抹茶パフェが食べたい
この時代にもう一人の私がいる。
それは奇妙な感覚だった。
結局、沖田君と土方君が屯所に赴くことになった。大丈夫だろうか。
私はわだかまっていた疑念の一つを、この際だからと土方君にぶつけた。
朝食を終え、目立つ隊服ではなく普通の武士の恰好に着替え、通り土間を歩く土方君。どこか意気揚々として見えないでもない彼に。
「土方君」
「何だい」
「私に平山五郎を殺させたのはどうしてだ」
土方君の動きが一瞬、止まる。
「眉目清秀にして頗る美男子たり」と書かれた顔が私を凝視する。
「……必要だったからさ」
「君の立場においてかい?」
沖田君がちらりと、私、それから土方君を見る。
平山五郎が芹沢鴨と謀殺される必要があったのは、近藤さんと土方君の序列向上には欠かせなかったからだ。平山は当時、組織内で急激に台頭していた。芹沢だけでなく、近藤さんたちにとっても彼は邪魔な存在だった。……芹沢の蛮行を止めると同時に、組織を手中に、そしてそれまでより上位であろうとするのであれば、平山が同時に殺されたのも頷けるのである。これは沖田君研究をするにあたり、私が直面した推論だった。
土方君はにやりと笑った。
「行ってくる。さんなんさんは陰陽師の小僧と大人しくしていてくれよ。斎藤、頼んだぞ」
私の後ろにいた斎藤君が首肯する気配がある。
土方君は弁明も言い訳もしない。
歴史の必然だと、そう思っているのだろうか。
この時代にいるもう一人の私は、当時、どう思っていたのだろう。
さんなんさんの記憶は鮮明になるかと思えば夢のように遠ざかり、私を困惑させることがしばしばあった。
小常さんは野菜を洗ったり切ったりとてきぱき働いている。手伝いを申し出たら、笑って「堪忍どすえ」と言われた。彼女は夫君を亡くした後家さんで、それまでの蓄えと、三味線を教えることで生計を立てているらしい。
私たちの存在は邪魔だろうに、そんな気配は微塵も見せない。
私は斎藤君に着付けてもらった着物姿で座敷に仰向けに転がった。うーん、と伸びをする。土方君たちは、自分と鉢合わせせずに済んでいるだろうか。あんまり考えると怖いので、私は思考を途中で放棄した。そして、どうせ京都にいるのなら抹茶パフェが食べたいと思った。





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