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謀殺されてTS転生した魔王の息子が、勇者の師匠になる話  作者: 善信
最終章 終わる時代、新たな世界
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12 神の攻略法

           ◆◆◆


「んんっ?」

 再び私達と対峙していたイコ・サイフレームが、怪訝そうに眉をひそめる。

 はて……こんな反応は、前にも見た事があるな。

「……まさか、あの子達もやられたというのか」

 意外そうに呟く破壊神。

 彼女があの子達というからには、関係者……つまり、盾使いと槍使いの使徒達が倒されたということか!


「ふぅん……まさか、ちょっとばかり虫どもが増えたからといって、こうも簡単にやられるとは不甲斐ない。余の使徒として、失格だな」

 はぁ……と肩をすくめるイコ・サイフレームだったが、見下しまくるそんな態度に、少しばかりカチンときた。

「舐めてもらっては困りますね。増援に来た彼女達は、魔王クラスの力の持ち主……二対一なら、最強の使徒が相手でも不覚を取ることはありませんよ!」

 破壊神達(こいつら)は確かに個々の力は私達以上だが、複数で当たれるなら連携が取れる私達の方が優れていると確信している。

 最後の使徒達……ガッダームとゼッタは今までの使徒とは桁が違うようだったが、それでも強い絆で結ばれた仲間達なら、勝てるとは思っていた。


「ほぅ……だが、相変わらずお前達二人は余に対して、成す術が無いようだが?」

 使徒達が全滅した腹いせか、私とルアンタのコンビを煽るように、イコ・サイフレームは見下した顔でニヤニヤと笑う。

 そちらが、そう来るなら……。

「確かに、決定打にかけているのは否めませんね。ですが、腐っても神ならば使徒達と同じように簡単に倒せるとは思っていませんよ。ですが……」

「ですが?」

「攻略の糸口は見つけました。……神などと言っても、無敵では無さそうで何よりです」

 煽られたから、軽く煽り返してやった。だが!その行為が、神の逆鱗に触れた!


「不敬にも、神を倒せると言ったか、虫けら!その物言いの代償、けして安くはないぞ!」

 思った以上に激昂した破壊神が、凶悪な笑みを浮かべる!

 そ、そんな……私はもっと軽い気持ちで……。

 思ったよりも激しい反応に少し戸惑うが、先程の言葉がただのハッタリかといえば、そういう訳でもない。

 なぜなら、そのヒントはイコ・サイフレーム(・・・・・・・・・)自身がくれたのだから(・・・・・・・・・・)


「貴女の言葉が無ければ、私も大口を叩けなかったでしょうね」

「なに?」

「自分で言っていたじゃありませんか、『神のオーラその物が本体だ』と」

「……それが何だというの?」

 私の言葉に、破壊神とルアンタが小首を傾げた。


「つまり、いくらその肉体を攻撃にしたところで、破壊神(あなた)に大したダメージは与えられないという事でしょう」

「へぇ……よく気づいたわね」

「だから、攻撃しても無駄……とでも思ったら大間違いですよ!」

 強く断言すると、ほんの少しだけイコ・サイフレームのニヤケ顔から、余裕が消えた気がする。

「せ、先生……?どういう事ですか!?」

「思い出してみなさい、ルアンタ。奴が復活した経緯と、ゴッドーラの事を(・・・・・・・・)

「ゴッドーラ!?」

 一時的にとはいえ、ルアンタの肉体を奪ったもう一人の女神の使徒、神のオーラで作られた精神寄生体の名前が出た事に、ルアンタは戸惑ったような顔になった。


ゴッドーラ()は、初め狼タイプのモンスターに憑り付き現れ、次にルアンタへと乗り移った」

「は、はい!」

「おかしいじゃないですか、どう考えても制約を受ける肉体より、物理的な攻撃を受け付けないし魔法も効きにくい、オーラの塊である本体で戦った方が有利でしょう?」

「そ、それは確かに……」

「オーラは魔力や生命力に近い物ですが……思うに、様々な法則の影響を受けるこの地上では、オーラ(それ)のみでは存在できないのでは無いでしょうか?」

 まぁ、肉体の無いゴーストのようなモンスターもいるが、それだって召喚されて術者の魔力と紐付いているような場合を除けば、やがて意識は失われて劣化し、ただ犠牲者を求めるだけの哀れな化け物と化していく。

 異世界の書物でも、神と呼ばれる存在は常に別の次元にいると記されていたし、そんな存在が下界に降りて来るには何らかの縛りがあってもおかしくないだろう。

 それが、肉体……つまり依り代なのだろう。


「神の使徒であるゴッドーラでも、そのシステムから抜けられなかったのだとしたら、次々と肉体を移り変わり、依り代を得ていった理由にも説明はつきますからね。さて、ここにもう一人……肉体を持ち(・・・・・)オーラのみで構成され(・・・・・・・・・・)た本体を持つ相手がい(・・・・・・・・・・)ます(・・)

「…………」

 返事は無い。だが、破壊神の表情からして私の推測は、まったくの的外れという訳では無さそうだ。


「その肉体に附与された異常な再生能力も、これなら説明が付くと思うのですがね?」

「………フフッ」

 我ながら筋は通っていると思うが、解説を聞き終えたイコ・サイフレームは含み笑いを漏らす。

「見事、見事。さすがは、お姉ちゃんのオーラを授かっただけの事はあるな、ダークエルフの女よ!」

 まぁ、正確に言えば、神のオーラを取り込んだルアンタに注がれちゃったから(・・・・・・・・・)……ですがね。フフフ……。


「で、いくらでも再生するこの依り代から、どうやって余を分かつつもりなのかな?」

 ……あ、やばい。それは考えてなかった。

 つい、推測が当たってたらしいから延々と講釈しちゃったけど、その問題があったわ!


