158.2人で出かけてるのに、デートな感じがしないのが不思議だ。
2人で出かけてるのに、デートな感じがしないのが不思議だ。
若い男女、それも高校生が2人揃って動いてる時点で、その手の話に興味を示す同級生ならすぐに煽ってくるものだが…
私と正臣の組み合わせでは、今の所、それが殆ど起こらない。
諸々の面で気楽というか、変に否定して回る羽目にならずに済んで良い事だと言えば良い事なのだろうが…ふと冷静になった時、それはそれで虚しいと思った。
「ちょっと数が多いなぁ…」
「歩きっぱなしだよね。明日まで伸びるかも…まだ気配、感じるでしょ?」
「あぁ、凄く多い。どれもこれも弱いのばっかだから楽だけど、ちょっと頭が痛いな」
「頭痛薬持ってるけど、居る?」
「これ食ったら貰おうかな」
土曜日のお昼過ぎ、私と正臣は適当なファミレスに入ってお昼を共にしていた。
私は"表行き"の格好に、地味な私服姿で、正臣も以下同文。
昨日あたりから急に増えた"悪霊"を祓う為、朝から歩き詰め、仕事詰めで、今は休憩時間。
それぞれ注文した料理を前にして、つかの間の休息に体を休ませている。
午前中だけで祓った悪霊の数はざっと67…
用意してきたお祓い用のお札の枚数は、その倍以上あるし、弱すぎれば正臣本人が祓えるから弾切れの心配は無いが…普段の"何も無さ"具合を考えれば、異常とも言える数だった。
「街中だけだよね。こんなに居れば、心霊話が1つや2つ出てきそうなものだけど」
「出て来てるらしいよ。沙絵が言ってた。まぁ、実害が無いから可愛いものだろうけど」
「これもアレ?この間の、雨次さんの件絡み?」
「そうらしい。だけど、何がどうなってるのかまではサッパリでさ。ウチの方でも調べてるんだけど、裏に居る妖の影も形も見えないね」
私はそう言いながら、ハンバーグのプレートに箸を伸ばす。
少々大きめなそれを適当に箸で千切って口に入れると、普通に美味しいハンバーグの味が口内に広がった。
10月最初の土曜日、周囲に目を向けてみれば、どこまでも"普段通り"の様子が見て取れる。
何を目的としているかも分からない観光客の姿に、地元の人間…そして、札幌辺りから来てそうな人達…そう言うのが交じり合った光景。
私は周囲を見て溜息をつくと、窓の外に目を向ける。
昼間は肌寒さを感じない、穏やかな秋晴れの日。
道行く人々は夏と秋の中間の様な装いをして歩いていて、車道には車通りも多く…何処まで行っても、"いつも通り"な光景が見えていた。
「ホントごめんね?土日も部活でしょ?」
「気にしないでよ。その辺の折り合いは付けてるんだし」
「次期主将が居ないのは問題なんじゃない?」
「全然、なるようになるさ。それよりも…」
スパゲッティをフォークに巻きながら、正臣は私の背後を指す。
ハンバーグを持ったまま、何気なく振り返ると、店の入り口の方に黒い靄が浮いているのが見えた。
「休ませてくれないらしい」
「ったく…」
靄は一直線に正臣の所に飛んできては、彼に憑りつき…
その度に私が手にしたお札によって祓われていく…
当たり前の光景になってしまった流れ作業、私は小さな鞄から新たなお札を取り出すと、それを上着のポケットの中に突っ込んだ。
「幽霊とやり取り出来るんだよね」
「あぁ」
「なんか言ってこないの?こんなに多い理由」
「全く。それどころか、向こうも…何人?かは困惑してたよ」
「困惑?悪霊が?」
「小樽で死んだ人間なんだろうな。こんなに居るわけねぇべさ!って怒られてね」
正臣はそう言ってクスッと笑う。
