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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
参章:消えた花火の行方
112/300

112.目的が自分だというのなら、理由は何となく想像がつく。

目的が自分だというのなら、理由は何となく想像がつく。

こういうと、自惚れてると思うが、私は防人の中でも滅多に居ない体質だから。

人でありながら"妖"に近い、人と妖の間を行き来するような人間なんて、そうそう居ないのさ。


「来るぞぉ!」


唖然とした私の左手を、八沙が掴んで引っ張った。

ライトに照らされた駐車場、私達を取り囲んでいた妖達の襲撃を"跳んで"躱す。


「ぐぅ!」

「沙月、呪符を!」

「ケッ!」


私諸共宙に浮いた八沙。

トンと飛んだ先、遠くに小樽運河が見える位高く飛び上がった今、呪符に念を込めるのに十分な余裕があった。


「食らえ!」


空中でパッと手が離される。

即座に服から引っ張り出したのは、真っ赤な靄を宿した"赤紙の呪符"、その数5枚。

眼下の妖、ニヤついてこちらを見ているだけの鬼沙を見やって、すぐに視線を"雑魚"に向けた。


パッと呪符から手を離す。

真っ赤な靄は、重力に逆らわずヒラヒラと舞い落ちた。


「八沙!手!」

「あぁ!」


爆発、爆発、大爆発。

眼下で妖達の悲鳴が響き、私と八沙は爆風に乗って公園の中に逆戻り。

そのまま、爆発を真面に食らった妖の事は棚に上げ、私達は鬼沙から距離を離す。


「どうするよ?」

「そう言っても手が無い!」

「クソ!」


着地した先は、真っ暗闇な公園のド真ん中。

適当に、公園の奥へ奥へと足を進める。


「沙絵は?無事なの?」

「知るか!」

「さっきあっちでも爆発あったよね!?」

「あぁ、クソ!」


足を進める先。

公園の最奥地。

さっき、鬼沙が現れたと同時に爆発が起きてから、何の音もしなくなった暗闇の先。


「なら小手調べだ!」


奥へ向かいつつも、八沙はそう叫んで呪符を取り出す。

手を真っ赤に染め上げ、呪符をパッと上空に投げ捨てると、私達の居る真上から、真っ赤な光が轟音と共に降り注いだ。


「ちょっと!」

「どうせヤツにゃバレてるよ!」


一瞬で暗闇が真っ赤な光に照らされる。

今の居場所は、もうじき公園の端まで辿り着く辺り。

その先、真っ赤な光に照らされた先、ウチで見かける車が止まっている様は見えたが、人影は1つも見えなかった。


「いない!」

「畜生、いい!一旦奥だ!」


そう言って、一瞬足を緩めた刹那。

私達の目の前に、真っ黒なサークルが現れた。


「いっ!」


急ブレーキ。

暗闇の中、パチパチと音を鳴らすそれから感じるのは、強大な妖力。

クルリと背後を振り返ると、未だ真っ赤な光の残響が残る空間に、鬼沙の姿が見えた。


「それ合わせて!黒3枚で!ケリつけてやらぁ!」


一気に迫る"鬼"の叫び声。

私の背中に、ブワっと嫌な汗が流れ出す。


「足をぉ!止めたなぁ!?」


再び鬼沙の叫び声、ゾッとする感覚。

即座に呪符に念を込め、左手を真っ黒に染め上げた。


「八沙ァ!」

「分かってる!」


八沙も私も同じ考え。

互いに、真っ黒に染め上げた呪符を掲げると、背中を合わせパッと呪符から手を離す。


八沙は黒いサークルに向けて。

私は、自らの足元に向けて。


爆発。


背後の爆発は八沙の作り出した爆発とかち合い、私のそれは再び私達を上空へ。


「これを読めねぇ馬鹿が居るかっての」


浮かび上がった先。

私達を待ち受けていたのは、いつの間にか距離を詰め、しかも宙に浮いていた鬼沙の姿。


最早叫ばなくても聞こえる距離。

囁くような声でも、十分に声が届く距離。


「テメェら、3枚も要らねぇや」


あっと驚く間に、私の目の前に彼の拳が迫ってきた。

咄嗟に塞ごうにも、今の私は片腕の身。

腕を前に出しただけで、鬼沙の拳を防げるわけもない。


鈍く鋭い痛みが全身を貫く。

空中で体を縮こめた私、残る1本の腕をへし折って、そのまま真っ直ぐ鳩尾を拳が貫いた。


「ッハァ!!」


肺の中の空気が一瞬にして空になり、口からは空気と共に血が噴き出る。

そのまま、フラフラと宙を漂い、墜落していく私。

視界には、勢いが衰えぬ鬼沙に、全く同じようにやられて吹き飛んでくる八沙の姿が見えた。


「ァ…ァァ…!」


墜落。


鈍い衝撃が全身を貫く。

落ちた先は、さっきまで沙絵が居たであろう、岸壁の上。

入舸の車のドアにぶち当たるように落ちた私の横に、同じように八沙が降ってくる。


「おっと、これはこれは」


目の前に鬼沙が着地してくるなり、私と八沙を見比べてニヤリとした笑みを私に向けた。


「雨さえ降ってりゃなぁ、沙月ィ、お前の見てる景色は、どうだ。覚えてるだろう?」


ゆっくりと、意識が遠のきそうな私に歩み寄ってくる鬼沙。

彼の言葉を脳裏に反響させると、私の脳裏は、すぐさま遠い昔の光景を組み上げた。

遠い昔、まだ、私が自分の力も知らなかった、小学生に上がったばかりの頃の光景だ。


「あ…や…やだ…や…めて…」

「その目だ。その目ェ。こっから見てっとよ。女の癖に案外、顔は変わんねぇもんだな!」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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