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謀殺されてTS転生した魔王の息子が、勇者の師匠になる話  作者: 善信
第九章 決戦!魔王城
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08 エリクシア VS オルブル

重武装ヘビーアームズ


 出し惜しみは無しだ!

 私はまず、オルブルの『奈落装束アビス・フォーム』を削るべく、『重武装』を起動させて、異世界の重火器を模した武装を展開する!

 大気を切り裂く咆哮と共に、回転する銃口から撃ちだされた無数の魔力弾が、オルブルを貫いていく!


「だぁかぁらぁ!痛てえって言ってるだろうがぁ!」

 くっそう!

 相変わらず、足止めくらいにしかならないな!

 『重武装』は結構な自信作だけに、割りとへこむわ!

「無駄だってのがわからないなら、前回の二の舞だな!」

 削れては回復しながら、オルブルは魔力弾の嵐の中を、ズンズンとこちらに向かって歩を進めてくる。

 そして、ある一定の間合いに入った所で、私は『重武装』を放棄した!


「!?」

 突然の武装解除に、警戒して足を止めたオルブルの前で、私は本命の切り札を発動させる!


女神へと(エボリューション)至る進化(・ゴッデス)


 起動させた特殊な『バレット』を『ギア』にセットし、ミスリルのスーツにオリハルコンの装甲を重ねた、『女神装束(ゴッデス・フォーム)』がここに顕現した!

 その神々しい姿を前に、さすがのオルブルも呆然と立ち尽くしている。

 フフン、存分に見とれるがいいさ。


「……ククク、重武装の中間フォームに、ド派手な最終フォームか……わかってるじゃないか」

 ハッとしてから、気を取り直した様子のオルブルは、『奈落装束』の上から汗を拭うような仕草をした。

 その後、「あれ?もしかして死亡フラグ立ってる?」などと呟いていたが、それはたぶん、正解だ。


「いきますよ!」

 風魔法で加速した私は、一瞬でオルブルの懐に入ると、爆発魔法を纏わせた拳や蹴りを叩き込む!


「ぼんっ!ばっ!」

 通常の攻撃なら、その重さに物を言わせて通じないのだろう。

 だが、さすがに私の必殺技の連撃は、奴の芯まで届いたようだ!

 さらに、魔力で出来ている奴の『奈落装束』も、爆発の衝撃が抉り取って、文字通り奴を丸裸にしていく!……って、なんで変身が解ける度に全裸になる仕様にしてるんだ、こいつは!


「くっ!」

 苦しげな声と共に、オルブルは体勢も覚束ない中で、滅茶苦茶に反撃してきた!

 こんな駄々っ子みたいな攻撃でも、当たれば洒落にならない威力があるからタチが悪い。

 私は再び風魔法で優雅に翻ると、一旦オルブルから距離を取った。


「ハァ……ハァ……ま、まさかこれ程とはな……」

 半分、変身が解けたような状態で、オルブルは肩で息をしている。

 フフフ……圧倒的じゃないか、我が戦力は。

 完全に勝ち誇っていた私だったが、そんなこちらの様子に、オルブルは小さく含み笑いをしていた。


「ククク……確かに、お前の『女神装束』とやらは、とんでもない代物だ……だが!」

 顔を上げ、私をまっすぐに睨むオルブル!

 その手には、いつの間にか球状の何かが握られていた!

切り札(ジョーカー)はいつも……俺の元に来るようだぜ!」

 そう言って奴が掲げたあれは……そうだ、『量産型・奈落装束』の(コア)じゃないか!

 そういえば、あの魔将軍の振りをさせたゴーレムも、滑り台階段の罠に一緒に落ちたっけ。

 そこから、いつの間にか回収していたのか……器用な奴め。


魔力増幅(マジック・ブースト)!」

 オルブルが核に向かってそう呼び掛けると、ドロリと液状になったソレが、奴のベルトへと吸収されていく!

 それと同時に、凄まじい魔力がオルブルの体から噴き上がり、瞬く間に『奈落装束』を修復していった!

 いや……なんだか、より一層、禍々しいデザインになっている?


「これこそ、『奈落装束』の最終形態……その名も、『奈落装束アビス・フォーム闇の生命樹(クリフォト・スタイル)』」

 『奈落装束・闇の生命樹』……魔将軍達の命を吸った、量産型を取り込む事で具現化したその姿は、まるで暗黒の世界から現世に現れた悪鬼のようだ。


「まさか……最初から、魔将軍達はその形態のための、生け贄だったのですか!」

「え? いや、ぜんぜん……」

 ん?

「っていうか、この形態はあくまで、魔将軍が全滅した時に、託される力なんだよな……悲しいけど、魔将軍達(あいつら)が残した力だし、その死を無駄にしないためにも、俺はやるぜ!」

 意外にも、信頼関係が成り立ってた。

 それになんだか、オルブルの背後の空間に、魔将軍達がいい笑顔で浮かんでる気までしてきたわ。


「さぁ、見せてやろう!『闇の生命樹(クリフォト・スタイル)』の恐ろしさを!」

 一度、グッと体を縮めたオルブルは、何かを解き放つように全身を大きく広げる!

 すると、奴の足元から植物の蔓を思わせる影が、部屋を覆い尽くす勢いで伸びていった!