「……おい、まさか何も考えてなかった訳ではないだろうな?」

「そんなハズがないだろう!先生の叡知をなめるなよ!」

 んんっ!

 ルアンタから向けられる、期待の大きさがツラい!

 な、何かいいアイデアは……そうだ!

「フッ……当然、考えてはいますよ」

 さすが先生!と、目を輝かせてこちらを見つめるルアンタからわずかに目をそらし、私は即興で思い付いた対策を突きつける!


「超再生するというのなら、答えは簡単!その再生能力が尽きるまで攻撃を加えるか、一瞬で欠片も残さずに消滅させればいいのです!」

「なるほど!さすが先生!」

 ルアンタは感心してるようだけど、こんな作戦、身も蓋もない力技にすぎない。

 しかし、物事はシンプルな方が上手くいく事も多い訳だし、なんだかこれが最善手のような気がしてきたぞ、うん!

「すごい力技だなぁ……」

 呆れたように破壊神は呟くが、無視だ、無視!


「フッ、まぁいい……虫けらの浅知恵が神に通じるか、試してみるがいいわ!」

 ブワッ!っと、イコ・サイフレームから熱風のようなオーラが立ち上る!

 神のオーラに守られ、いくらでも再生する神が作り替えたあの『依り代()』を破壊する事はできるのだろうか……。

 そんな不安が一瞬、頭を過る。

 しかし、隣で私を信じきっているルアンタのためにも、ここはやるしかないでしょう!


 何にせよ、二つのプランをあげてはみたが、現実的に確実なのは、その両方を組み合わせる事だろう。

 とにかく、圧倒的な破壊力を持つ攻撃を繰り返し撃ち込んで、あの依り代を跡形も無く消し飛ばす!

 持てる限り、私達の持てる最大級の火力を、ぶちこんでやる!


 私は、『女神装束ゴッデス・フォーム』を『栄光を掴む手(グロリアス・モード)』へと移行させ、空いている方の手をルアンタと繋いだ。

「いきますよ、ルアンタ。貴方の力を貸してください」

「もちろんですよ、先生!」

 グッと握り返してくる、彼の手が頼もしい。

 ルアンタから勇気をもらった気がして、私は緊張を払うように、ひとつ大きな息を吐き出した。


 勝負は一瞬!

 覚悟を決め、私達はイコ・サイフレームへと向かって地を蹴り、跳んだ!

 間合いが縮まり、私達を迎撃するために、破壊神のオーラが襲いかかってくる!

「せやぁっ!」

 私を攻撃に集中させるために、反撃はすべてルアンタが斬り払う!

 おかげで私は、イコ・サイフレームを『栄光を掴む手』で狙い通り捕縛する事ができた!


「ぬっ!」

 破壊神はすぐさま逃れようとするが、ここで逃がすものかよっ!

 私は『栄光を掴む手』の周囲を包むように神のオーラを展開し、同時に『女神装束』に仕込んであった、全『バレット』を発動させる!


「必殺!バースト・エンドオォォォォッ!!!!」


 神のオーラの障壁内で、『バレット』にセットされていた十数発の『極大級爆発魔法』が、一度に開放された!

 私は魔力を『バレット』に補充して、間髪入れずに再び『バースト・エンド』を叩き込む!

 さらに追い付いたルアンタと再び手を繋ぎ、彼から供給される魔力をも注いで爆発の嵐を継続させた!

 閃光!衝撃!轟音!

 気が遠くなるほどの反動を堪え、私達は魔力が枯れるまで「必殺」に「必殺」を重ねた!

 やがて……。


            ◆



「……せい、先生!」

 遠くから、ルアンタの呼び掛ける声が聞こえ、私はうっすらと目を開いた。

「うう……」

 私は……気を……失っていたのか?

 意識を取り戻した私に、涙目のルアンタが抱きついてくる。

「よかった!先生!」

 安堵の言葉を漏らすルアンタは、心の底からホッとした様子だ。

 心配をかけてしまったみたいだな……って、そうだ!

 イコ・サイフレームはどうなった!?

 奴を捕らえていたはずの右手を確認するが、そこには衝撃の反動からか、わずかに『女神装束』の残骸が残っているだけの、空の手しかなかった。

 オリハルコンでできていた、あの装備がこんな無惨な姿に……それだけに、無茶な攻撃をした事が実感できる。


「大丈夫です、先生。奴は……破壊神の肉体は、完全に消滅しました!」

 顔をあげ、笑顔でそうルアンタが報告してくる。

 そうか……そうだろうな。そうでなきゃ困る。


 …………はあぁぁぁ、良かったぁ。

 あれで通じかなかった、本気で打つ手が無くなっていたから、決まってくれて本当に良かったよぅ……。


 そうしてホッとしたのと同時に、『戦乙女(ヴァルキュリア)装束(・フォーム)』も解除される。

 スーツの仮面マスクから開放され、広がった視界の端に、こちらへ向かってくる仲間達の姿を捉え、私の緊張感はプツリと途切れた。

 ああ、もう限界だ。

 私はそのまま、ルアンタを巻き込んで地面にゴロンと転がる。

 そうして、勝利を実感した私は彼を愛でながら、また微睡(まどろ)みの中に落ちて行きそうになった。


『これで……勝ったと思った?』


 だが、その時!

 突然、大気が震える振動と共に、破壊神の声が鳴り響いた!

 慌てて上体を起こす私達の目の前で光が集まり、巨大な……あの『尾万(グレートテイル)(・タイガー)』よりも巨大な人型のシルエットが形成されていった。

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