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謀殺されてTS転生した魔王の息子が、勇者の師匠になる話  作者: 善信
第十一章 暗黒界神話
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08 貫く姉妹の絆

 私は取り出した特殊な『バレット』のを掲げ、起動スイッチを押したっ!


女神へと至る(エボリューション)進化(・ゴッデス)!』


 響く音声と同時に、勢いよく『ギア』に差し込むと、発動の光が迸る!


 ミスリル製の『戦乙女(ヴァルキュリア)装束(・フォーム)』の上から、さらに追加されるオリハルコン製の武装!

 その黄金に輝きは、まさに顕現した女神を思わせる神々しさを放つ!

 最強の武装、『女神装束(ゴッデス・フォーム)』を身に纏い、この場にいる全ての者の前で見せつけるように、ビシッ!っとポーズを決めた!

 ……そんな私の姿に、周囲は静まり返ってただ呆然としている。

 うん。掴みはオーケーのはず、たぶん……きっと……。


「は、派手な武装じゃなぁ……」

 またも、お婆ちゃんな口調で呟くミリティアに対し、エティスティの目尻がキリキリと吊り上がり、鬼のような形相で私を睨みつけてきた!


「地上の害虫風情が、あの方と同じように女神を自称するとは、不遜極まりないわ……これは、罰を与えなくてはいけないわね!」

 あの方……イコ・サイフレームの事か。別に同等とか、そういうつもりは無いんだけどなぁ。

 しかし、そんな私の胸中は知らんとばかりに、シンプルに「殺す」と言い放った彼女の眼前に、巨大な炎の塊が出現した!

 むぅ……サキュバスにしては、すごい高出力な魔法だな。

 そういえば、この無詠唱魔法も破壊神からの授かり物らしいし、何らかのブーストがかかっているのかもしれない。


「消し炭になりなさい!」

 逃げる気配も見せない私を、戦意喪失した物と判断したのか、怒気のこもった叫びに残忍な笑顔を添えて、エティスティは巨大な炎を私に向けて放った!

 真っ赤な炎の奔流が、勢いよく私を飲み込む!……まぁ、効かないんだけどね!


「ふん!」

「なっ!?」

 右腕を振るって弾いた炎の一部が逆流し、それに巻き込まれた死霊兵の何人かを消滅させる!

 主の炎で焼かれながら、「ありがとうございます♥」という歓喜の声を残して消えた下僕を前に、さすがのエティスティも二の句が繋げないようであった。

 まぁ、普通そんな下僕には引くよね。


「私の……魔法を弾き返すなんて……」

 あれ……違うな、これは。

 喜ぶ死霊兵に引いてるんじゃなくて、私に魔法が通じなかった事がショックだったようだ。

 下僕が下僕なら、主も主だけど、曲がりなりにも破壊神から伝授された魔法が通じないなんて、想定してなかったんだろうか?

 もしもそうなら、そっちの方に大きく動揺してしまってもおかしくないか。


「偶然……偶然に決まっているわ!」

 迷いを振り払うように、今度は氷魔法で私を攻撃するエティスティ!

 しかし、私はまたも魔法の氷塊は弾き返し、それに当たっては喜ぶ死霊兵という、そんなよくわからない反応まで含めて、結果は先程とだいたい同じだった。


「どれだけ高い威力の魔法だろうが、神から授かった無詠唱魔法だろうが……今の私には、魔法その物が通じないんですよ」

 天上から諭す女神のように、愕然とするサキュバスに説いてみる。が、彼女はギリリ……と歯を食いしばって、死霊兵達に向かってヒステリックな大声で指示を出す!


「死霊兵達!あの神を語る不届き者を、八つ裂き……いえ、ゴブリンに敗北した女騎士みたいにしてしまいなさい!」

 主の命令が下ると、死霊達から「ヒャッハー!」と大いに盛り上がるような気配が沸き上がる!

 そういう発想が出てくるあたり、やっぱりサキュバスだな!

 でも……。


 私は殺到してくる死霊兵達へ向かって、むしろ前進していった!

 真正面の死霊兵を、初弾の一撃で粉砕し、そのまま群れを引き裂くようにして、前線および中盤の亡霊達を殴り散らしていく!

 やがて、私は群れの中心までたどり着くと、全周囲の死霊兵達へ向けて、本格的な攻撃(・・・・・・)を開始した!


 『女神装束』のあらゆる部位に仕込まれた『バレット』と、無限供給される魔力により、舞うような攻撃の動作と共に起こる爆発魔法の連鎖が、迫る死霊兵達を一瞬で灰塵と帰していく!

 やがて、全ての死霊兵達が断末魔の悲鳴すら残さず消滅すると、その光景を前にしたエティスティは、今度こそ唖然とした表情を晒す事になった。


「ま、まだよ!私の下僕は、もっといるんだからっ!」

 ギリギリの所で心は折れなかったようで、三度(みたび)転移口(ゲート)を開いて死霊兵を召喚しようとするエティスティ。

 しかも、今度はより大量の召喚を行おうとしているのか、転移口から流れ出す人魂の量と時間は、二度目の時よりも長くなっていた。

 ……向こうの体勢が整うまで少しかかりそうだし、今がチャンスだな!


