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謀殺されてTS転生した魔王の息子が、勇者の師匠になる話  作者: 善信
最終章 終わる時代、新たな世界
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エピローグ

           ◆◆◆


 あの戦いから、五年の月日が経った。


 激しい戦いを経て勝利した私達は、各々の国へ帰ってからも交流を続け、今では私達の辺境とアルト達の大陸中央には、しっかりとした流通網が生まれていた。

 商魂たくましい商人や、それを護衛する冒険者達にも大きな需要が生まれ、いまは結構な好景気に沸いている。


 そんな中で、私達はといえば……まぁ、相変わらずといった所だ。


 デューナは「真・魔王(ママおう)」として、辺境の玄関ともいえる魔界(中央にも『魔界』と呼ばれる場所があるので、ややこしい)を治め、国策として子供達を厳しくも優しく鍛えている。


 あ、子供といえばシンヤとキャロメンスの娘、ノアちゃんも元気にスクスクと成長しており、将来が楽しみだとデューナから聞かされていた。

 シンヤ達も、少しノアちゃんから手が離れてきたから、そろそろ二人目を……なんて話をしているそうだ。


 ヴェルチェは現在、ドワーフの職人を何人か連れて、技術交流の大使として中央へと出向している。

 やはり向こうの技術には核心的な物も多いが、ヴェルチェのゴーレム技術もあちらの度肝を抜いてやったと、彼女からの手紙には記してあった。

 色々と刺激を受けながら、更なる技術を吸収して数年後に帰ってくるらしい。


 そして、私とルアンタといえば……。


            ◆


「…………んん」

 朝の光が差し込むベッドで、私は小さく声を漏らしながら目を覚ました。

 昨夜、ルアンタと共に過ごし、生まれたままの姿になっていた私は、ベッドから降りると手近にあった服を身に付けて寝室を出る。


 神々との戦いから帰還した私達は、各国とお偉いさん達への報告を終えてから、一緒に暮らしていた。

 私もルアンタも地位や名誉にはとんと興味が無く、私が管理する森で二人で修行などをしながら、静かに暮らしている。


「あ、おはようございます、エリさん」

「おはよう、ルアンタ」

 朝食の準備をしていたルアンタが、私の姿を見つけて笑顔で挨拶してきた。

 私も返事を返して、朝食が用意してあるテーブルに着席すると、すかさずルアンタが、お茶を入れてくれた。

「もうすぐ準備できますので、もう少し待っててくださいね、エリさん」

 そう言い残して、彼はキッチンの方へと消えていく。


 一緒に暮らしはじめてから、二人きりの時には「先生」ではなく、名前で呼ぶように言ってきたのだが、やっと最近は普通に呼べるようになってきたようだ。

 呼び始めた頃は真っ赤になって、なんとも初々しかったなぁ。

 まぁ、お年頃だから、照れ臭いというのもあったのかもしれないけど。


 だが、そんな十八歳となった彼の姿は、五年前の時のままだ。

 その理由について、エルフの女王であるアーレルハーレに謁見した際、彼女に言われたことがある。

 なんでも、ルアンタは神のオーラを得た事で「半神」と呼ばれる存在になっていたらしい。

 人間という種族を超越した強さはもちろんだが、寿命もエルフ並に伸びたそうだ。

 しかし、その反動で成長はすごくゆっくりとしたものになってしまい、いまもほとんど外見が変わっていない。

 ルアンタは少し不満そうだが、私的には彼が可愛いままだったり、共に過ごせる時間が伸びたというのはちょっと嬉しいというのは秘密だ。


 やがて、ルアンタが運んできた朝食をとりつつ、私達は雑談を交えながら今日の予定について話し合う。

 そんな流れの中で、私は彼に報告することがあった。


「ルアンタ……もしかしたら私は、厳しい修行に参加できなくなるかも知れません」 

「え?どこか痛めたんですか!?」

 心配そうにな彼に苦笑しながら、私は「違う、違う」と手を振った。

 そうして、その手を自分の下腹の辺りに当てる。


「どうやら……出来たみたいなんです」

「え?で、出来たって……」

「私と貴方の赤ちゃんが、です」


 そう告げると、ルアンタは大きく目を見開いたまま、固まってしまった。

 あ、あら……?

 サプライズを演出しようかと思っていたのだけど、もしかしてショックが大きすぎたのかな……?

 だが、次の瞬間!

 大きく身を乗り出したルアンタが、私の両手をガッシリと掴んだ!


「ぼ、僕は!絶対にエリさんを幸せにしますから!」

 鼻息も荒く、興奮した様子でそんな事を言うルアンタ。

 お、おお……喜んでくれるのは、私も嬉しい。

 だけど、ちょっとだけ勘違いをしているな。

「違いますよ、ルアンタ。『貴方が私を幸せにする』のではなく、『一緒に幸せになる』んですよ」

「っ、はいっ!」

 元気な返事を返してくる彼に、私はちょっと苦笑した。


 前世(むかし)は、こんな日が来るなんて思いもしなかった。

 私は再び、新しい命が宿ったお腹を撫でながら、一人だった時には、決して感じることのできなかった幸せを、二人で享受できる喜びを噛みしめる。

 数奇な廻り合いとなった今の人生ではあるが、私は共に歩む伴侶と生まれ来るであろう我が子に対し、感謝の気持ちを(いだ)きながら、心からの微笑みを向けた。


           ─完─

これにて本作品は終了となります。

お付き合いいただき、ありがとうございました。


次作「追放・獣人×女装ショタ」は、年明け1月6日頃に投稿を開始する予定ですので、よろしければ来年もお付き合いくださいませ。


それでは皆様、よいお年を。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 来年も性癖フルバーストか、良いお年を!
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