189.そんなつまらない理由で、この姿にされても困る。
そんなつまらない理由で、この姿にされても困る。
男から聞いた理由は、本当にしょうもなく…私は呆れ顔と共に深い溜息を吐き出すと、突き刺した上半身をヒョイと宙に浮かせた。
「ったく…」
両腕を振るって両肩を切り飛ばし…
衝撃でもう一度フワリと浮いた"ダルマ"を見据えてニヤリと笑い…
右腕を薙ぎ払う様に振るって首を切り飛ばす。
「ツマラネー理由で私を呼び出すなよ。大変なんだぜ、後始末」
残心…というわけでは無いが、腕を振るった格好でピタリと止まった私の前に、バラバラになった"死体"が転がった。
全身に返り血を浴びて、顔の辺りに付いた血をペロリと舐めれば、思っていた味が広がらず、不味い味が口内に広がる。
「うわっ…っぺ!不味~」
唾と共に血を吐き出してバラバラになった死体を見下ろす私。
それにゆっくりと腕を突き出し、手先を虹色に染め上げて、"宝石"に変えてやった。
「殺しても隠しても無駄なら、こうするさ」
蹴破った扉から美術室を出て行く。
連中が私をこの姿にした理由。
"どうしても見たかったから"
…迷惑を被る側にもなって欲しいものだ。
迷惑料は、どうしてくれようか…?
「この間より"残ってる"か?…くだらない。1人位、贄でもなきゃ、やってられないな」
血の付いた体を見下ろして、血の付いた爪を数回振るって血を落し、静寂に包まれた校内を歩き出す。
この騒ぎを引き起こしたのは、この間異境へ飛ばした2人と、私を"確かめに"やって来た黒いのが1人だ。
どいつもこいつも骨の無い雑魚ばかり…わざわざこんな所で事を起こす辺り、底抜けの馬鹿だとしか思えない。
見たところで、その光景が最期になるのだから。
「さて、私は、鬼ごっこの鬼という訳か。あぁ、角もあるから打ってつけってわけだ」
カチャカチャと爪を鳴らしながら廊下を歩く私。
人の様な足の形ではなく、フクロウの様な足…正直、歩きづらい。
ヒョコヒョコ歩きとでもいうのだろうか?ちょっと変な歩き方。
少しでも飛べればどれだけ楽な事か…
「ったく…」
4階を回り、人影一つ見つからない事にイラっときて、近くの壁に大穴を開けて、階段を降りて3階へ。
4階と同じく人の気配を一切感じない中をゆっくりと練り歩いていると、遠くから何者かの足音が聞こえてくる。
「おっ?」
降りてきた階段とは反対側の方の階段…
誰かが、駆け足で上がって来る様な足音。
私はゆっくりとその方向へ足を進めつつ、その音の主が視界に現れるのを待った。
「……」
カチャカチャと、足を踏み出す度、廊下に響く変な足音。
それが向こうから来る人にも聞こえているのだろうか?
私は血で染まった口元を歪め、両手をパッと広げてプラプラと手を振るうと、さっきので落しきれていなかった血が滴って廊下にシミを作っていく。
「案外、残るんだな」
バサバサと頭の翼も振るってみれば、白菫色の羽にも付いていたらしい血が辺り一面に飛び散った。
「そっか、閉じてたからか」
思った以上に付いていた返り血。
一回立ち止まって、血が飛び散ったのを見回して、思った以上に汚れた周囲の光景を見て、ちょっと驚く。
死体なのだから、もう少し血が無いと思ったが、そうでもないらしい。
「ほぅ…」
赤い斑点模様に見とれていた私。
「っ!!」
突然の痛み…それは背後から飛んできた何かが貫いた痛み。
背中が焼けるように熱くなり、その場に崩れ落ちた。
「ギ…っ…」
倒れることはせず、しゃがみ込むだけ…
腹部に手を当ててみれば、ジャージに焦げた跡…そこからダラダラと流れる私の血。
パッ!と振り向いてみれば、そこに見えたのは黒い影。
「そういうことか…」
体に開いた3発分の風穴を即座に治癒して立ち上がった私は、銃を手にしてこちらへにじり寄ってくる男を見据えてそう呟く。
「…!……!!…!」
何かを喚く男。
生憎、英語は分からない。
「痛てぇなぁ…おい。折角、見れたってのに、撃ってくることはないだろう?」
ピンピンしている私がそんなに意外だったのだろうか?
男はこちらに銃を構えたまま、小物の様に恐怖した顔をこちらに向けていた。
まぁ、食人さえしなけりゃ、只の人間…化け物は私の方…なのだろうが…
「ま、先に手を出したのは、オッサン。テメェだぜ?」
やれやれと両手を広げて、ピタリと動きを止めた私。
呆れた顔を彼に向けると、男の頭と同じように黒光りしている銃口が私の顔に向いた。
「はっ」
刹那、鉛玉がこちらへ飛んでくる。
そこそこ早いが…"その程度"。
「行くぞぉぉ!」
足に力を込めて身を屈め、ドン!と床を蹴飛ばし、寸でのところで弾丸を躱して男の方へ。
「!!!…!!!…!!!!」
低空飛行。
この程度なら、翼なんか必要ない。
トン!トン!と地面を蹴飛ばし、小刻みに、ジグザグに"廊下"を飛んで行く。
「そらそら、当たるかよ!そんな豆鉄砲如きがよ!」
右に左に銃弾を"視て"躱す。
何発か、勢いで中途半端に開いた翼を貫き"羽"をまき散らしたが、その程度、痒みの1つも感じなかった。
「おっと、打ち止めか?」
銃弾が突きたのか、銃を捨てて絶望に顔を染める外国人。
パニック映画に出て来そうな、哀しく絶望に染まった顔。
…そんな、愉悦に浸れそうな顔が見られるとは思わなかった。
「人間風情が、背伸びしたって本物には敵わねってことさ」
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