「っ!?」

 よくわからないけど、これに触れたら不味い気がするっ!

 私は迫る蔓の影から逃れようとしたけれど、予想以上に素早く侵食してくる影に足元が触れていまった。

 その瞬間、凄まじい重圧感が襲いかかってきて、私は一歩も動けなくなってしまう!


「な……これ……は……」

「フフフ、この蔓に触れた者は、俺が『奈落装束』で得ている重圧を共有する事になる。もちろん、俺と違って対・重圧の処理を施していないから、ひたすら重くなるだけだがね」

 な、なんだとう!?

 乙女に対して体を重くするとか、なんて事を考えるんだ!


「正直、戦闘に関してはお前の方が俺よりも上だろう……そこは認めるよ。だが、こうして動けなくしてしまえば、どうとでも料理できる」

 うぬぬ、確かに立ってるのがやっとなこのままでは、哀れなサンドバッグと化してしまう。

 しかし、この重圧を振りきって動くには……いや、待てよ?

 重圧を(・・・)どうこうする(・・・・・・)必要はないのか(・・・・・・・)


爆発エクスプロード!」

 私は掛け声と共に、脚甲に仕込んだ爆発魔法の『バレット』を発動させた!

 その爆発により、足元の影が吹き飛ぶと、先程までの重圧感が嘘のように消えて無くなる!


「はあっ!」

 風魔法を使用し、辛うじて宙に浮く事が出来た私は、再び影の蔓に触れないようにしながら、オルブルを指差した!

「結構、びっくりしたけど、蔓に触れなければどうという事はありませんね!」

「まぁね!」

 そこも認めるのか!?


「だが、すでにお前の足場はないぞ?」

 むっ……確かに、床といわず壁や天井にまで影の蔓は覆い尽くしている。

「さらに言えば、俺に直接触れても重量は増すからな。下手な反撃は、命取りだぜ?」

 なんだとぅ!? 相変わらず、嫌らしい奴め!

 迂闊に触れれば、また蜘蛛の巣にかかった蝶の如く行動不能になる上に、宙にフワフワ浮いてるだけの、踏ん張りの効かない体勢ではろくな反撃もできる訳もない……。

 余裕を見せるオルブルは、そうとでも思っているんでしょうね。

 だがっ!


「奥の手は、こちらにだってあるんですよっ!」

 そう! それこそが、『女神装束』の最終奥義!


「チェェェェンジィィ・『女神装束』!」

 気合いの声でもあり、発動のスイッチともなる雄叫びをあげ、私は右腕を天に突き出した!

 それをキーとして、『戦乙女(ヴァルキュリア)装束(・フォーム)』の上から身を包んでいたオリハルコンの装甲が一斉に外れると、掲げた右腕に再装着されていく!


 ……やがて、最後のパーツがはめ込まれた時、私の頭上には黄金に輝くオリハルコン製の巨大な右手が形成されていた!


「なんだ、そのシオマネキみたいなバランスの武装はっ!」

 なかなか、痛い所をついてくる。

「見た目は少々、悪いかもしれませんが……ふん!」

 私が床に向かって黄金の右を振るうと、それだけで床の一部が粉砕され、影の蔓は吹き飛ばされた!


「なにっ!?」

 足場を確保し、着地した私と黄金の右の威力を見て、オルブルは驚きの声をあげる。

 どうやら、この形態がただの愉快な見た目でない事を、理解できたようね。


「さぁ……終わりにしましょう」

「……そうだな」

 互いに、繰り出す次の一手が、決着をつける物になると悟った私達は、まるで呼吸を合わせるように、ひとつ息を吸い込んだ。

 そして……。


「うおぉぉぉぉっ!」

「ぬあぁぁぁぁっ!」

 同時に咆哮をあげ、突っ込む私と迎撃するオルブル!


束縛する闇の生命樹(クリフォト・バインド)!」


 オルブルから延びた暗黒の樹木が、触手めいた動きで私に迫る!

 そんな不気味な迎撃行動に対して、風魔法で加速しながら突進する私は、真正面から黄金の右を突き出した!


栄光を(グロリアス・)掴む女神の手(ゴッデス・フィンガー)!!」


 大きく開かれた黄金の右手から放たれる、爆発魔法の波動が、床を抉り道となり、迫る闇の生命樹を砕いていく!

「なぁっ!?」

 驚愕するオルブルに肉薄した私は、黄金の右手で奴の上半身を丸ごと鷲掴みにし、フィニッシュを決める!


「エクスプロード……エンドッ!!!!」


 『女神装束』に仕込まれていた、数本の『バレット』を同時に起動!

 握り込まれた黄金の右手の中で、爆発魔法の同時発動した!

 響く轟音と衝撃!

 大地を揺るがし、天を焦がすトドメの一撃は、闇の生命樹と共に部屋の壁や天井の一部も吹き飛ばす!


 ──やがて、周囲を覆っていた爆煙が晴れた時、非常に風通しの良くなった室内に残っていたのは、『奈落装束』が消滅して全裸で失神するオルブルと、床に伏している彼を見下ろす私だけ……。


「……勝った!」

 変身を解除し、勝利を確信した私は、見事リベンジを果たした事実に、小さくガッツポーズをとっていた。

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