笑うに笑えない状況なのだが、私も彼に釣られてクスッと笑ってしまった。
「意思疎通出来ないのもいるんだよね。支離滅裂な感じでさ」
「そっちが普通だと思うけど」
「そうでもないんだ。大抵は話が通じるぞ?」
「そうなの?」
「あぁ。悪霊っつってもピンキリみたいらしいな」
「ピンキリって。まぁ、そう言うのかな」
「まぁ…ともかく、そっちから聞き出すってのは考えつかなかったから、午後から…ん?」
引き続き幽霊トーク…喧騒の中のボックス席で話しを続けて、食べ終わる間際。
不意に正臣が何かに気付いた様な反応を見せる。
私は首を傾げて正臣の視線の先を辿ると、私達と同年代らしき数名の男女の姿が見えた。
「羽瀬霧君…と…入舸さん?やっほー」
店員さんに案内され、集団の先頭に立っていた女の子が私達に気付いて話しかけてくる。
私服と髪型と化粧のせいでパッと分からなかったが、クラスメイトの三ノ輪さんだった。
「三ノ輪さん。珍しい所で会ったね」
三ノ輪さんの後ろに居る男女4人も、皆クラスメイト。
私のクラスの中では"イケてる"側に居る彼らは、私達の隣の席に案内されて座ると、私達の方に顔を向けた。
「よぅ、相変わらず仲いいよな」
「ね、邪魔しちゃダメだよ?」
「しねぇっての」
私は彼らの反応を見ながら苦笑いを浮かべながら、三ノ輪さんの方に目を向ける。
「そっちは何の集まり?」
「んー、いつメン?これから明治ガラス会館に行ってくるの」
「へぇ…珍しい。観光?三ノ輪さん、小樽の人じゃないんだっけ」
「ちゃんと小樽出身!塩谷の方ね。違うのよ、入舸さんは…まぁ、知らないか…羽瀬霧君も知らない?向こうの話」
「何が?」
「なんか最近、あの近辺が心霊スポットになってるらしくって、見に行こって言ってたの」
何気ない会話から出てきた"タイムリー"な話題。
私と正臣は顔を見合わせると、何とも言えない引きつった顔を浮かべて三ノ輪さんの方を見た。
「あれ?入舸さん、この手の話苦手?」
「いいえ、全然。でも、時期も何もかもおかしいなって思っただけで」
「ね!夏じゃないのに!って感じ!まぁ、噂だろうけどさ、面白そうじゃん?」
「確かに。でも、どんな話があるの?」
「うーん、動画とか写真は無いんだけど…なんか、ガラスの置物の位置が変わってたり、不思議な音がしたりとか?普通の心霊現象みたいな、っていうと変だけど、そんなの」
三ノ輪さんの話を聞きながら、私と正臣はさり気無く目を合わせて、目で言葉を交わす。
どうやら、午後一に行くべき場所が決まったらしい。
「へぇ…後で行ってみる?」
「良いんじゃない?用事済ませて、帰り際にでも。歩いて行けるし」
自然を装ったぎこちない会話。
三ノ輪さんはそれに気付いた様子は無いが、私達は何とも言えない緊張感で一杯だった。
一般人な彼らに気付かれるほどの何かが起きているのであれば、ヤバい事になる前に対処しておかねば…
「っと…じゃ、私達はお先に」
「うん!それじゃ、学校でね!」
「またね~」「それじゃ」「うーっす」「じゃ!」
綺麗に食べ終えた皿を中央に寄せた私は、三ノ輪さんグループに声をかけて、伝票を持って席を立った。
着崩れた上着を直しながら、私は正臣の横に並んでレジの方へ歩いていく。
「こういう所で情報があると得した気分になるよね」
正臣の言葉に、私は表情を変えずに頷くと、正臣の肘をちょんと突いた。
「そうね。でも、厄介事が待ってるかもしれないと思うと…複雑さ」
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