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謀殺されてTS転生した魔王の息子が、勇者の師匠になる話  作者: 善信
第十三章 大陸中央の勇者達
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03 魔王の娘と勇者の子孫

 転移口(アレ)が出現する時は、大抵ロクでもない事が起こる!

 私達は即座に対応できるよう、『ギア』や『バレット』を準備して身構えた!


 しかし、私達の予想に反して、そこから飛び出して来たのは三人の男女!

 さらに、転がるようにして黒いローブに身を包んだ人物が、最後に姿を現した!


「よしっ!もうよいぞ!」

「どっせいっ!」

 先に出てきた女性の指示を受け、黒いローブの人物が気合いの声と共に転移口(ゲート)を封鎖する!

 ええっ!? あの人物が、転移魔法を使っていたの!?

 パッと見だと、破壊神の使徒には見えないが、いったい……?

「ふぅ~、やれやれ……え?」

 なにやら無我夢中で移動してきた彼女達が、それを見ていた私達に気づいてギョッとした顔になった。

 そんな風に固まる一団を前に、私達も下手に動けない。

 なので自然と、お互いに相手を観察するモードに入っていた。


 まず、最初に出てきた三人の男女……銀の髪に紅い瞳、新雪のような白い肌とは対照的な、漆黒の豪奢なドレスを纏う美女は、おそらく魔族だろうか?

 そして、ルアンタに歳の近そうな可愛らしい少年と、その姉かな……十代後半くらいの、少しチャラついた格好の少女だった。

 しかし、彼女達以上に私達が警戒心を抱いたのは、最後に転移口から出てきた、黒いローブの人物!

 なぜなら彼(?)の姿は生者ですらない、白骨化した骸骨だったからだ!


 普通に考えれば、アンデッドの類いなのだろうが、転移魔法すら使いこなすのだから、自意識を残したままで自ら不死化したと見て間違いない。

 だとしたら、それほどの魔力と知識を持つ者がただ者ではあるはずもなく、恐らくこの一団の最重要人物となのだろうと推測する。


 そんな謎の一行と、しばらくにらみ合いが続いたが……先に動いたのは相手のスケルトンだった!

「な……」

 な?

「なんだ、チミは!」

 なんだチミはっ、てか!

 それはこちらの台詞なんだが、ハイハイと素直に答える訳にもいくまい。

「人に名前を尋ねるなら、まずは自分から名乗るものじゃないのか?」

「ん……それもそうですね。僕らは……」

 シンヤの返しに、向こうの少年が名乗ろうとした所、魔族の美女がそれを手で制した。

「待て……あ奴等からは、アレ(・・)と似たような気配を感じる」

「確かに……主様、あーしの後ろに」

 主様って……少女は少年の姉かと思っていたが、どうやら違うようだ。

 こちらへの警戒を切らさずに、少年を守るように一歩前に出てくる。

 しかし……アレ(・・)ってなんだ?


 こちらとしても、無駄な争いをするつもりは無いが、なにやら向こうは不穏な空気を漂わせ始めている。

 しかもこいつら……強いな。

 魔族の美女といい、少年を守ろうとする少女といい、強者の雰囲気を十分に備えていた。


「待ってください。こちらに、戦闘の意思はありません」

 一応、話し合いですませられないか提案してみるが、彼女達から警戒するような気配は払拭されていない。

 よほど、アレ(・・)というのを危険視しているようだな。

 まぁ、それでも提案に応じるつもりはあるようで、わずかに力を抜いたのが見てとれた。


「とにかく、お互いに自己紹介から始めませんか?」

 まずは相手の名前くらいは知っておかないと、話にもならない。

 こちらから名乗ってもいいけど、シンヤがさっき「そっちから名乗って!」と言ってしまったから、ここは相手の出方を見よう。


「クックックッ、ならば教えてやろう、我々の名をなぁ」

 何故かおどろおどろしく演出しながら、骸骨魔導師が両手を広げて少年と美女を示す!

「こちらにおわすは、かつて魔界を統べた『鋼の魔王』の御息女アルトニエル様と、勇者の子孫エルトニクス君!」

 魔王の娘と勇者の子孫!……って、誰?

 その名を聞いても、私達がキョトンとしているのを見て、骸骨魔導師はわずかに狼狽えたようだった。

「そ、そして!私が元魔王四天王の筆頭にして、現お嬢の従者!ハンサム・ザ・ハンサム(自称)こと、アンデッド界の至宝、キャルシアム・骨夫様よぉ!」

 ますます誰だよ!

 もはや呆れ顔になっている私達の反応に、骨夫と名乗ったアンデッドはガクリと膝をついた。


「あー……この阿呆は放っといてだな、まぁ妾達はそういう立場の者ということよ」

 アルトニエルと呼ばれた魔族の美女が、骨夫を押し分けて前に出てくる。

「改めて名乗らせてもらおう。妾はアルトニエル・ローゼル・バオル。アルトと呼ぶがいい」

「僕はエルトニクスといいます。エルと呼んでもらって、結構です」

「ちなみに、エルは妾の夫でもあるぞ」

 へぇ、この少年が夫……夫!?


「け、結婚しておりますの!?」

「うむ!」

 驚く私達に、エル少年は照れ臭そうに笑い、アルト女史は誇らしげに胸を張る。

 そこへ、もう一人の少女が名乗りをあげた。

「あーしはハミィと申します。主であるエル様の剣であり、第三夫人でもありますので、どうぞよろしく」

 だ、第三夫人!

 つまり、このエルという少年、三人も妻がいるのかっ!?

 ヤバい!大陸中央の連中、マジヤバい!

