鷹雪君と斎藤君
紗々女が私の手を引いている。
あたり一面、無数の風車が回っている。
お地蔵さんが並んで、何だか物悲しく白々とした明るさに満ちた空間だ。
紗々女の足が止まったところを見ると、小さな墓石があった。不意打ちに、胸が痛む。これはあの子の墓なのだろうと、なぜだか直感で解った。
けれど大丈夫だと紗々女が言う。
もうすぐきっとまた逢えるからと。
けれどその為には――――。
純白の狩衣姿が立っている。
鷹雪君。
その向いに斎藤君が立っているのを見て、私は冷水を浴びせられた心地になった。紗々女の手を解き、駆け寄って両者の間に入る。斎藤君は刀の鍔に手を掛けていた。鷹雪君は臆せず、斎藤君を検分するように見ている。
「駄目だ。止めろ、斎藤君」
「退いてください、さんなんさん」
「頭を冷やせ。ここは夢。鷹雪君の領分だ。幾ら君でも不利だ」
「それは、解らない」
言ったのは意外にも鷹雪君だった。
「強い意志を持つ魂魄は、如何に俺のテリトリーでも御し切れない可能性がある」
「鷹雪君、土方君と話し合ってくれ。斎藤君も、それなら構わないだろう?」
私たちの膝程に伸びた草の、緑の草原がざわめいていた。全てが白っぽい世界で、草の緑は何だか嘘っぽかった。
斎藤君の白刃を、受けたのは私の刀だった。
鞘から抜いてはいない。黒い漆に傷がつく。斎藤君が物言いたげに私を見る。私もまた、真っ向から彼を見返した。どうして自分にこんな芸当が出来るのか、考える余裕も私にはない。
斎藤君は黙ったまま刀を鞘に納めると、鷹雪君を一瞥して踵を返した。
紗々女が怯えていないだろうかと振り返ると、そこには誰もいない。鷹雪君まで消えていた。ただ吹く風に前髪が私の額を撫ぜ、私は一人きりの心許ない思いを味わったのだった。





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