金曜日の放課後。

正臣との約束通り…というよりも、私の罪滅ぼしを多めに含んだ、ちょっとの間のマネージャー業の帰り道。

中間テストが迫っているものの、大会前と言う事もあってか、最後まで残って練習に励んでいたものだから、学校帰りにしては随分と遅い時間になっていた。


他に生徒が見当たらない、空気輸送に近いバスに揺られて、後は家に帰るだけとなった時。

私は内から上がってくる"乾き"に悩まされていた。

"事件当日"から1週間は無かったのだが、ここにきて急に嫌な感覚が沸き上がってくる。


「大分、傷治って来た?」


それを気とられぬ様に正臣に話を振ると、彼は小さくなったガーゼに手を当てて頷いた。


「まぁ、あと少し」

「そう。良かった」


気とられぬ様…と言いつつ、話題の選び方が不味いのはどうしようもない。

私は目を泳がせながら正臣の頬から目を逸らすと、今度は正臣が私の方に顔を向ける。


「相変わらず隠すの下手だな」


そう言われて、ビクッと肩が震えた。

渠波根にも言われたが、腹芸とかその辺は、される方もする方もダメダメらしい。

私は正臣の方をチラリと見やると、口元を引きつらせて首を傾げる。


「誤魔化せる訳ないだろうに」


コンと指で額を小突かれる。

それを大袈裟に受けた私は、苦笑いを浮かべ、小さく両手を上げた。


「すいません、お腹が減りました」

「また変に足掻いたな」

「すみません、察してください」

「はいはい…と言っても、俺に何が出来る訳でも無いんだけどね」


正臣はそう言うと、顎に手を当てて思案顔になる。


「いや、大丈夫だからね?そんな、ちょっとキてるだけで」

「ん…うん。まぁ、そうなんだけど」

「何さ?」

「あれから呪符触ったりした?」


何かを思いついた様な正臣。

私は目線を左上に上げて思い返せば、ついこの間、調理実習の時に"脅し"紛れに使った位しか思い当たらない。


「千羽君の記憶ぼやかすのにちょっと触れた位?」

「ふーん…」

「どうしたのさ」

「いや、なんか、思いついたことがあるんだけどさ…今から沙月の家の道場借りれない?」

「…正気?」


突拍子もない提案に私は怪訝な顔を向けた。

何かに夢中になってる時、まるで意図が読めない事を平気で口走るのは…

まぁ、たまにあるのだけど、今回のはちょっと何言ってるか分からない。


「ダメ?」

「別に良いけど。明日土曜日だし」


そして、そんな突拍子もない提案に乗ってしまう私も私だと思う。

訳が分からないが、断る理由も特に無い。

どうせ、家に帰った所で今日は沙絵位しか家に居ないのだし。


「こんなことしてるから、変に気を使われるんだよね」

「言わせとけばいいさ。別に、度を越してるもんでもないし」


全く同じ思考。

これだから、正臣と居ると気が楽なのだ。

私は何か悪だくみみたいな事を思いついた正臣にジトっとした目を向けつつ、スマホを取り出して、トーカーで沙絵にメッセージを送る。


「で、何を思いついたのさ」

「ちょっとね。沙月さ、前の格好にならない程度に強くなれない?」

「はぁ?」


大真面目な正臣に、「え?」という成分を多めに含んだ顔を向けた私。


「どうしたってまた」

「先週の木金は元気だったでしょ?」

「うん」

「確かその前に1回、呪符を使ってたよね?」

「水曜日?…あー、うん。使ってた」

「それじゃないかなって」

「なるほど」


正臣の意見は、一理ある様な気がした。

だからといって、金曜の夜に試すような必要は何処にも無いが。


「やっぱりさ、試すの明日じゃダメ?」

「動き足りないんだよね。明日出かける予定あるし…」

「あるし?」

「正直、この間のがまだ抜けきってない内にもう一回やりたい」

「はぁ…?」

「そりゃ…怖かったけどさ。あれ、凄く良かったなって」

「正気を疑うよ?ホント…正気?」


呆れ顔を彼に向けた私は、少し悩んだ後で頷いた。

拒否しようと思えば出来るけど、顔のガーゼを見てしまえば、そんな気は一瞬で薄れてしまう。


「沙絵にも付き合ってもらおう。万が一があっても嫌だし」

「ありがと」


そう言って笑みを浮かべる正臣。

私は彼を見て、僅かに見える首筋を見て唾を飲み込むと、窓の外に顔を向けた。


「ま、いっか。ずっと見てるのも暇だったし」

「動いても良かったのに」

「道具も何も無いじゃないの」

「確かに…っと、そろそろだ」


そう言ってる間に、家の近所までやってきていたらしい。

バスのアナウンスが、最寄りのバス停の名を告げた。


ボタンを押して、降りる準備を始める私達。

部活道具がある分正臣の方が大荷物だから、ちょっと大変そうだ。


「持とっか?」

「そんなカッコ悪い真似出来るかって」


冗談めかしに言うと、思った通りの反応を見せてくれる正臣。

クスッと笑っている間に、バスがゆっくりと止まり始める。


「さて、1時間ちょっとは出来るかな?」

「それ位じゃない?私次第」


止まってから席を立つ私達。

定期を見せてバスを降りて、ここから私の家まで、徒歩10分程度だ。


「さて、まずは山登りでアップしましょうか?」

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