 私は、エティスティに宿る神の加護を、ヴェルチェと共に打ち破るべく、セッティングを開始した!


 まずは、両腕に仕込んであった爆発魔法の『バレット』を、風魔法を込めたの物と入れ換える!

 そうして、両腕を胸の前に突き出すと、風魔法(それ)を発動させた!

 いつもなら必殺技の推進力に使う、『旋嵐(ストーム)』の音声が何度か鳴り響き、荒れ狂う風魔法を魔力でコントロールすると……私の眼前に、圧縮された風魔法による、細長い筒状の風の渦ができあがった。

 これでヨシ!

 次はヴェルチェの番だ。


「それでは、手伝ってもらいますよ、ヴェルチェ!」

「心得ましたわ!」

「まずは、両手の(てのひら)を合わせて、伸びをするように頭上に向けてください!」

「こうですの!?」

「オーケーです!次に、そのままの姿勢で、硬質化をお願いします!」

「了解ですわ!」

 私の指示を指示通り、ピン!と体を伸ばした状態で固まったヴェルチェを、ヒョイと小脇に抱える。

 そうして「え?え?」と戸惑う彼女を、風魔法で形成した筒状の渦へとセットした。


「ですわぁぁぁぁぁっ…………!!!!」

 渦にセットされ、高速で回転を始めたヴェルチェは、声にならない悲鳴をあげる。

 本来のパートナーであるルアンタなら、自分で回転するから目が回らないように調整できるんだろうけど、彼女にそれは無理っぽいな……うん、応援することしかできないが、がんばれヴェルチェ!

 

「よし……これで第二段階は完了、と。後は……」

 呟きながら私は、『女神装束』の装甲を右腕に集中させる、『栄光を(グロリアス)掴む手(・ハンド)』モードへと移行させた。

 『女神装束』に装填された、全ての『バレット』を同時発動させられる、巨大な手甲(ガントレット)を形成して、全ての準備はこれで完了だ!

 例えるならば、風魔法の筒は銃身、私は撃鉄。そしてヴェルチェは弾丸である!


 すでに大量の死霊兵を召喚し終え、こちらへ攻めこまんとするエティスティへ達と向けて、私は狙いを定めた。


「必殺!超級旋風(ちょうきゅうせんぷう)徹甲弾(てっこうだん)!」


 即興の技名を叫びながら、黄金の手甲で風魔法を発動!

 圧縮した巨大な大気の塊を、加速した掌底で砲身に叩き込んだ!

 次の瞬間! 轟音と共に撃ち出された弾丸(ヴェルチェ)が、エティスティ及び死霊兵、目掛けて突っ込んでいった!


「ひっ……」

 わずかな悲鳴すらあげる間も与えず、軌道上に立つ亡霊達を紙のようにを引き裂いて、弾丸(ヴェルチェ)がエティスティの『見えざる障壁』に突き刺さる!

 硬質化しながら回転の力を加えたヴェルチェと、その威力を後押しする風魔法の竜巻に押され、激しい破壊音を撒き散らしながら、『見えざる障壁』を抉り削っていく!


「あ、ああ……」

 一瞬、エティスティの顔が、焦りと恐怖に小さく歪む。

 しかし、凄まじい勢いで障壁を食い込み、空間に異常な亀裂を走らせてはいるものの、私達の合体攻撃は『見えざる障壁(それ)』を打ち破るに至っていなかった!


「ハ、ハハ……アハハハハッ!! そ、そうよねっ!いくら頑張った所で、地上の者ごときに神の加護が、破れる訳がないわよねぇ!」

 ギリギリの所で神の加護を崩す事ができず、それに突き刺さったままのヴェルチェの姿を見て、破壊神の使徒は勝ち誇った笑い声をあげる。

 だが、『栄光を掴む手』を振りかぶって突っ込んで来る私の姿を見て、その笑顔が凍りついた!


姉妹共闘(シスターズ・)杭射撃(パイルバンカー)!!」


 障壁に突き刺さったままのヴェルチェの足元を狙い、彼女を押し出すように繰り出した私の一撃は、最後のだめ押しとなって神の加護を撃ち貫く!


「そ、そんな!! バカな事………」

 最後まで言葉を放つ事はできず、障壁を打ち破ったヴェルチェの勢いに巻き込まれる形で、二人は(もつ)れ合いながら、この空間の端まで吹き飛ばされていった!


 やがて、激しい音を立てて空間の壁に激突した両者が、立ち上って来そうもない事を確認し、私はようやく肩の力を抜いて、大きく息を吐き出す。


 そして、一人で小さく呟いた。

 これが、協力プレイによる絆の力ですよ、と。

 まぁ……ヴェルチェが言っていたのとは、若干ニュアンスが違うかもしれないけどね。

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