「お、大人の女が少年を手込めにした、ポリス案件かと思ったら実はハーレムでした……だとぅ!」

「やるのぅ、少年」

 愕然とするシンヤに、感心するミリティア。

 反応は違えど、彼等もアルト一行を見る目が変わっていた。


「クックックッ……畏れ入って詫びをいれるなら、セクシーなポーズを見せるくらいで許してやるぞ?」

 形勢有利と見たのか、復活した骨夫が何故か高圧的に迫ってくる。

「ふ、ふざけないでくださいまし!ルアンタ様の前で、そんなふしだらな……」

 口ではそんな事を言うわりに、チラチラとルアンタに視線を送って、なにかをアピールするヴェルチェ。

 だが、そんな彼女を骨夫は一蹴した!


「お前みたいなチンチクリンのセクシーポーズなんか見て、誰が楽しいんだよ!せめて、胸と尻を盛ってから出直して来やがれ!」

「……あのアンデッドから、殺してよろしいんですの?」

 暴言に対し、感情のない表情になったヴェルチェ静かに名指しすると、骨夫は涙目になりながらガクガクと震えだす!

 ビビるくらいなら、軽口を叩かなきゃいいのに……しかし、本当に情緒豊かなアンデッドだな。


「お前、もう下がっておれ!」

 主であるアルトに叱られて、スゴスゴと骨夫はエルの隣に引き下がった。

「さて……今度は、そちらの名を聞こうか」

 やや、挑戦的な光を走らせ、アルトは私達を値踏みする。

 よーし、やってやろうじゃない!

 そうして、私達も一通り名前と仲間内の関係性を告げた。

 それを聞き終えたアルト達の顔に、先程の私達ような動揺が走ったのが見てとれる。


「その山脈の向こう側……隔絶された地域の、魔王と勇者か……」

 なにかを思案するアルトと同様に、骨夫がゴクリと息を飲む。

「しかも、ダークエルフと人間……師弟関係でありながら、いい雰囲気だと……!」

 食いつくのそこ!?

 なんかこのアンデッド、やたら(ぞく)いしマイペース過ぎないか?

「ほ、骨夫さん?そこは、そんなに重要じゃ……」

 さすがに、味方内からも呆れたような声がかけられるが、骨夫は逆に「ばか野郎!」と熱く吠えた!


「昼は師弟関係、夜は恋人同士なんて、めちゃくちゃ尊いじゃねぇか!」

 そんな骨夫の言に、ヴェルチェが「わかってるな」と言わんばかりに大きく頷いて見せる。

「しかも、ルアンタ様にはエリ姉様以外にワタクシ、そして『真・魔王(ママおう)』ことデュー姉様が、側室候補として控えていますわ!」

 え?デューナは違うと思うけど……?

 だが、細かい事情は知らない骨夫は、そんな彼女の言葉を鵜呑みにして、滝のような冷や汗を流す。


「しゅ、種族ちがいの王族・義姉妹どんぶりだと……!?」

 言い方ぁ!

 この骨、やはり下世話が過ぎる!生前の顔が見てみたいわ!


「まずいぞ、エル!インパクトで負けそうだ!なにかお前の特技とかで、挽回できないか!?」

「と、特技!?」

「勇者の子孫なんだから、なにかあるだろう?例えば、二十四時間インターバル無しでお嬢達とセッ……」

「魔力強制遮断!」

 アルトが叫ぶと同時に、骨夫は糸が切れた人形みたいに、ガチャンと音を立てて崩れ落ちた。

 まぁ、あれ以上は言わせないのが正解だろうから、その判断は正解だろう。

 でも、アルトから魔力供給されていたということは、骨夫って造られたアンデッドだったんだな……という事は、制作者もあんな性格だったんだろうか。


「これ以上、父上の顔に泥を塗るでないわ、阿呆が!」

 アルトの父……つまり、魔王が骨夫の制作者か。それで、あの性格とは……。

「妾の部下が、品の無い事を口走ってしまってすまんな……」

 こちらの内心を知ってか知らずか、はぁぁぁぁ……と、大きなため息をつきつつ、アルトが頭を下げる。

 なんだか、普段から骨夫の扱いに苦労してるのが、目に見えるようだわ。

 そして、エルもそんなアルトを労るように、励ましの声をかけていた。


 うーん、夫婦か……。

 何となく、この二人は私とルアンタの関係にも影響を与えそうだな……と、漠然とした思いを抱く。

 そして、そんな彼女達をちょっとだけ羨ましく感じてしまう。

 ルアンタも同じような事を思ったのか、少しだけ上目つかいで、私の方を覗き込んでいた。


「ところで、あんたらは何でこんな所に転移してきたんだ?」

 タイミングを見計らっていたシンヤが、アルト達にそう尋ねる。

 そういえば、そうだ。

 確か、何かに追われていたような雰囲気だったが……。


「ああ、妾達はある目的があって旅をしていたのだが……」

 そう、彼女が言いかけた時、再びヴォン!という虫の羽音のような音が響く!

 なんだ、また転移魔法でアルト達みたいなのが出てくるのかっ!?

 そう思って音のした方に目を向けると、四つの転移口が展開されているのが視界に入った。って、四つ(・・)!?


「ようやく追い付いたぞ」

「んん……なんだ?なんか、数が増えてるじゃねぇか」

「あー、ザコお姉ちゃんだぁ♥」

「お前の知り合いか?」


 呑気に世間話をしながら転移口から現れたのは、見覚えのある二人と見知らぬ二人。

 計、四人の破壊神の使徒達であった。

 今回登場したキャラは、自分が以前に書いた、サブタイトルと同名の作品の主人公達です。

 いわば、セルフ・クロスオーバー……いっぺんやってみたかったんですよね……。

 よろしければ、そちらもお目を通していただけると幸いです。

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